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つき神社での「ありがとう」/素敵な出会いがありました

家の近所に「つき神社」という名前の社がある。
「つき」は「調」の字を使う。
場所は埼玉県さいたま市。
かつて、武蔵国(埼玉県など)から伊勢神宮に「みつぎもの」をはこぶ際、その保管地となっていた場所だ。
「みつぎもの・貢物」は「調(みつぎ)物」とも書く。
古くは「調(みつぎ)神社」と呼ばれていたのだろうが、いつからか「調(つき)神社」の名で親しまれている。

「つき」という音は「月」を連想させる。
そのため、月にまつわる信仰の地ともなっていた。
かつて月には「兎(うさぎ)」がいると信じられていた。
調神社の境内にも、うさぎ関連の絵や像などが点在する。

境内への入り口には、「狛犬」ではなく、トップ画像のような「狛うさぎ」が配されている。
なんとも珍しい神社だ。
来年の干支は「卯(うさぎ)」になる。
そのため、この「狛うさぎ」を撮影し、年賀状などに使おうと、神社には次々と人が訪れている。
僕もその1人だ。

「狛うさぎ」の近くに行くと、1組の夫婦の姿が見えた。
年齢は60歳くらいだろうか。
「狛うさぎ」を背景に、2人で寄り添いながら写真を撮っている。
とても仲がよさそうだ。
少し離れたところで待っていたが、撮影はなかなか終わらない。
ご主人はデジカメを持ち、自撮りをしているのだが、良い写真が撮れないでいるようだ。
「ねえ、どなたかに撮っていただきましょうよ」と婦人。
「いや、いいんだ。もう1回だ」とご主人。
今撮った写真をすぐに確認するが、渋い表情。
今回も納得がいかなかったらしい。

「あの、お撮りしましょうか」と声をかけてみた。
婦人の顔がパッと輝く。
「あら、本当ですか。助かります」
ご主人からデジカメを受けとり、「狛うさぎ」を背景に、夫婦が並ぶ写真を撮る。
これでもかつては、バリバリの広告マンだ。
写真の撮影には、アングルや配置など、かなりのこだわりがある。
まずはカメラを横向きにして、微調整をしながら何度かシャッターを押す。
次は縦だ。
きっと年賀状に使う写真なのだろう。
縦で撮ったアングルの方が、迫力がある。
撮影時間は、約5分。自分でも納得の写真が数点撮れた。
それをご夫婦に見ていただいた。
「まあ、いいじゃない。素敵!失礼ですが、カメラマンをされている方?」
婦人は興味深そうに僕を見る。
「いえ、普通のビジネスマンです。写真は趣味で、ちょっとだけ」
その答えに、婦人はそうですか、と言いながら視線を僕の胸部に移す。
「あら、その本は?」
左脇に挟んだ1冊の本。
婦人はそれに関心を示した。

12/13に出版した著書『まずは小さくはじめてみる』
実はそれを脇に挟みながら、僕は撮影を行っていた。
ご夫婦が撮影を終えた後、「狛うさぎと著書」を並べて写真を撮ろうと思っていたのだ。
それを年明けにSNSで投稿し、本の宣伝に使おうと思っていた。
「最近出版した、僕の本です」
そう答えると婦人は、どんな内容ですかと興味を持ってくれた。
「新しく一歩を踏み出したい。そんな方向けに書いた本なんですが…」
その返事の後、婦人は隣に立っている夫の顔を見る。
「まあ、ぴったりじゃない。新しい一歩ですって」
ご主人は照れ笑いをしながら口を開く。

「実は私、今度60歳になりまして、会社を定年退職するんです。まさに今、新しいことをはじめようとしているところなのです」とのこと。
お住まいは千葉県松戸市。
電車の移動だけで1時間近くはかかる。
年男となる来年。大きな転機になる
よいご縁が得られるようにと、兎にまつわる神社を探し、ネットでこの「つき神社」を見つけたのだという。
参拝後、夫婦で記念写真を撮ろうと思った。
せっかく来たのだ。思い出になる良い写真が撮りたい。
そのこだわりを持って、デジカメで必死に自撮り。でもどうしてもうまくいかない。
そんな時、僕が声をかけたのだそうだ。
「この本、本屋さんで買い、読んでみます」とご主人。
婦人も、そうね、これも何かのご縁ね、と夫に笑顔を向ける。
よい年を迎えられそうです。ありがとうございました。
そんな言葉をいただきながら、ご夫婦と笑顔でお別れ。
僕も、本に関心を持ってくれる方と出会い、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

著書『まずは小さくはじめてみる』では、第6章に「感謝ノートをつくる」という文章を書いています。
人から「ありがとう」と言われることをする。
そのようなことを心がけ、動いていくと、「ありがとう」と思えることに出くわすようになる。
それを地でいくようなエピソードでございました。

ご夫婦とお別れした後、「狛うさぎと著書」は、こんな感じで撮ることができました。
あれ、うさぎが少々ピンボケ。
バリバリの広告マンだったとのくだり。お恥ずかしい限りです。。

著書と狛うさぎ

今年もあと数日。新しい年がやってきますね。
飛び跳ねて前に進む兎は、飛躍や成長の象徴とも言われています。
皆さまに沢山の飛躍と幸せが訪れますように!
そして僕の本も、もう少し売れると嬉しいな。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!^^


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