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「楽園のアダム」を読んで("無知に管理されることは幸せか"に興味をある方におすすめ)

 ある厄災により人類の人口が大幅に減少したあと、「カーネ」というシステムで管理されている社会。暴力や犯罪はほとんど無いが、何をするにしても「カーネ」の許可がいる社会。結婚も出産も「カーネ」の許可がいる社会。人生は「知の探求」が目的であり、ただそれだけで生きていくことができる社会。そんな世界で主人公が尊敬する教授の死体を発見するところから物語が大きく動き出す。
 暴力を振るうという概念を知らなければ、暴力が起きないという発想のもと、管理されている社会であり、暴力に繋がる知の探求は規制されている。哺乳類は暴力を振るう存在という前提により、哺乳類に関する探求が規制されている設定が面白いと感じた。
 出産の許可制が実現できる世界設定であるからこそ成立する世界ではあるが、人口管理と一種の洗脳による平和な生活は、テクノロジーが進歩した素晴らしい未来の一つの可能性を感じた。管理される社会は、そこにストレスや疑問を抱かない人には楽園である。ストレスレスな管理社会は、素晴らしいのではと思わしてくれる。そんな本です。
 ”知らぬが仏”という諺があるように、無知であることが幸せなことはいくらでも存在する。「賞味期限が切れていたお菓子を知らずに食べて満足した」とか、「嫌われていることを知らずに、嫌われている人と気楽に話をして楽しく過ごした」といった身近な事例から、「パンクしていることに気づかず車を運転していた」といった事故に繋がる可能性がある事例まで、”知らぬが仏”な事例はいっぱいある。
 特に、この本を読んで、知らないことが幸せにつながっているのではと感じた。「ストレスを感じず管理されることは幸せでは」という考え方に興味ある方におすすめです。軽快でわかりやすい文章です。気楽に読んでみてください。
作者:周木律 出版社:講談社 タイトル:楽園のアダム 12/28読了



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