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試練の名は「妊娠糖尿病」おきらく妊婦に突然襲いかかった入院レポ。

8月末、夏の終わり。いつもの妊婦健診のあと突然

「妊娠糖尿病ですね、明日から入院できます?」

と言われ、はじまった約1週間の入院生活。自分が無知だったことで驚くことが沢山あったので、ここに記させてください。

▼まずはじめに

この先は個人的な妊娠・出産にまつわる記録や考えを書いています。こういう話題があまり得意じゃない方は、スルーしてください。というのも、私自身が「子供を持ちそうな環境下にいるのに、持っていなかった時間」が長く、周りからの何気ない言葉に傷ついたり、プレッシャーに感じることがあったり、妊娠・出産系の話題に目を瞑りたくなったりしたことも多かったので、そのことについて発信をすること自体に葛藤がありました。だけど、妊娠発表時のエントリーに対して、近しい仕事をする女性陣から「勇気づけられました!」とコメントをもらったり、世の中に素晴らしいレポートや本は沢山あれどあまりにも十人十色で自分が本当にほしい情報は手に入れられなかったり、世界に対しては小さな小さな発信力しかない自分でも、誰かに必要な情報を残せるかもしれないという気持ちから、今後葛藤しながらも色々と書いてみようかなと思っております。


参考:妊娠発表時のエントリ


▼実感と知識不足だった妊娠生活

出産予定日1週間前にして反省しているのは、忙しさにかまけて無知状態で妊娠生活に突入しちゃったな!ということです。

私の場合「つわり時期」と「黄昏のまほろば遊園地」の制作時期が被っていて、たしかに体調が優れなかったりもしたのですが、それより「イベントを作り上げなければ」という気迫の方が勝っていて、初期〜中期はあまり自分に向き合えていませんでした。

さらにつわりも"常に口にものが入っていないと気持ち悪くなる”「食べづわり」で、会場だった東京ドームシティは"ぱっと買える食べ物"が多い美味しいもの天国!ちょうど妊娠前の時期に心身に負担がいく出来事が重なり「豆腐とかしか食べれねえ」という時期が続いて164cm / 40kg代の低体重になっていたので(ちょこっとまるめ人生を歩んでいた歴代自分の中では低い)何を食べても美味しく、ものを食べられることに感謝して過ごしていました。

その結果、短期間で爆速に増えあがりましたよね、体重が!
瞬く間に10kg以上!

さすがに心配になり、お医者さんにどのぐらいまでの体重増加ならセーフかをこまめに伺ってはいたのですが「まだ大丈夫ですよ〜」の声に安心してその後も削られゆく体力を美味しいものを食べることで補い、全力で活動していました。


▼そこからの妊娠糖尿病宣告!

なので突然の入院宣告には頭がおいつかず、しばらく呆然。今までありがたいことにずっと健康だったので入院すらしたことがないし、糖尿病って知識がない人間にとってはなかなかのパワーワード。病名に「糖」って入っているし完全に甘いものの食べ過ぎが原因だと思い「あの日私が飲んだスタバのフラペチーノが原因で、31のアイスクリームが原因で、春水堂のタピオカジャスミンティーが原因で、お子に影響があったなら申し訳なさすぎる!」と頭を抱えていたところ、それを察してかお医者さん、助産師さん、栄養士さん等、その後会う人全員が「体質だから。ママの食生活のせいじゃなくてホルモンの問題だから。今までは対策もしようがなかったことなので気にしないでほしい」と慰めてくれました。(あくまで私が言われたことを記載しているだけなので実際の原因等はきっと人によって様々だと思います)

こうして突然の入院準備。ただ「管理入院」としか聞いていなかったので、ここでも考えが甘々だった私は「1週間食生活改善古屋に入るみたいなもんかな〜」ぐらいの認識で、病院にも「オンライン会議に出たいので個室にしたいです」とお願いをしていました。


▼怒涛の入院生活その1:セルフ採血

しかし、突然の入院だったこともあり個室は取れず。数人の相部屋に入ることに。会議リスケの旨を関係者に連絡をして、その間に脚本などの作業系を仕上げるぞと資料を大量に持ち込み入院。

し か し そ れ は 完 全 に 甘 か っ た

まず初日は休む間もなく検査につぐ検査、栄養士さんからの説明、1日7回の採血。それだけでフラフラになったのに1日の終わりに衝撃的なことを聞きます。

「明日からはご自身で採血していただきますので!」

え、ご自身で採血??自分で針を刺して血を取るってこと??1日7回も????今まで針や痛みが苦手でピアスはおろか美容鍼やHIFUですら出来なかった私が???

渡されたスケジュール

これを見て、今後出産まで約2ヶ月、一体何回自分で針を刺さねばならないのだろうと、くらっとしました。

採血をするために渡された道具はこちら。

何故かちょっとゲーミフィケーション風

オレンジのスイッチを押すと針がすぽっと出てきて、指から血を出しそれをセンサーで吸い取り数値を出す仕組み。このオレンジのスイッチを押すのが怖くて怖くて…最初にできるようになるまでに1時間程かかってしまいました。看護師さんもとても困っていた。申し訳ない。

しかし私がこの時気がついていなかった。これよりも怖い体験が、翌日から待ち受けていることを…


▼怒涛の入院生活その2:インスリン注射

半泣きになりながら、時間をかけながらなんとか採血ができるようになった翌日、看護師さんににっこりと言われました。

看護師さん「今日からは、昼と夜にインスリン注射を打っていただきます!」

私「インスリン…注射??」

インスリンは血糖を下げる働きがあります。妊娠すると、胎盤からでるホルモンの働きでインスリンの働きが抑えられ、また胎盤でインスリンを壊す働きの酵素ができるため、妊娠していないときと比べてインスリンが効きにくい状態になり、血糖が上がりやすくなる、それを阻止するために注射を打つそうです。(医療にまつわることは詳しくはご自身でお調べください)

妊娠と妊娠糖尿病

また注射か…でも採血できるようになったしきっと…と思い注射用の針を見て愕然としました

注入ボタンを押して針から薬を入れる仕組み

こ れ は む り !

採血の針は針先が見えていないのですが、インスリン注射の針は思いっきり「注射器」です。また刺す場所も「太ももやお腹」。未だかつてない試練です。

練習タイムがあったのですが、怖さでいうと採血より怖い。結局その日は自分で注射ができずに看護師さんにやってもらい、翌日に持ち越すことになりました。大人なのに情けないなという気持ちと、打てるようになる気がしない恐怖からちょっと泣きました。

なんとか翌日までに恐怖心を消さないとと思い「困った時は徹底的に調べる!」精神の元、祈る様に検索ワードを打ち…

他にも「安全」「怖くない」「大丈夫」「みんな通る道」とか色々入れた


自分を安心させるために見つけた記事がこちら。

開発費話大好き人間として心打たれた部分がここ!

時は流れて、2000年(平成12年)、注射や点滴など医療機器の開発を担当していたテルモの技術者が、病院の小児科で、糖尿病の少女の治療風景に出合った。患者は、1日に数回、インスリン注射をしなければならなかった。小さな腕に針を刺されて、懸命に痛みに耐えて注射を受ける子どもの姿を見て、テルモの担当者は思った。 「痛みの小さい注射針はできないだろうか」

注射針はじめて物語

このあと、町工場と協力して世界で最も細い注射針ができたというお話。これだけの人の気持ちがこもった注射針を信じよう。グッドデザイン賞も取ってるし。と思い翌日やっと自分で注射が打てるようになりました。ありがとうこの記事を書いてくれた人!注射は痛かったけどな!!


▼怒涛の入院生活その3:食事療法

1日7回の採血と、1日2回のインスリン注射をマスターしたら、あと必要なのは食事療法。私のケースの条件は

・1日2000kgカロリー、バランスよく栄養を取らないといけない
・朝昼晩+おやつの1日6食の分食

で、これ自体は慣れればそこまで辛くないのですが、最初は早起きして時間通り食事を取らないといけないことや、この時期オリジナルのレシピ開発し出すほどはまっていたクリームソーダが「もっとも口にしてはいけないものランキング1位」に躍り出たこと、向こう2ヶ月の間これらと仕事を両立していかなくてはいけないという事実が負担でした。

試しにカレンダーに予定を入れてみて

これから襲いかかるルーティン


さらに当時の仕事のスケジュールを被せると

とある1日

ひえ!

今となってはどこでも注射を打てるプロの腕を取得した私ですが、外出・外食は気楽に「注射打ってくるね〜!」と言える友人としか出来なくなったのは辛かったですね。でも秒刻みで仕事をしていることで逆に気が紛れて良かったな〜と思っています。何もしてないと「注射を打つために生きている人間」のような感覚に陥って落ち込みやすいなと感じました。

会議と会議の合間がない日は、即座に夫氏が定期注文を開始してくれた冷凍食品が便利でした。すべての開発者にありがとう!

妊娠して明確に変わったのは、電車の優先座席やバリアフリーの道路など「今まで目に入らなかったものが目に入ってくること」。世の中にはこんなに健康に配慮した食品が多いんだということに驚き趣味のようにのめり込みました。低糖質な食事に関してはかなり知識がついたので別でまとめます!

▼暗闇の院内に響き渡る悲鳴

そんな感じで、入院中は「明日は注射を打てるのか」「これを続けていけるのか」という不安が大きく眠れなくなりました。

しかし病院の消灯は21時。気を紛らわすために持ってきたホラー・アドベンチャーゲーム「パラノマサイト」をやりはじめたら怖過ぎてさらに眠れなく…あまりに臨場感のある女の人の悲鳴が…えっ、悲鳴?このシーンで??

啜り泣くような悲鳴はイヤホンから聞こえるのではなく、隣のベッドからでした。どうやらこの部屋に入院している皆さんは「赤ちゃんを産んだ後の女性」ばかりだったようです。ずっと「痛い…痛い」と叫んでいてのナースコール。「痛み止めを入れてください」と言っても「まだ時間がたってないので難しい」と断られている。隣から「頼むからなんとかしてあげられないんですか」とカーテンをあけて突っ込みたい程に辛そう。だけど1人で耐えている。出産としての偉業を成し遂げてもなお、そんな苦しみが待っているのか…!と無知だった私は驚愕し、隣でひたすら(名前も知らない)彼女の痛みが早くおさまりますようにと祈っておりました。

でもなかなか痛みが治まらなかったようで、翌日もその翌日も苦しそう。
ひとつ違和感に感じたのが

こんな苦しそうな彼女の姿を見ている人が誰もいない!

ということ。コロナ感染対策のために面会が制限されていてお見舞いが出来ないからだけなんですけれど(この病院は立ち会い出産は可能)こんな姿を見たら

「妊娠・出産は病気じゃない」
「出産後も赤ちゃんのお世話や家事ができる」

なんて言葉はこの世で発されることはないんじゃないかなと思います。性別や立場関係なしに、この状況を知っているのが当事者だけというクローズ気味な環境がさらに意識格差を生んでしまっているなと。実際私もここまで辛くなるものだと思っていなかったし、自分の身にふりかかった妊娠糖尿病の治療のことも詳しく知らなかった。

どんなプロジェクトでも関わる人の情報格差は意識の歪みを生みます。誰かのせいじゃなくて仕組みのせいなことがほとんど。それを防ぐため弊家では「身体のつくり的に私にしか出来ないこと以外は夫氏担当」という体制にしていて、そうするとまず情報を仕入れるのが夫側になるので、これまで情報格差を生まずに、なんならすべてやっていただき感謝しかないです本当にありがとうございます、、というパートナーシップだったのですが、今回の入院中の苦労や病院で起こっていたことは面会ができない、ネットや本に生々しい情報がない場合は伝わりにくい、けどこの起こるかもしれない辛さ、臨場感持って知っておいてもらわないとやば〜〜〜〜〜〜!と危機を感じ"きだ緊急家会議"を開き今後のプランを考えました。

主に産後のリスクヘッジや育児体制について。口頭で伝わる情報量には限度があるよね、ということで「産後、辛かったらその様子を知れた方がいいから24時間生配信できるようにカメラを設置しておこう」という提案だけは、どうしようかなと思ってます。なんかおもろいこと言わないと…となってしまう気もする。

▼男女平等は目指したいけど難しい

今はすっかりメンタル持ち直した私ですが入院中は「こんなに自分で体調コントロールが出来ない状態で、男性と同じようにバリバリ働いていくのは難しいんじゃないか」と悩み「宮崎駿監督が何歳の時に何を作ったかリスト」を眺めては「今少しブランクあってもまだ大丈夫、駿の歴史はじまってないじゃん。駿もお子さんいるし!」と謎に心を落ち着けたりしていました。

ただこういう事例、子供がいる女性は表舞台で活躍する華々しい職業の方しか出てこないことも多く、この妊娠〜入院期間を経てその理由もなんとなく腑に落ちてしまうようになりました。男女平等は目指したいけど難しい。若くして何か成し遂げて、周囲のサポート体制がバッチリじゃないと挫けちゃうよって思いました。幾多の予想だにしない出来事や体の不調と付き合いながら生きている人にありったけの敬意を。そして、ひとつのバグを潰すのに何時間も机と睨めっこが必要だったり、広大な遊園地を歩き回って人の動きを考えたりが必要な職業の人間として、受け入れて乗り越える術を見つけ、さらに未来の体制作りについても考えていかねばと思います。世の中はもっと面白くなっていくので、両手に愛を抱えてたとて立ち止まってはいられないのです。

突然の入院生活レポ、読んでいただきありがとうございました!制作以外のことを書くのは少し抵抗があるのですが、ゆるくInstagramXなどに書いていくかもなので、こんな一面もあるのか程度にお付き合いいただけますと幸いです。

というわけで、今度は本入院こと出産予定日まで残り7daysをきりました!緊張と恐怖で震え上がっております、世紀の臆病者、きださおりでした。

限界臨月ちゃん、ビルの頂上から最後の近影を添えて
(お腹隠れてるけど信じられないぐらい大きい)



ありがとうございます。面白い体験を作ることに還元していきたいと思います。