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再開、海外旅行 4

空港からホテルに向かうまでの間、送迎日本人スタッフは、日本語でいろいろ説明してくれる。まず空港内のPCR検査場の場所が示される。
私たちは3回のワクチン接種をしていないため、帰国時のPCR陰性の証明が必須なのだ。わざわざ空港まで検査に来ないといけないのは面倒だがやむを得ない。日本入国の様式を満たす証明書を発行してもらうことが必要だからだ。
しかもスタッフが車内で説明したことによると、空港にはトラム(路面電車)とバスを使わないと来られないらしい。そしてバスは、バス停に居ても手を挙げないと止まってくれず、降りる時も自分で申告しないと降ろしてくれないと言う。そんなバスを利用して、果たして空港に来られるのだろうか。
そして空港に来るためには、go cardかもしくは go exploreカードを購入した方が良いと言う。前者はチャージ式の日本のSuicaに当たるもの、後者は区間内が1日乗り放題の10ドル(約920円)のもの、とのこと。大型のトラムの駅か、コンビニでも扱っているところがあると言う。フライトと罰金の疲れも手伝って、なんだか面倒だと思ったが、やるしかない。

一歩外に出ると暑い。オーストラリアはいま秋で、私が日本で見たときは、最高気温が25度くらいと書いてあったが、夏がぶり返していて、この日のゴールドコーストは、33度の気温だと言う。完全に夏だった。そのことは私の気分を少し解放的にする。

スタッフは車内で、いろいろ説明してくれたが、罰金問題で落ち込んでいたせいかもしれないが、上から目線で言われているように感じた。海外で暮らすにはご苦労もあったことだろうと思うが、彼は、日本人らしいホスピタリティがあるタイプではなかった。自己責任の世界で長い間生きてきた人ならでは、という感じのタイプだった。
彼いわく、日本は物価が安いが、こっちは高い。物価は毎年上がるが、給料も毎年上がるから問題ない。オーストラリア人は豊かになった。今ではシェフも年収1000万くらいなので、食事も昔と比べて美味しくなった。逆にこの間娘が京都に旅行した時は、物価が安くて狂喜していた。ラーメンがたった1200円で美味しい、と感激してLINEを送ってきた、などと言っていて、なんとなく日本がバカにされたような気持ちになったのは、罰金問題で私の気持ちがやさぐれていたからだろうか。

そうこうしているうちに、40分以上経過して、車は繁華街へと到着した。ゴールドコーストもコロナで観光客が全滅し、飲食店などがかなり潰れたらしく、空き店舗が中心街にも目立つという。街中は、なんだか少し寂しいような印象を受けた。コロナは世界中の飲食店に影響を及ぼしたんだなあ、と思う。
旅行会社のオフィスの場所を車内から案内され、そのあと私たちは、宿泊予定のホテルに下ろされた。チェックインを彼がやってくれるのかと思ったら、自分でやらなくてはならず、自己責任の原則を認識させられた。日本みたいになんでもサービスしてくれるわけではないのだ。

ホテルに着いたのは11時ごろ。チェックインは本来2時だが、部屋が空いていれば使うこともできると、先ほどの送迎スタッフが言っていた。祈るようなフロントに気持ちで聞いたところ、部屋をすぐに使っていいと言う。さらに、送迎スタッフはWiFiが無料なんていうところはそう多くない、と言っていたが、ホテルはWiFiも無料だと言う。それを聞いてひと安心して部屋に入る。
罰金ショックと機内泊の睡眠不足で疲れ切ったので、私たちはまず部屋で休むことにした。部屋からは海が見えるが、ゴールドコーストは高速ビル群なので、高層ビルの合間からしか海は見えない。それでもまあ気分は悪くない。

お昼になっても、どこかへ出かけて行こう気持ちには到底なれず、先程税関で開封されたアルファ米を早速食べることにする。まさか持ってきた日本食がいきなり役に立つなんて、想像もしなかった。
昔は海外に行ったら、できるだけ現地の食べ物を食べようと思ったものだ。ガイドブックの持ち物リストに日本食、と書いてあるのを見ると、日本食なんて日本でいくらでも食べられるのだから、海外に行ったら現地のものを食べればいいじゃないか、と思ったものだ。しかし今や、海外で日本食のレストランに入ることもあれば、日本食を持参する。年を取ったと言うべきか、経験値が上がったと言うべきか。いずれにせよ、部屋でもう少しのんびりしたかった私たちにとっては、アルファ米は助かった。

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