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創造性の力を高めるコツ【絵本作家/画家/詩人・葉祥明さん】

「創造性の力を高めるコツ」をテーマにした連続インタビュー。
今回お話をうかがったのは、絵本作家/画家/詩人の葉祥明さんです。
 
以下は、葉祥明さんのプロフィールです。
1946年、熊本市生まれ。
1973年、絵本『ぼくの べんちに しろいとり』で絵本作家としてデビュー。
1990年、創作絵本「風とひょう」イタリア・ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。
1991年、神奈川県鎌倉市に葉祥明美術館を開館。
画業50年を越えてなお、絵本作家として新作を発表し続け、近年では、幸せで心穏やかな人生を送るためのヒントを書いた「言葉」が注目を集めています。
 
色彩豊かな絵と心に響くメッセージ。
皆さまもきっと目にしたことがあると思います。
まずは作品を生み出していく際の「発想の源」から、インタビューをスタートしていきました。

◎発想の源について

小さいころから僕は、観察することが好きでした。
虫の動き、雲の動き。
それらをじーっと見つめている時間が楽しかった。
そして考えごとをしたり、空想をめぐらせたりしていました。
そういう小さいころからの時間や経験が、すべて僕の体の中に入っています。
それがふと、何かのきっかけで出てくることがある。
絵を描く時、特に自分が描きたいものを描く時に、それらが発想の源になることがよくあります。
 
人には誰しも、「自分の好き」があると思います。
そしてその好きなことに取り組んだ経験が、誰の中にもある。
積み重ねられた楽しい時間。
集め続けた情報の記憶。
そういうものが、多くの方にとっても発想の源になるのではないかと思います。
また、創造性というものを考えた時、技術を学ぶことも大切ですね。
考えたことやひらめいたことを形にする力。
私の場合、それは絵や言葉になります。
どんな技術がいるのかは、人それぞれ。
考えるだけではなく、それを形にすること。
形にするための技術を身に着け、磨くこと。
それも創造性を発揮するためには、必要になることではないでしょうか。

◎好きな言葉

僕には好きな言葉が2つあります。
1つは「創意工夫」
創意工夫は、どんな仕事でも必要です。
まずは創意。
頭でイメージをつくること。
新しいアイデアやインスピレーションを生み出すこと。
次に工夫。
「工」という文字には、「モノを上手に作り出す」という意味があります。
手を動かしながら、現実にする。
頭で考えたことを、形にする。
考えただけで終わらない。動くこと、形にすること。
その大切さを伝える言葉だと思います。
 
もう1つの好きな言葉は、「臨機応援」です。
世の中で起こる様々な環境変化。
私たちはそれらに向き合い、対応していかなければならない。
その際に大切なのは、「自分」というものがしっかりあること。
1人の人間として「自立」していること。
自立とは、なんとか自分の力で生きていける力のことです。
僕は教育の根本は、「生きのびる力」を身に着けさせることだと思っています。
言葉を変えれば、サバイバル能力です。
人間関係もそう。仕事や生活もそう。
命あるものは、生きのびることが大切。
生きのびる術が持つことが大切。
ところが今は、それを教えることができていない。
安全な環境をつくり、その枠の中で生きていくよう促している。
だから、生きのびる術に意識が向けられず、ぼんやりと毎日を過ごしてしまう。
これは子どもたちだけでなく、大人もそうです。
自立するためには、自分が持つ宝物に気づくことも大切です。
自分の個性や強みに気づく努力をすること。
そのために、気づける環境に身をおくこと。
また、もし人の宝物に気づいたら、それを相手に伝えること。
伝えあい、気づきあい、引き出しあう。
そういう機会づくりが、人の自立心を高め、臨機応変な力を磨くことにもつながると思います。

◎インスピレーションを得るために

インスピレーションを得るためのコツ。
大切なのは、まずはたくさん考えることです。
限界まで、ギリギリまで考えてみる。
苦しんで苦しんで、その後、何も考えない時間をつくるようにする。
頭を空っぽにして、ぼーっとする。
例えば散歩をしたり、お茶を飲んだり。
そんな時にインスピレーションは、ぽっと生まれるものです。
インスピレーションという言葉。
イン(IN)は、入ってくるという意味です。
何が入ってくるかというと、スピリットが入ってくる。
それはエネルギーのようなもの。本質的な精神のようなもの。
どこから入ってくるかというと、スピリットの世界。
高次元の世界とつながり、そこから情報が入ってくる。
それがインスピレーション。
繰り返しますが、インスピレーションを得るには、まずはしっかり考えることが大切です。
もうこれ以上は無理、というところまで考え抜くようにする。
その後は、考えを空っぽにし、スピリットの世界にゆだねてみる。
あるがままにまかせてみる。
そのために、1人だけの静かな時間を過ごすようにする。
そうすると、何かに気づいたり、わかったりするものがあるものです。
 
インスピレーションが降りてきた時は、その情報に集中することが大切です。
先のことは考えない。
過ぎたことも考えない。
今この瞬間にだけに意識を集中する。
瞬間の中に、雑念が入る余裕はありません。
それがインスピレーションに向き合う際の心構えです。
スポーツで言われるゾーンというものも、これと同じかもしれませんね。
情報を詰め込むだけでなく、情報をなくす機会をつくること。
そうすることで、インスピレーションの扉を開くことができるようになります。
そしてその経験を重ねることで、この扉の開け閉めができやすくなる。
自分の外側にある情報から、知恵を得ることができやすくなる。
僕はそのように感じ、考えています。

◎今必要な教育について

ここからは少し、子どもたちの教育について話をしてみたいと思います。
いまの教育は、子どもたちに情報を押しつけすぎだと思います。
情報を与えすぎ。そして枠にはめ込みすぎ。
多くの親が、勉強をさせることが、子どもの可能性を広げることだと思っている。
教育をしないと、その子の花が開かないと思っている。
僕はそうは思いません。
押しつけ、枠にはめ込むことで、子どもたちの可能性を狭めているように感じるのです。
子どもはみんな無限の可能性がある。
それを見守りながら、はぐくむ育て方もあると思うのです。
押しつけるのではなく、あるがままにゆだねてみる。
信じてみる。
余計なことをしない。手を加えない。
無為自然の教育。
それが最高の教育ではないか。
それが天才を生み出す教育なのではないか。
そのように考えているのです。

◎「自分の引き出し」を増やすための取り組みや習慣

僕は「洋雑誌」を見ることが大好きです。
海外の雑誌や本は、紙がいい。
印刷がきれいで、写真がいい。
色彩感覚が素晴らしいし、レイアウトなどのセンスもいい。
そんな洋雑誌を見ているだけで、写真を眺めているだけで、イマジネーションがどんどんとわいてくるのです。
また、本棚に並んだ本の背表紙。
海外のものは美しさがあります。
調和がとれている。
見ていて、気持ちよさや心地よさがあります。
対して日本の本の背表紙。
情報がダラダラと多く、雑多な感じがある。
デザイン的にも調和がない。
僕は何かが目に入る時、それが絵になるかならないかが気になってしまう。
それは絵描きとしての性分なのかもしれません。
美しさや気持ちよさがあるものはいいですね。
その美しいものを取り出し、フレームに入れると作品になる。
海外のもの、特に北欧のものには、それを強く感じます。
美しいもの、絵になるものに触れること。それが私の引き出しづくりにつながっています。

◎創造的な力を高めたいと思う人へのアドバイス

あなたの中にヒントはあります。
自分の内側を見つめてください。
見つめるためには、1人の時間が大切です。
孤独を恐れないでください。
静かな時間を過ごしてください。
そうすると、ふっと、そのヒントに気づくことがあるでしょう。
情報量を増やすのではなく、減らすこと。
外の情報を探すよりも、自分の内側に意識を向けること。
そして、余計なものを削っていくこと。
足し算ではなく、引き算をすること。
どんどん削り、無に近い状態になった時、大切な自分の姿が見えてくると思います。
 
あなたの中には、素晴らしい宝物がすでにあります。
あなたは今のままで、グレイスフル(優美)な存在です。
それに気づいてください。
また同様に、他者の素晴らしさにも目を向けてください。
人はそれぞれ、宝物を秘めた存在です。
ですから、それに気づいたら褒めること。
大人に対してもそうですが、ぜひ、子どもたちを褒めてください。
親や先生はもちろん、そうでない皆さまも、縁ができた子どもの良さを見つけ、褒めてあげる。
僕は、子どもはみんな天才だと思っています。
子どもたちは無限の可能性を秘めている。
しかしそれに気づく機会がなかなかない。
褒めることで引き出すこと。
自分の可能性に気づく機会をつくること。
そうするとお互いの間に、愛のエネルギーが通います。
そのエネルギーも、あなたの創造性の力になると思います。

以上、インタビューを通し、葉祥明さんからうかがったお話の一部をご紹介させていただきました。
葉祥明さんは、私が長年あこがれ続けてきた方です。
絵本やエッセイのメッセージに、何度救われてきたかわかりません。
この度、このような貴重な機会をいただき、心よりのお礼の言葉を申し上げます。
本当にありがとうございました!

インタビュー後に、葉祥明さんからいただいたサイン。
2018年、トークイベントでご一緒した際の記念写真。
※トークイベントの様子


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