違和感の余韻 -その2
彼の舌は、具材と調味料の探求に出かけたようだ。
またも、深遠な世界に戻っていく。
目を閉じ、指を折る。
眉の動きが、ますます活発になる。
時々首をひねったり、頷いたり...。
どこまでも深く、入り込んでいく。
おそらく、具材と調味料だけでなく、
調理方法まで探っているような、
そんな面持ちだ。
彼の脳内には、
膨大なデータがあるに違いない。
私の知らない具材、調味料の調合、
火の通し方、寝かせ方、冷やし方、
提供までの保存時間....。
彼の舌は、
経験によって蓄積された知識を紡ぎ、
「解」に向けた線を描いているに違いない。
直線だけでなく、曲線も、点線も、波線も...。
猛スピードで電気信号がスパークし、
特定のシナプスだけが反応する。
しばらくして、
深い世界から戻ってきた彼は、
私にこう言った。
「わかった...。明日やってみる。」
訳が分からず頷く私に、さらにこう続けた。
「美味いってことは、こういうことだ...」
「その-3」に続く…
「その-1」はこちら
冒頭の画像は、taketaket さんのものをお借りしています。
ありがとうございます。