人はなぜ「準備」をするのでありましょうか 「伝えるための準備学」(古舘伊知郎著、ひろのぶと株式会社)
男は、無口な少年でした……
お喋りな母と姉に圧倒され、「男は無口なほうがいい」と言わんばかりに、じっと黙ってうつむき、ただそこに存在していることだけを欲するかのように、少年は、佇んでおりました。
その寡黙な様相からは、これから訪れる稀代のお喋り野郎の風雲録が、血みどろのチャペルの鐘の音とともに切って落とされることなど、いったい誰が想像することができたでありましょうか。
さて、ここで我々は、20年前の2004年に記憶を遡ってみましょう。
ワシントン州・シアトルのベースボールスタジアムは、当時、セーフコ・フィールドの名称でありました、ここを拠点とするシアトル・マリナーズに在籍した背番号51番の天才打者が一人、人間離れした異次元の活躍を見せたことを思い出します。一世を風靡した振り子打法をあっさりと捨て、変幻自在のバッティングコントロールで、空前絶後の年間シーズン最多262安打を達成し、世界をあっ!と驚かせた出来事を、ご記憶の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
彼は言いました。
「“準備”というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく、そのために考え得るすべてのことをこなしていくこと」なのだと。
そうです、彼の名はイチロー。しかしながら本日の主役は、この「イチロー」ではありません!
この孤高の天才打者と同じ名前を持つ男が、この読書感想文の主役であります。
「古舘伊知郎」
伝えることに目覚め、伝えることに魅了され、伝えることに挑み続け、伝えることに狂乱したおしゃべりモンスターは、本書において、いったい何を語ったのか、いや、はたして何を執筆したというのでしょうか!?
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さあ、始まってまいりました、「伝えるための準備学」。オレンジと黒のシンプルな装丁から、まるで、大学教授が自身の研究成果を一冊の本にまとめた大学生のための教科書のようなタイトル。これは、決してタイトルだけで売ろうとはしていない。しかしながら、こちらは重版となった人気本であります。出版社は、「ひろのぶと株式会社」。んん!?聞いたことがないぞ!それは、あまりにも失礼だ!!この文章を書いている人間はすぐに訂正したほうがいいんじゃないのか!?そうです、新進気鋭の出版社。魑魅魍魎が跋扈し、血で血を洗う出版業界で、このシンプルな装丁とシンプルなタイトルは誠に挑戦的であります。これは著者が「古舘伊知郎」だからこそ、このタイトルでこの装丁で出すことで売れるのだ、そんな自信をのぞかせる一連の設えであります。
そして、「ひろのぶと杯」です!未だかつて、「杯」の前に「と」を入れたコンテストなどあったでしょうか!?これはある意味チャンスであります。いったい本書には、何が書いてあるというのでしょうか!果たして、「準備学」とはいったい何なのか!我々は、本当に読むべき本を間違えていないのでしょうか!?
さあ、それでは、ページをめくってまいりましょう。我々は、今、全く予想のつかない物語の第1章に足を、いや、指先と目線を差し込んで、まさにその眼球から脳内細胞へとそのエッセンスを取り入れようとしているのであります。
まず、私たちの眼前に立ち現れたのは、そう!F1実況です!!プロレス実況界でその名を轟かせた古舘伊知郎が、あのテレビ朝日を退社し、満を持して乗り込みました新境地。さあ、いったいどんな実況を見せてくれるというんだ。
「ブラジル開幕戦、ネルソン・ピケ・サーキット、猛暑のブラジルです!」、セナが、プロストが、ピケが、中嶋がいるぞ!!そして今、戦いの火ぶたが切って落とされました!んんっ!お——っとどうしたっ!!、接触っ!接触っ!!!セナが接触しました!どうしたっ!実況はどうしたんだっ!まるで何を言っているのかわからないぞ!まさか頭の中が真っ白になってしまったのか!?まさに実況にとっての悪夢。悪夢の第1章の幕開けであります!!!
さあ、この後一体どうなってしまうのか、誰も予想ができない!これはまさに開幕直後にして驚天動地の展開であります!
さあ、そして、ここから私たちは、悪夢の始まりとなってしまった実況の単なる傍観者から、「古舘伊知郎」の頭の中を縦横無尽に駆け巡っていく冒険者となっていくほかないわけであります。
人は、いったい誰を天才と呼ぶのでしょうか。万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチか、20世紀最高の物理学者アルベルト・アインシュタインか、はたまた天才漫画家赤塚不二夫が生み出した天才バカボンなのか。
そして、「古舘伊知郎」は、天才なのか。
あれだけの語彙力、おしゃべり、マシンガントーク、実況であるにも関わらずリアルタイムであることを忘れてしまう、まるで初めから神が決めていた言葉が空から舞い降りてきたような、名実況の数々。彼もまたアナウンサー界であるいは芸能界で、あるいはnoteの路地裏で、いや、伝えることを生業とするすべての生きとし生けるものの界隈で、天才の異名をほしいままにしていたのではないでしょうか。
「いいや、それは違う」と彼はいうでしょう。「古舘伊知郎」は天才ではないのだと。では、「古舘伊知郎」とは、いったい何者なのでありましょうか!?
彼は、こう言いました。自分は「職業・準備家」であると。自他ともに認める徹底した準備。その入念さに我々は度肝を抜かれるのであります。
いったい何が彼をここまで追い込んでいくのか。彼は、準備にやみつきになっている!既に常識的な人間が理解できる領域を超えて、狂ったように準備にのめり込んでいるのであります!彼は、追い込まれているというのではなく、あえて自分で自分を追い込んでいるとでもいうのでしょうか。何ということでしょうか!!第1章の悪夢を振り払うかのように、書き上げたメモ、まるでカブトムシゼリーに群がるアリの大群のように、細かい文字がびっしりだ!なんだったら、もう書けるスペースがないじゃないか!!ちなみに本書を買ったら、実際のメモの中身も見ることができるぞ!!!ものすごい準備だ!!!徹底している。彼にとってはもはや、準備は、本番そのものであります!!そして、本番は、まさに言ってしまえば超本番であります!!!
さあ、ここからは超本番の第2ラウンドだ!実況席に入っていくその姿はまるでコックピットに入っていく機動戦士ガンダムの操縦士といったところでしょうか。そして、先ほどのメモはどうなのか。相変わらず字がびっしりだ。さあ、メモはどうする!?そのひしめき合う情報のすべてを脳内に叩き込み、その知識を実況に生かす、名言を繰り出すタイミングを今か今かと待ち構えているのでありましょうか!?
お—―っと!!んん!!これは、どうした!!!なんということでしょうか!!!なんとメモを捨てました!!!古舘伊知郎が、捨てました!!!あれ程までに入念に準備したメモを、何のためらいもなく捨てております!!!!ここにきて「コスパ」なんかクソくらえだとも言わんばかりの裸一貫!あまりにも大胆不敵。かつて、少年ジャンプに連載されていたドラゴンボールの孫悟空が、数十キロはあるであろう武道着を脱ぎ捨て、上半身裸の状態で戦闘に入った、まさかその境地に至ったとでもいうのでしょうか!!?
あーっと!どうした!!もう準備したものは、飛んでしまっているぞ!!それは自分で捨てたからだ!!いや、ん?これは?なんということでしょうか!準備を捨てて、おかしくなってしまったのか!?いいや、違います、彼は、興奮しています!!覚醒しています!!いったい、どうしてしまったんだ!!我々は、準備を捨てて覚醒したトーキングモンスターをマッドサイエンティストのように培養してしまったとでもいうのでしょうか!?あるいは、先ほどの孫悟空が、フリーザ戦での入念な準備の想定範囲を遥かに超えて、己が持っているポテンシャルを最大限にまで引き上げんと、スーパーサイヤ人にまでその姿を進化させたでもいうのでしょうか!はたまた、ワインの成分である澱のように脳内の奥底に沈殿した記憶を、あえて自身を極限状態に追い込むことで、再び浮かび上がらせ、そこからワイン本来の味わいをさらに引き出そうとあがいているとでもいうのでしょうか!!?
いずれにしてもこの精神力。もはや並みの精神力ではありません。日々の鍛錬と準備により培った強靭な精神力、栄光と挫折を織り込み済みの準備力は、もはや他の追随を許しません!!
さあ、彼の行った準備とはいったい何だったのか。ここまでの準備を可能にするものは何なのか!?そして、彼はいったいどのような境地に到達したというのでしょうか!!?
もうこの先は、まさに一瞬たりとも目が離せません!!
しかしながら、ん!??お――っと何ということだ!ここで文字数が3500字を超えているぞ!!これ以上は長すぎる!!!もうやめないと流石にうるさすぎるとクレームが入ってしまうぞ!!!
そうです!!ここから先は、下のリンクから本書を買って読むほかありません!!!
さて、1冊購入いかがですか?
(感想)妄想が膨らんで面白かったです。
※Amazonアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。
本書の読書感想文の企画(ひろのぶと杯)をやっているそうなので、感想(?)を書いてみました!
以下の4つのハッシュタグを入れて、本書「伝えるための準備学」の感想を書くと応募できるようです!
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追伸 古舘さんはこのトーキングブルースがほんとにすごいです。
そんなわけで、古舘風noteで遊びまくって「今日一日を最高の一日に」
※ スタエフで感想の感想を入れてみました。