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rain drops

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柴田瞳の短歌つきエッセイ・コラムです。
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#note短歌部

チョコと修羅

チョコと修羅

それは、バレンタインデーの翌朝のことでした。
8時過ぎくらいでしょうか。家族で朝食を食べていると、チャイムが鳴りました。
こんな時間に? とインターフォンのモニターを見ると、若い女性の姿が映し出されていました。
帽子を目深にかぶっていて、顔はよく見えませんでした。

「隣りに入れようと思って、あの、ポストの、」
切羽詰まった口調で的を射ないことを言うのです。

「ポスト?」
「あの、あの、隣りに

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小さな呪いとその回避

小さな呪いとその回避

外食時に、小さなミスやトラブルが起こる。
それがどうやらわたしにかかっているらしい地味な呪いだ。

Aランチと言ったのにBランチが来る。
チョコストロベリーパフェと言ったのにただのストロベリーパフェが来る。
明太釜玉うどんと言ったのにただの釜玉うどんが来る。
糖質オフ麺と言ったのに普通の麺で来る。
そもそもオーダーが通っていない。
他の卓の注文品が来て、うっかり食べてしまう。
割引券を使えば割引率

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本当の血液型を知った日

本当の血液型を知った日

今から5年と少し前、妊娠がわかり、産院で最初の健診を受けたときのこと。
検査結果の一覧とともに「O型」という名刺サイズのカードを受け取ったわたしは、何かの間違いだと思った。
だってわたしは、B型なのである。

「すみません、血液型が違うんですけど…」
受付に申し出ると、優しそうな女性スタッフは微笑んで事情を聞いてくれた。
「わたしB型なんですけど、なんかこれ…渡されまして」
「うーん、間違ってるっ

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