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【小説】Runners(夫編②)
2024年7月20日9:00
今日の朝は、外でランニングをした。たまに休みの日もあるけど、定期的な運動ができるようになってきた。
ランニングは、確かにいい運動にはなる。ただ、この前軽い気持ちで「草田温泉周遊マラソン」にエントリーしてしまったけど、10kmも走れるのだろうか。山奥だし、アップダウンも激しい。
この前、為岡市シティマラソンに出たときは、5kmコースだったのに、息が上がりすぎて、もう死ぬんじゃないかってくらいの状態だった。
今日も1kmくらい走ったら息が上がり始めてしまい、2kmくらい走ったらもう歩いてしまうような状態だ。調整が間に合うのかどうか…
だんだん自信がなくなってきた。
とりあえず、お腹すいたなあ…
思えば、今井家はみんな食べる一族だった。親父は60歳超えたのにいまだに一族の中で一番食べる。子どものときは、おいしいかどうかより、たくさん食べられるかどうかが第一基準の家族だった。ということで、バイキング・食べ放題が一番人気。その中でも親父が一番よく食べた。食べ放題で、食べられるかどうかじゃなくて、そういうこと考えずに本能の赴くまま他の人の分も含めてまとめてたくさん頼むんだよね。オヤジ頼みすぎだって(笑)。で、みんなで、もう食べられないってくらい満腹になって帰る。
そんなわけで、今井家は大食い一族だった。
それに対して、妻の小泉家は少食だった。でも、妻のお母さんは、とても丁寧に料理を作っていた。とても繊細な料理で、味付けもこだわりが感じられてめちゃくちゃおいしい。一方で、今井家のメシは、兄弟そろって「給食のほうがうまい」だった。
妻は、旧姓が小泉だったから、前の名前は、小泉キョウコだった。あのキョンキョンと同姓同名だ。学生時代はそれでけっこういじられたらしい。それで、そういうのに敏感になって、まわりにすごく気を遣うようになった感じがする。自分でもそんなようなことを言っていた。
私はよく鈍感だと周りから言われるが、妻が私に対して気を遣っているなというのはなんとなくわかる。ただ、いったい何に気を遣っているのかがわからないときが多い。妻はいつも私よりも先にいろいろな物事に気がついて指摘する。それはありがたいことでもあるのだけれど、あんまりにもそういうことが多いと私の理解を超えてしまってちょっと疲れてしまうこともある。
でも、それは鈍感で気がつかない私が悪いのではないかとも思う。
だからせめて、敏感な妻が気を遣っていることについてはできるだけアンテナを張るようになったのかもしれない。それでうまくバランスが取れていればいいのだけれど…
*
2024年7月20日17:00
「マラソンをやろうと思ってるんだよね」
会社の同僚たちがぼちぼちといった感じで帰り支度を始める中、微妙に話題が無くなりそうなタイミングで私はみんなに話題になりそうな水を向けた。
「えー、ケンシロさん、マラソンやるんですか!!」
やけにはしゃぎながら、可愛らしい声を上げたのは、Oさんだ。
くっきりした二重の綺麗な瞳で、仕事のできる聡明な美人だ。スタイル抜群で、思わず男性の目を引いてしまう。ある社員は、絶世の美女、まるで美の女神ヘレネ-の化身だとか、そんなようなことを言っていた。ヘレネーって誰だ?
「まだ、始めたって言っても再開してから1カ月もたってないだけど」
「えー、私もマラソンハマってるんですよ~。この前初めてサブ4達成して、去年はホノルルマラソンに出場できて、最高でした。」
「へえ、そりゃすごいね!」
サブ4ってなんだろう?
「ケンシロさん、マラソンシューズ買いました??」
「いや、普通の運動靴。」
「それじゃあだめですよ~。ちゃんとしたマラソンシューズ買わないと!。あ、そうだ。仕事の合間を見て、今度一緒に買いに行きましょうよ~。滝の台のアウトレットに新しいスポーツシューズ屋さんができたんですよお!!」
「え、さすがに勤務時間中はまずくない?」
「大丈夫ですよ!うちは超ホワイトな部署ですから!なんでうちのチームはうまくいってるのかわからん、って他の部署からよく言われるじゃないですか!うちの上司だったら、外回りのついでとかだったら絶対大丈夫ですよっ!!じゃあお先に失礼しま~す」
Oさんは、ときどきちょっと強引だが、あの容姿でなんともいえずチャーミングだ。そういうギャップがきっとモテるんだろうなぁ。そういえば、Oさんってまだ、結婚してなかったんだっけ?
まぁとにかく、マラソンには、専用のシューズがあったのか。そんなことも知らなかった…さて、今日はまだ残業が残ってる。そんなわけで、もう一仕事…
それにしてもお腹すいたなぁ
*
2024年7月20日21:00
また、帰りが遅くなってしまった。
子どもたちは仲良くお風呂に入っているようだ。
妻は、相変わらずパソコンでタイピングに集中している。
一体何をやっているんだろう。そんなに、パソコンでタイピングばっかり打ち込みまくる仕事って今どきあるのかな。そして、なんかまたテレテレ笑ってるような気がする。
まあ、楽しそうだからいいか。
とにかく明日も完走を目指して運動しよう。明日も、外でランニングだ。
※フィクションです
(つづく)
次回の投稿は、妻編② 7月20日21:30です。
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