梅酒と生きる(旧作8首)
今年も梅酒がおいしくできた。
といっても忙しくてとても梅仕事をする余裕などなく、義実家が作ったものをお裾分けいただいたにすぎない。
ロックで飲んだり、炭酸で割ったり、レモン果汁や蜂蜜を足してみたりして存分に楽しむ。
そういえば昔、梅酒の連作を作ったぞ? と引っ張りだしてきたものをそのまま以下に掲載する。
なお、5首目は高柳蕗子さんの歌書『短歌の酵母』(沖積舎)にて引用いただいている。
梅酒と生きる
(「かばん」2010年9月号掲載)
青梅に千枚通しを刺すごとく人の心をぷつりと刺しぬ
いっぺんに嫌われたって構わないホワイトリカーを静かにそそぐ
これからは甘く小さな氷山をシンクの下に抱える日々へ
忠誠の証のように一日に一度梅酒の壜を揺するよ
琥珀色の海ができたら伝えよう 醸成を待つ心は金魚
熱量の問題らしい 梅のこと話しそびれて電話を切りぬ
氷山が溶けきる頃に呼ばれたら濁りの中を泳いでゆくわ
愛してる、愛してるよと言うように一日一度梅酒を揺する
生きているうちに第二歌集を出すために使わせていただきます。