自死した弟のこと【小休止:寄付】

 大寒波が日本列島を襲った日、私は弟の遺したお金の一部を4つの団体へ寄付した。女性を支援する団体、ホームレスの人を支援する団体、母子家庭を支援する団体、災害の被災者を支援する団体だ。そのうち1つの団体から寄付後に届いたメールにはこのように書かれていた。

「この度は、貴重なご寄付を頂きありがとうございます。
コロナ禍や物価上昇のなかで、このようにご支援頂き感謝致します。
頂いたご寄付は大切に使わせて頂きます。

大寒波が近づいていますので、くれぐれもお気をつけください。

今後ともよろしくお願い致します。」

 メールを読んだ途端、誰もいない部屋で私はまるで赤ん坊のように声をあげ、泣いてしまった。自分の涙なのに、自分の意思では全く止めることができない。泣き続けて泣き続けて…疲れ果ててインスタントのお味噌汁をのんだら少し落ち着いた。そういえば、弟もお味噌汁が大好きで、母がつくってくれるニラと卵のお味噌汁を何度もお代わりしていたっけ。

 もしかしたら寄付したお金で誰かがお味噌汁をのむことができるかもしれない。お味噌汁でなくとも構わないけれど、弟の遺したお金が見知らぬ人の生きる希望になってくれたら、誰かの「死にたい」や「消えたい」という言葉の奥にある孤独が少しでも和らいでくれたら、私はとても嬉しい。それはきっと弟も同じだと思う。
 弟の命日にはまた寄付するつもりだ。誰かの孤独を少しでも一緒に持ちたいから。

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