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クリエイティブな力を引き出すコツ(グラフィックデザイナー・Kさんの事例)

「自分の中にわき上がる〝衝動〟のようなものに気づき、従うこと」
それがグラフィックデザイナー・Kさんが考える、「クリエイティブな力を引き出すコツ」になる。

◎まずは自分の中にあるものを掘り起こす

クリエイティブな力を引き出すには、まず何をすればいいですか?
その問いにKさんは、
「まずは日記を書くこと」と答える。
その際に大切なのは、自分の中にあるものを〝掘り起こす感覚〟だという。
 
書くことはどんなことでもいい。
日常への不満でもいいし、悩みでもいい。
小さいころの思い出でもいい。
とにかく、自分の中にあるものを、文字として外に出す。
そして、心の奥にある〝衝動のようなもの〟に気づくこと。
「これがやりたい」
または、
「気づいたら、いつも自分はこれをやっていた」
そう思えるものを自分の中で再確認すること。
それが、クリエイティブな力を引き出すには大切ではないかとのことだった。

◎小さなころからあり続けた「描きたい」という思い

Kさんの心の奥にある強い思い。
それは「描きたい」だった。
振り返れば、幼稚園のころから、絵を描いていた。
それが楽しいかどうか、わからない。
でも気づいたら、いつも夢中でペンを握っていた。
そして漫画やアニメのキャラクターを描いていた。
 
中学時代は漠然と、イラストレーターになれたらいいなと思っていた。
絵を仕事にするには、自分のオリジナリティを出さなければいけない。
そう親から言われた。
自分らしい絵柄とは何だろう。
その答えが見つからず、絵を描くことはしだいに難しいことになっていた。
その後は、絵を描いたり、描かなかったり……。
 
高校への進学、アメリカへの留学、外国語大学へ進学。
目まぐるしく環境が変わる学生生活。
それでも自分の心の中心にあったのは、創作への思いだったとKさんは語る。
大学時代は、アーティストと一緒に行う、街づくりの活動に参加した。
自分たちで家を改装したり、壁に絵を描いたりする毎日。
アーティストの近くにいられることが嬉しかった。
表現できる自分が誇りに思えた。

◎自分の心を支えるために行っていたこと

大学卒業後は、デザイン事務所に就職。
描くことが仕事となり、義務になった。
充実した時間を過ごしてはいたが、しだいに自分の中に迷いが生まれた。
その後、デザイン事務所は退職。
絵を離れ、一般企業に就職をした。
 
一般企業での仕事は、単純作業の連続だった。
マニュアルに従い、言われたことをこなすだけの仕事。
自分の何かを抑え込むようで、辛かった。
我慢してがんばってきたが、がんばるほどに、心のバランスが崩れていった。
自分の心を支えようと思う時、手にはいつもペンがあった。
そして紙に何かを描いていた。
自分の感情を言葉として書き出すこともよくあった。
今思えば、それが日記のような役割を果たしていたのかもしれない。

◎「自分に対して恥ずかしい」との気づき

Kさんは現在、仕事や趣味として絵を描いている。
使う道具は、iPadと水彩絵の具。
WEBデザインやロゴデザインを仕事としながら、自分の中に浮かぶイメージをグラフィックアートとして表現をしている。
「描かないとやっていられない!」
声色を強めながら、Kさんはそのように語る。
「絵を描かないと、自分に対して恥ずかしいと思う!」
このようにも話す。
私は「恥ずかしい」という言葉が気になった。
そこで、その気持ちをもたらしたエピソードをうかがうことにした。
 
ある場所で、大学生くらいの若い子と知り合いになったんです。
その子は、将来、クリエイターになりたいとのことでした。
でも、どうしたらいいのかわからないと悩んでいる。
私は「だったら、まずは何か自分で生み出してごらんよ」とアドバイスを送りました。
絵でも音楽でもいい。
自分ならではの何かを生み出してみる。
やりたい何かがあるのなら、まずはそれをやってみること。
それが大切だと力説しました。
でもね、そこで気づいたんです。
あ、私、やってないって。
当時は、また絵から離れていた時期だったんです。
若い子には「やれ」っていっておいて、自分ではやっていない。
やりたいのに、できるのに、それをやっていない。
それがすごく恥ずかしいと感じたんです。
 
この出来事があってから、Kさんはまた絵に向き合うことになる。
「絵を描かないと、自分に対して恥ずかしいと思う」
そんな言葉が出てくるくらい、描く時間にのめりこんでいる。
(※この記事の画像はKさんの最近の作品です)

◎提供者側の自分でありたい

「人には、2つの種類がある」とKさんは言う。
1つは、受け取り手となる人たち。
1つは、提供者側となる人たち。
クリエイターと呼ばれる人たちは、何かを生み出し、届ける「提供者側」の人たちなのだろう。
Kさんは、自分は少しでも提供者の側でありたいと話す。
なぜなら、自分の中には「描きたい」との思いがあるから。
描くことで、何かメッセージを届けたいという気持ちもあるから。
私は、そんな自分の気持ちに正直でありたい。
自分ができることに、誠実でありたい。
できることがあるなら、やってみる。
それが自分の果たすべき使命のようなものに、つながっているかもしれないから。
インタビューの最後に、このようなお話をいただいた。
 
自分の中を掘り起こし、自分の中の衝動に気づく。
そして衝動に従い、行動を起こす。
行動を起こし続けることは難しいことかもしれない。
でも、自分の心の中を探り、もし何かが見つかるのなら、それに従ってみること。
本当の気持ちや性(さが)のようなものに正直であること。
それが、自分が持つ「クリエイティブの力」を引き出すコツとなるだろう。
今回のお話を通して、その気づきとして強く心に残りました。
 
インタビューに答えてくださったKさん。
お忙しい中、貴重なお話をいただき、ありがとうございました!

Kさんの作品


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