仁王像の由来【岩手の伝説⑭】
参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館
昔、大袋に太郎兵衛という人がありました。
秋晴れの良い天気の日に、瑞神山(ずいしんざん)に茜草刈りに出かけました。
※茜草・・・せんそう。アカネという植物。薬や染料になる。
瑞神山をあちこちと取っているうちに、傾きかけたので帰り路になって、瑞神山の麓の谷に来ると、大きい古い松の木が横たわっているので、非常に驚きました。
※日が傾いてきたので
自分が山に行くときはなかったはずだが、今どうして、こんな大きな物が横たわっているのか不思議に思われたので、手にしていた小さな鎌をその大木に突き刺したところ、その大木が動いたので益々驚きました。
この大木を渡っていくと、なんとそれは大木ではなく、うわばみであったので、太郎兵衛は驚きの余り顔色蒼白として、生きた心地がありませんでした。
※うわばみ・・・ニシキヘビのような大きな蛇。または伝説上の大蛇を指す。
家に帰った太郎兵衛は、一言も発せず床についてしまい、「ウンウン」と唸り、大病を患ってしまいました。
これはきっと大蛇から「アッ気」をふっかけられたためだろうと思って、占師に占ってもらうと、やはりそうでありました。
※呆気にとられたから病気になった?
そこで家族及び近隣の人達は大層心配して、神様に平癒祈願するとともに、仁王像(金剛像)を作って八幡神社に奉納し、ひたすら全快を祈ったのでありました。
土地の人々はこれを「オニオウ様」と言って敬ったところ、病気は日毎に快方に向かい全快してしまいました。
その後、この仁王像は忠功寺(ちゅうこうてら)に移され、門前に祀られております。