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ハンドメイド作家が13年食べてきた方法

こんにちは大図まことと申します。私は2007年に刺しゅう作家として活動をスタートしました。翌年すぐに手芸本を出す機会に恵まれましたが正直この仕事だけで食べて行くのは難しいとすぐに感じました。2020年現在まだ刺しゅうの仕事(それに付随する仕事も)を続けています。どうやって作品を作り食べてきたかを振り返りながらnoteにまとめようと思います。ハンドメイド、モノづくりで食べて行く方の参考に少しでもなれば嬉しいです。

食べて行くのが難しいと感じた理由

1.作るのに時間が掛かるので量を作ることが出来ず完成品を販売するにしてもとても高くなってしまう。
2.手持ち資金が少なかったのでお金を掛けた商品開発が出来ない。
3.手芸の市場が小さい。

当時何も考えずに勢いだけで独立したことを少しだけ後悔しましたが出来上がった作品自体には自信があったので問題点を1つずつクリアしていくことにしました。

問題1.作るのに時間が掛かるので量を作ることが出来ず完成品を販売するにしてもとても高くなってしまう。

解決策 完成品を販売することと同時に刺しゅうのデザインを販売することをはじめました。家庭用プリンターと製本テープを使って冊子を作り自分のサイトで販売をはじめました。たしか1冊1000円くらいで販売していたと思います。(原価は100円くらい)昆虫をテーマにしたこれまでに無い図案集だったのでニッチな刺しゅうの世界ですがこれが飛ぶように売れました。刺しゅう作品そのものを売らずにデザインを売ると言う方法は今でもライセンス事業として続けています。

なんとか刺しゅうの完成品を量産出来ないかと図案集の売上で家庭用の刺しゅうミシンを購入して量産化に臨みました。当時ミシンと専用ソフトで20万位したような気がします。しかし結論から言うとこれは失敗に終わりました。手でやるよりかは早いですが家庭用なので量産する用途で作られた物ではありませんでした。ちなみにこのミシンは最終的にアーティストのNukeme君の下へ渡り彼の作品制作に多大なる影響を与えたと勝手に思っています。

刺しゅうミシンは失敗に終わりましたが量産なくして明日の飯はないと考えアパレルなどの刺しゅうを専門にやっている工場をネットで調べメールで問い合わせをしまくることにしました。

問題2.手持ち資金が少なかったのでお金を掛けた商品開発が出来ない。

解決策 当時個人で工場と取引することはほとんど無かったようで無視されるか、返事が来ても生産するロットが多すぎてお金の面で断念することばかりでした。そんな中、名古屋にあるラカムという刺しゅう工場が興味を持ってくれて東京へ営業に来るついでに会ってくれることになりました。初めて会ったのは今は無き池袋の西口にあったトラベルカフェでした。

現れた営業の男性は小柄でよくしゃべる人でした。ほとんどの工場から断られていることと資金は無いけど図案集は売れているから完成品を量産すれば絶対売れるとアピールしたような気がします。話をうんうんとしっかり聞いてくれまずはサンプルを作ってみましょうとその場で言ってくれました。試行錯誤の末、量産化に成功しこの小柄でよくしゃべるおじさんとは今日にいたるまでずっと付き合うことになります。

あとあとどうして手伝ってくれたかと聞いたら私がやっているクロスステッチという技法の商品を作ったことがなかったので会社として勉強になると思ったのと、これからは言われたことをやるだけの請負仕事だけでは工場は存続出来ない時代になるから自社でいろいろやっていこうとしているタイミングだったそうです。

お金は無いがこちらから提供できるクロスステッチの知識とデザイン工場は新しい技術を習得できることになり量産化に成功して売れれば必然的にその仕事が工場に入ってくるので結果としてwinwinな関係となりました。今でもラカムさんにはとても感謝しています。

アパレルの展示会roomsのノベルティとしてクロスステッチのワッペンを一緒に作ったとき来場されたコシノジュンコ先生に小さなおじさんが強引にワッペンを渡してくれたこと忘れないよっ。

これらはラカムさんと一緒に作った代表的な商品です。

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名画ブローチ 10年以上販売し続けているロングセラー商品です。国立新美術館のミュージアムショップや国内外のセレクトショップでお取扱いしていただいております。各1,980円 下記オンラインショップでも販売中!

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アイロン接着ワッペン 機械刺しゅうで作られたクロスステッチのワッペンです。アイロンで接着したあとに糊が固まらないという特殊な素材を使っています。手芸店などで販売中。各550円~

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刺しゅう枠をそのまま使った掛け時計 いろいろなデザインでコラボ案件も多数商品化しました。機械刺しゅうですが手で作ったものに近づけるため何度も何度も試作を重ねました。

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OLEX!! 刺しゅうで作った高級腕時計型ブレスレット。あのKAWSも購入してくれた一品。一時期お酒の席でKAWSの作品は大金を出せば買えるけどKAWSに作品を買って貰える人はいないとクリエイター仲間に言いすぎて嫌われました。現在蔵前のTOKYO PiXEL. shop & galleryで販売中。

ラカムさんはその後多くのクリエイターと協業で商品を開発しヒットさせ小柄でよくしゃべるおじさんは今でも名古屋と東京を行き来してます。刺しゅうの量産化に興味があるクリエイターは問い合わせしてみると良いと思います。

問題3.手芸の市場が小さい。

解決策 今でこそC to Cのハンドメイドサイトが人気ですがそれでもまだ他の業界に比べたらとても小さいと思っています。手芸作家としてだけで生計を立てている人がどれだけいるのか分かりませんが早い段階で手芸とは違う業界にも目を向けて活動をすることにしました。

独立する前は新宿にあるオカダヤという手芸材料店に勤めていました。服飾館4Fリボン・レース売場で一日中リボンをカットしていました。たまにお客さんからこのレースリボンと同じものありますか?と聞かれると数分で数千種類ある商品の中から同じものを見つけ出すという神業まで披露出来るようになってました。

新宿という土地柄男性の方もいましたがほとんどのお客様が女性でした。手芸を男性にリーチできれば商品が数倍売れるのでは!?と在職中からも考えてレディースデーに対抗してメンズデーをしたり男の手芸と打ち出し自分の作品を展示をしたりしましたが思うような結果は出ませんでした。独立した後数年は手芸業界のみで仕事をしていましたが自分が作った物を世に出すのに業界を狭める必要は無いと考えるようになってからは世界が開きました。

今でも一見今自分がやっている仕事と関係ないような展示会に行っては自分が持っている技術やアイデアやデザインがそこに落とし込めないかと先入観を捨てて物を見るようにしています。

これまで作った刺しゅう以外の商品を紹介します。

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タイルマグカップ 銭湯のタイル画を模したマグカップです。触ると凸凹する技法は波佐見焼で有名な長崎の西海陶器と一緒に作り出しました。1980円


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センター試験の問題集 マークシートで絵を描くと言う挑戦的な学研の問題集の表紙デザインを担当しました。


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nanoblock ロンドンオリンピックの時期にクロスステッチのデザインとして作っていた図案をベースにnanoblockを作りました。柔道がお気に入りです。

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手芸ミニチュアマスコット 手芸業界で働いていた知識とコネクションをフルに活用し手芸用品をミニチュア化するという企画を担当しました。オフィシャルのミニチュアガチャがブームになった火付け役と言われています。シーズン5まで出ています。

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パンダのうんこ 本物のパンダのうんこが緑色だということとその形状が麩菓子に似ているということで商品開発したお土産お菓子です。さすがに刺しゅうとかけ離れ過ぎてるだろと突っ込まれそうですが話すと長くなるのでまた別の機会にまとめてnoteに書き記したいと思います。上野駅構内「上野ランド」で販売中!

(2021年1月16追記 上野ランドさんでの販売は終了し同じく上野駅公園口改札外コンビニエンスストアNewDaysさんで販売中です。オンラインショップも是非!https://foo-matsuo.jp/

最後に

私はクリエイターとして生きていくために一番大事なことは続けていくことを創造することだと思います。これまで書いたこと全てがすぐに出来たわけではもちろん無いです。成功したことより失敗の方が断然多いです。ただいつも根底には面白い物を作ってやろうという気持ちと同じくらい売るという事を考えて創作活動を行っています。

これまでいろんな人に出合い手助けをしてもらいました。感謝をすると共に自分が経験してきたことを自分の言葉でnoteに書き記し誰かのヒントに少しでもなればいいなと思っています。どうもありがとうございました。

宣伝!

東京・蔵前でTOKYO PiXEL. shop & galleryというお店をやっています。

オンラインショップもやっています。

インスタでライブ配信もはじめましたよ!

instagram.com/oozumakoto




SNSもやっていますよ! X @makotooozu https://twitter.com/makotooozu Instagram @makotooozu https://www.instagram.com/makotooozu/