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「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める

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「人間の条件」(ハンナ・アレント)をシロウトがわからないなりにこつこつ読み進めていくという試みです。
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私的領域 公的に対する「私的」とは / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(10)【第2章-8】

私的領域 公的に対する「私的」とは / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(10)【第2章-8】

前回

1 「私的領域」の発想 (「公的領域」と対としてみる) 今回は、「公的領域」に対する「私的領域」を考える。

 この点については、まず、「私的」“private”はもともと「欠如している」という観念を含むというところから、話がスタートする。

 つまり、公的領域に不可欠なものが「奪われている」(deprived)という発想で考えることがポイント。

 具体的には、前回、取り上げた公的領域の

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公的領域とは何か / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(9)【第2章-7】

公的領域とは何か / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(9)【第2章-7】

前回

めっちゃあいだが空いてしまいました。あきらめずにがんばろうって思い直しました笑

はじめに
 最近、解説本を買いました。

すごく詳しい解説です(500ページ近くあります)が、講義形式になっていてわかりやすいです。
原典の訳も参考に読解をしています。この本も参考にしながらよみ進めれば理解も深まりそうです。

公的領域とは何か
 さて、今回は、私的領域と公的領域について掘り下げていきます。

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社会的なるものの勃興 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(8)【第2章-6】

社会的なるものの勃興 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(8)【第2章-6】

前回

私的領域と公的領域は、時代に応じてどのように変化してきたのか
 前回、家族的領域(私的領域)と政治的領域(公的領域)は、古代ギリシャにおいて明確に区別されていたと述べた。
 そして、「明確に区別」について少し掘り下げて、考えた。

古代ギリシャでは、明確に区別されていたということは、今は明確に区別されていないということである。

 言い換えれば、社会的領域が誕生し、区別があいまいになったと

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家族とポリス / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(7)【第2章-5】

家族とポリス / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(7)【第2章-5】

前回

「家族的領域」と「政治的領域」の意外な起源

 前回、「社会的領域」と「政治的領域」を対比した。
 前政治的な「家族的領域」から派生したポリスが「政治的領域」として生まれ、それからしばらくして「社会的領域」が誕生したという経過だ。

 なお、その中間の私的なものとも公的なものとも言い切れない「社会的領域」というのは、実は、古代にはなく、「社会的領域」が明確に誕生したのは近代以降とアーレント

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「政治的動物」と「社会的動物」 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(6)【第2章-4】

「政治的動物」と「社会的動物」 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める(6)【第2章-4】

前回

ここから第2章。番号は通し番号になっています。

話題は古代ギリシャへ・・・

「社会的」と「政治的」の違いを考える
「人間は政治的動物である」とアリストテレスは言った。

 ここでは、政治的動物と社会的動物は同じなのか、違うのか、
という問題意識を持ってみようと思う。

 アーレントによれば、どうも同じようなものだと考えられた時期もあるような感じだが、最終的な結論は「違う」ということだ思

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不死と永遠のちがい / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める⑤【第1章-3】

不死と永遠のちがい / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める⑤【第1章-3】

前回

不死と永遠の違いを考える
 <観照的生活>VS<活動的生活>の続き。
 思考の人と活動の人の相反する原理である。

 アーレントは、この原理を対比するのに、一番簡単な方法が、不死(イモータリティ)と永遠(イターニティ)の違いを考えてみることだよという。

 どういうことか。

不死 死なないこと 動的なもの 不死とは、時間における耐久性、この地上と世界において死ぬことのない生命とアーレント

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<活動的生活>と<観照的生活>/「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める④【第1章-2】

<活動的生活>と<観照的生活>/「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める④【第1章-2】

前回

<活動的生活>の位置づけ
 本節では、<活動的生活>という用語について説明。
 どうも、歴史的背景があるようで、話せば長くなりそうな感じである。 

 この説明でアーレントは何をしているのか。

 私は、この節も前節と同様に、アーレントがこれから何を中心に論じるのか、あるいは何を論じないのかを明らかにする作業をしているだけなのではないかと思う。

 前回に続き、丁寧に議論の射程を明らかにし

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労働と仕事と活動 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める③【第1章-1】

労働と仕事と活動 / 「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める③【第1章-1】

前回

定義:〈活動的生活〉 いよいよ、第1章。

 冒頭、アーレントは、これから「私たちが行っていること」を論じるにあたって、ひととおりの概念の定義をしている。

〈活動的生活〉 vita activa

 アーレントは、 労働、仕事、活動の3つの基本的な人間の活動力を意味するものを〈活動的生活〉と定義している。
 労働、仕事、活動の3つについては、少し長いが引用する。

 たぶん間違いなく大事

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「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める②【プロローグ】

「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める②【プロローグ】

1957年、人工衛星が地球を廻った 本書は「一九五七年、人間が作った地球生れのある物体が宇宙めがけて打ち上げられた。」という一文から始まる。

 スプートニク1号が打ち上げに成功したとき、当時の人々はどのようなことを考えたのだろう。

 今だったら、初めて火星に人類が到達したみたいな感じだろうか。
 果たして、火星に人類が到達した場合、われわれは、どんな感情になるだろうか。

 人間はすごいなとい

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「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める①【これから読むにあたって】

「人間の条件」(ハンナ・アレント)をド素人が読み進める①【これから読むにあたって】

難しい本が最後まで読めない
 まともに本が読めないときに限って、難しい本にチャレンジしたくなる。

 私は、難しい本を、なかなか全部とおしで最後まで読み通せることができない。途中であきらめてしまう。
 本なんて読めていようがいまいが、生きていけるわけだが、たまにはちょっと頑張って最後まで読んでみたいと思っちゃうときもある。

 何故、最後まで読めないのだろうか。自分なりに考えてみた。
 まず、本を

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