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“フリートーク” 音|おと|オト vol.1 『音楽と感情』

「“フリートーク” 音 | おと | オト」では、ONTELOPE(オンテロープ)のプロボノメンバーが「音」にまつわることを自由なテーマ、自由なスタイルで配信していきます。
 
初回はnitamonさんで、テーマは『音楽と感情』。
 
最後までお楽しみください!


自己紹介

初めまして、nitamonと申します。ONTELOPEでは企画やワークショップなどを担当しています。
 
経歴を簡単に紹介すると、現在はスタートアップのアドバイザーなどをする傍ら映画音楽を作曲しています。それまでは、スタートアップで人型ロボットを開発したり、UX検証を担当したり、さらにその前には検索エンジンのライブラリ開発など、主にテクノロジーに関する仕事をしていました。
 
ONTELOPEにジョインしたきっかけは、「音が目でわかるプロダクト」が非常に興味深いと思ったこと、今の作曲とは別の軸で音について向き合いたいと思ったことです。

この記事は音に関することがテーマなので、映画音楽を通して、音楽と感情についてお話ししたいと思います。

映画音楽について

まず「映画音楽」とはどのようなものでしょうか。

映画の音は大まかに役割の異なる3つの音で構成されています、セリフ(ナレーション含む)、効果音、そして映画音楽です。映画音楽と効果音は混合されることが多いですが、両者は異なる役割を担っています。
 
映画音楽は、映画の世界観(例えば魔法の学校、西部劇の荒野や宇宙船が行き交う宇宙空間など)を感じさせる、登場人物の感情を伝える、今後の展開を予測させる、アクションの臨場感を感じさせる、観客の認知をガイドするなど 主に特定の場面をより印象的なものにしたり、物語のディレクションをガイドしたりする役割を担うことが多いです。
 
なので、一度映画とその音楽を経験すると、映像なしで音楽を聴いただけでもその映像や体験が追体験できるところも映画音楽の魅力の一つです。
 
効果音は、足音、銃の発砲音や実験室の爆発音など演出の音であり、映画の世界観をよりリアルにするという点で映画音楽とは目的が異なります。
 
余談ですが、「映画音楽と効果音が呼応するように映画音楽を発注した」とおっしゃっていたドキュメンタリーのディレクターの方もいたので、双方の役割が完全に分かれているというわけではありません。
 
つまり映画音楽は見ている人の感情や認知に大きく影響を与えます。

それはどのように起こるのでしょうか。

どのように音楽が特定の感情を引き出すか

一般的にさまざまな映画音楽の要素が特定の感情を引き出しますが、ここではその内の一つにフォーカスして説明したいと思います。
 
まず、映画音楽はleitmotif(ライトモチーフ)という、特定の人物、オブジェクト、アイディア、状況などに関連づいた作品全体で繰り返されるテーマをもつことがあります。
 
leitmotifとは、オペラや交響詩など曲中の人物や状況に紐づいた、繰り返されるメロディで、人物の感情変化や状況の変化によって和音が変わったり、変奏されたり、展開したりします。
 
具体例を見ていきましょう。

ここから先は『ロード・オブ・ザ・リング』、『ジョーズ』の内容に少し触れるのでネタバレを避けたい方は飛ばしてください。

ハワード・ショア作曲『ロード・オブ・ザ・リング』の中のシャイアのテーマ

これはシャイアと呼ばれる主人公(ホビット族)の故郷のイントロダクションやホビット族で遊んでいる際に流れるメロディです。その際、楽器もフォーク音楽に使われるpan flute(パンフルート)などで構成されているので、民族的で田舎の印象を観客に与えます。
 
これがシャイアのイントロダクションで流れ、観客はそこでシャイアの雰囲気を体験します。その後主人公が冒険に出てシャイアを離れますが、その際に流れることで主人公の故郷を思う懐かしい気持ちを私たちが追体験できるようになっています。

ジョン・ウィリアムズ作曲『ジョーズ』のテーマ

2音で構成されている印象的なテーマです。このテーマが聞こえるとジョーズ(巨大なホオジロザメ)が近くにいることを暗示し、さらにそのテーマの2音の長さの間隔が狭くなるとだんだん近づいてくる感覚を観客に与えます。
 
また、音楽的な要素だと、2音の間隔が短2度なので不協和音、つまり大抵の人にとって心地悪さを感じる音で構成されており、嫌なことが起きるシグナルを観客に伝えています。
 
これによって姿はほとんど見えないが、ジョーズに襲われるまでの間に緊張感を生み出し、観客はよりドキドキを感じることができる仕組みになっています。

このように映画音楽は意図的に、一方で、とても自然に私たちの感情と認知を変化させています。

まとめ

音楽は聴く人の感情に影響を与えます。その中でも、映画音楽はわかりやすく感情や認知にアプローチします。
 
そのほかにもアスリートが自分を鼓舞するために音楽を聴いたり、私たちも日常生活で気持ちの切り替えをしたい時に音楽を聴いたり、音楽を聴くことを通して意図的に感情を変化させることもあります。
 
音楽が私たちの感情に与えている影響は目に見えないものですが、その影響力は非常に大きいと私は感じています。そこで思うのが、聴覚に障害がある人はこの経験ができないのかということです。
 
ここまで例に挙げた『ロード・オブ・ザ・リング』、『ジョーズ』が音無しだとどう感じるのか、私は『ジュラシック・パーク』を“音無し”で見たことがありますが、興奮やスリルが“音有り”と比較した際に格段に無いと感じました。
 
今の映像作品のほとんどは聴者向けにつくられています。ですが、私は、今回お話ししたような映画音楽によってもたらされる体験を何かしらの方法を通じて聴覚障害者の方も感じて欲しいと思っています。
 
そして、私は、聴者以外の人も同様にリッチな映像体験が当たり前のようにできる世の中にしていきたいと思います。
 
ONTELOPEのプロダクトやプロジェクトを通して、そのような世の中に近づいていきたいです。賛同いただける方は参加、記事のフォローをよろしくお願いします。


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