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ビジネスとして手芸本を出すということについて

手芸をやっている人の1つの目標として出版があると思います。でも周りにいる出版経験のある作家は一様に全然お金にならなかったと言います。何を基準にするかで儲かる儲からないがあると思いますが1つの例として私の経験を書きました。参考にしてください

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はじめての手芸本

2008年1月にはじめての著者本となる刺しゅう本「ぼくのステッチ・ブック ~シンプルでかわいいクロスステッチのおもちゃ箱~ 」が白夜書房より出版されました。今でも手芸本で黒い表紙は珍しいですが当時はほっこり系ブームだったので売場ではひときわ目立ちました。

内容は昆虫や乗り物、モンスターやロボットなど男の子が好きなモチーフを沢山組み込みました。これまで女性、女児向けに作られてきた刺しゅう本に男子目線を組み入れたこの本は男性にはそれほど届きませんでしたが男の子を持つお母さんや刺しゅうに興味はあるけど女性向けのカワイイ図案しかないと手にしてこなかったライトユーザーから歓迎を受けたのでした。

アマゾンのレビューも高評価ですが楽天ブックスのレビューは77件もありとても興味深いコメントが多いのでリンクを貼ります。
https://books.rakuten.co.jp/rb/5349110/?l-id=search-c-item-text-11

翻訳もされました!

この本はアメリカやフランスでも翻訳され刺しゅうの本場でも歓迎されたのでした。タイトルはnot lame! (ダサくない!)very cool ! (めっちゃいけてる!)まことが作るクロスステッチスーパーコレクションです。日本語版とはまた違ったアメリカンな味付けが面白いです。amazon.comでまだ買えるみたいですよ。

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ビジネスとして考えた手芸本

当時なんでパチスロ雑誌やゴシップ誌を多く出している白夜書房から手芸本を出したのかとよく聞かれましたが誘ってくれたどの手芸本専門の出版社より条件が良かったからです。白夜書房がなんで手芸本を作ろうと思ったかはわからないですが結果として売れたのでギャンブルに勝ったと言えると思います。さすがパチスロ必勝ガイドを作っているだけあります。

今どうなっているか分かりませんが当時誘われた手芸本専門の出版社からの条件は2パターンありました。
1. 全てのデザイン、制作物の権利を買い取りで50万。
2. 初版5000部くらい印税3~5% 今は初版5000部も刷らないみたいです。

よく漫画や小説の印税は10%と聞いていたし、占いの細木和子先生の印税は15%とテレビで見たことを覚えていたのでその条件を聞いたときはずいぶん安いんだなと思いました。1冊作るのに最低でも3ヵ月は必要なので単純に数字だけで計算するとビジネスとしては全然割にあわないなと思い、そのことをそのまま伝えたら狭い業界なので軽く干されて手芸本専門の出版社からの話は来なくなりました。しかしこれまで一般書を扱う出版社から8冊著者本が出ています。
※本を出すことによって宣伝効果が見込めるので手芸教室などをやっていきたい人は安くても出した方がいいのかもしれません。あと本が出ると親がとても喜びます。

一方、白夜書房からの提示は初版8000部で印税8%でした。手芸専門の出版社とは比べ物にならい好条件でした。出版後口コミでどんどん売れ続け、メディアにも取り上げられたことにより版を重ね最終的に3.5万部部くらい売れたと思います。どっちを選んで正解だったかは言うまでもないですよね。私もギャンブルに勝ったのです。
※なんで手芸本の印税率が低いのかはずっと謎のままですが一つは他のジャンルに比べて編集作業が大変ということがあるかもしれません。

また自分で言うのも恥ずかしいですが当時から私はアイデアマンだったので出版社から出す本とは別に本には載せることが出来なかったボツデザインを冊子にまとめて自費出版していたのでした。これも最終的に3000部完売しました。

▼老舗のZINEオンラインショップにまだその情報が載っていました。

白夜書房とは良好な関係が続いていたので担当編集者が転職するまで計3冊出させてもらうことが出来ました。実績があったので3冊目の契約条件は初版分の印税は10%で増刷分から12%になるという大先生並みの待遇を受けたのでした。交渉はとても大事です。
※白夜書房が今もこの条件でやっているかは分かりません。

もうひとつ自分のことをアイデアマン(ビジネスマン?)だと思ったのは編集者が転職になりその後売れなくなって絶版になった本を別の出版社に売り込んだことです。出版社は出版する権利だけを持っていてデザインなどの権利は私にあるからです。

3年前にPHP研究所から出したオールカラー完全版「たのしいクロスステッチBOOK」がそれです。絶版になった3冊分の内容を1冊にまとめました。オールカラーにしてもらったので少し価格が上がってしまいましたが2000点以上の図案が掲載されているのでお得です!図書館にも多分あると思うので借りてみてくださいね。

井の中の蛙

これまで読んでいただいた方は大図はかわいい刺しゅうを作るのに随分グイグイいくんだなぁと思っているかもしれませんが自分が創りだした物の価値を一番最初に付けるのは自分だと思っています。安い金額のギャラを提示されていると思ったらそのことを先方にちゃんと伝えます。井の中で不平不満を言い続けるのではなく常にいろんな業界の事を知って置いた方が持続可能なビジネスを作っていけるのではないかと思っています。

現在の多種多様な業界を手っ取り早く知るには会社四季報「業界地図」がおススメです。知らない業界が沢山あって読み物として単純に面白いのと今自分がやっている事を他の業界に持って行ったら何が出来るかと考えると夢が広がるし、まだまだやっていないことが沢山あるなとワクワクしてしまいます。

刺しゅう作家の特権

SNSが広まったことによりこれまでより手軽に作品をいろんな人へ発表出来ることが可能になりました。今密かな楽しみがあります。それは私が作った図案を使って色々なシチュエーションで楽しんでいることを見ることです。タグ検索で「大図まこと」とか「makotooozu」とかで検索してます。

幼稚園バックにお母さんが刺しゅうをしてくれた作品。3年間ずっと一緒に持って通ってくれてたんだって。嬉しすぎる!

携帯ケースに刺しゅうをしている作品。カラフルでかわいい!

本に載っている図案をアレンジして作ってくれた大作!壁に飾ってくれてるのかな?

毛糸の腕時計を作ってくれたスペインの男性。ナイスポーズ!

私が1人深夜ラジオを聞きながら作った刺しゅうのデザインが自分の知らない場所で知らない人が知らない誰かのために自分と同じように針を運び作品を作りあげている。別に普段からそのようなことを考えているわけではないですがとても不思議で嬉しいです。

時間が経っても作品とその時の思い出とデザインは残ります。これは刺しゅう作家だけに与えられた特権だと思っています。良い仕事ですよね。

今やっていること

私が得意とするクロスステッチという刺しゅうは技法が簡単なので細かな説明が特に必要ありません。翻訳作業もほとんど必要ないので出版社に頼らず電子出版によって世界中で販売しようと現在進めています。国内市場はとても小さいですが世界に目を向ければビジネスとしてまだまだ拡げて行ける可能性が大きいと思いませんか?想像するだけでなんだかワクワクしてしまいます。ではまた明日!

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