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5 by 5+α〜私が影響を受けた本(小川篇)

文芸誌「空地」のメンバーが影響を受けた5冊の本を紹介する「5 by 5」。第三回は執筆者・小川の選ぶ5冊。

 影響を受けた本を五冊選んで紹介して、と言われて、ものすごく困った。なぜなら私は、まだ影響を受けたと胸を張って言えるほど何かを世に出してきたわけでもないし、文学についての知識も浅い。けれど、本を読むことはすきでいる。本は、著者個人の興味を持った分野について、重箱の隅をつつくような情報まで与えてくれる。思えば文章を読む理由の根源にあるのは、世界を知りたいからだったような、そんな気もする。今回、幅広く5冊選んだつもりが、音楽に関するものばかりになってしまった。

『アーモンド入りチョコレートのワルツ』(森絵都 角川文庫)

 シューマン、バッハ、サティなど、クラシックピアノにまつわる短編集。出会ったのは小学校の図書室で、短編集だから休み時間に読み切ることができ、何度も読んだ。イチオシは、表題になっているアーモンド入りチョコレートのワルツ。ピアノ教室の絹子先生みたいな大人になりたいなあって思いながら読んだっけ。10代の頃に抱いた大人への淡い憧れやときめきを思い起こさせてくれる素敵な作品。


『バッファロー5人娘』(安野モヨコ 祥伝社)

 好きだ!!!!!安野モヨコ先生の漫画は本当に全部大好きで、彼女に関するものは全てかき集めて読んでいる。

 何が好きかって、彼女の描くキャラクターは本当に全部魅力的で、それぞれが感情を持っていて、漫画の世界の中でいきいきとしていて、みんな不器用でどうしようもなく必死で、愛くるしいのだ!

 漫画を一つ、安野モヨコから選びたいと思って泣く泣く一つバッファロー5人娘を選考した。キャンディ、私はキャンディになりたいよ。

『音楽』(岡野大嗣 ナナロク社)

 影響を受けた、と言いつつも、岡野大嗣に出会ったのは最近で、それがまさにこの『音楽』の出版された昨年の12月なのである。当時の自分を振り返ると、なかなかに音楽へ強い感情を抱えていて、それは自分でも少し気持ち悪いと感じるほどで、しかし岡野大嗣には敵わないとニヤついてしまう程、この歌集は音楽への偏愛で満ちていた。

 最近、一日一首短歌を詠んでいる。わずかにでも心を動かした時間と光景を記していけたら、と思う。短歌ってそういうものなのかな。


『死ぬまでに聴きたいアルバム1001枚』(デイヴィット・ディメリー ソフトバンククリエイティヴ)

 ここにきて、まさかのディスクガイドである。しかし、おそらくこの5選の中では影響を受けたという点では一番大きいんじゃないだろうか。

 50年代〜2000年にかけてをアーティストの小噺も交えながら、偏りなく網羅していく。圧巻の情報量とカラーで差し込まれるライヴ写真が音楽好きにはたまらない。唯一この本に文句があるとすれば、このタイトルかな、死ぬまでに聴きたいってなんだよ、聴きたいときに聴けば良くないか。まあ、ここに載っているアルバムを聴ききることを目標にページを進めてみるのも面白いかもしれない。

 ディスクガイドというのは面白い。音楽というそれ自体が目的の、それ以上でも以下でもない存在に対し言葉を尽くして表現する。そのうち、名ディスクガイド集のようなものが出版されたら面白いのになー、なんて思う。


『音楽の根源にあるもの』(小泉文夫 平凡社)

 何やら物々しいタイトルである。が、内容の大筋はシンプルで、音楽の特徴は生活様式から生まれている、といった話。西洋音楽に限らず世界中の民族音楽について語るスケールの大きさは著者ならではだろう。

 日本文学の始まりも音楽だったらしい。歌い踊ることを覚えた人間は、生活の中で音楽に創作意欲を見出していく。音楽を創作するのは人間の営みであって、猿はタンバリンを鳴らさないし、動物たちは音楽隊を組まない。

 音楽の根源にあるものを求めて世界中を彷徨う、著者の冒険家精神がすきだ。もしかして、見方を変えれば冒険書とも言えるのかも。


(文責:小川)



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