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あなたの糖質に対する認識は合ってますか?

糖尿病患者さんに栄養の指導をする際に、避けては通れない「糖質の話」です。
多くの患者さんが「糖質は悪」と認識しています。
それは糖質のことをちゃんと理解していないからなんですね。
なぜなら、ちゃんと理解し指導や助言をしてくれる人がなかなか周囲にいないからなんです。
誤った知識で家族が「甘いものはダメ」「糖分摂り過ぎ」と叱責する姿をよく見ます。残念ながら医療従事者の中にも同様の発言をする方が一部います。これをスティグマといいます。

今回は、正しい糖質の知識を身に付けていきましょう。


炭水化物・糖質・糖類?

みなさん、糖って大きく3つに分類できるって知ってました?

ここで良く見聞きするワードとして、「糖質ゼロ」「糖類ゼロ」ってありますよね。本当にゼロなの?何がゼロなの?って思ったことありませんか。

実は完全なゼロでないものも含まれます。

飲料の場合、100mlあたり糖類・糖質が0.5g未満であれば「ゼロ」と表記しても問題ないのです。また糖類が2.5g未満であれば「糖類オフ・低糖類」のような表記をすることが出来ます。

食品の場合、100gあたり糖類・糖質が0.5g未満であれば「ゼロ」表記が可能です。また糖類が5g未満であれば「糖質オフ・低糖類」と表記が出来ます。

人工甘味料って何?

人工甘味料とは、その名の通り、化学合成によって作られた甘味料です。

砂糖の数百倍の甘さがあり、少量で味付けができるため、カロリーを抑えた砂糖の代替品として、清涼飲料水やガムなどさまざまな食品に使われています。

人工甘味料は、大きく分けると「糖アルコール」と「合成甘味料」の2種類があります。
 ・糖アルコール…もともと自然界にある糖質を化学合成したもの
   :キシリトール、ソルビトールなど
 ・合成甘味料…自然界に存在しない糖質を化学合成したもの
   :アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースなど


人工甘味料のメリットとデメリット

メリット
・摂取カロリーを抑えることができる
・食後高血糖を抑えることができる

※人工甘味料にはブドウ糖が含まれていないため、摂取しても血糖値やインスリン値が上昇しません。そのため、人工甘味料は肥満や糖尿病の予防に有用と考えられています

デメリット
・常用すると味覚が鈍くなる可能性がある
・食欲増加につながりやすい
 ※血糖値が上がらに反面、満腹感を得られにくい
・糖尿病や心血管疾患の発症リスクを高める

※世界保健機関(WHO)が2023年5月に発表したガイドラインでは、人工 
甘味料を含む食品の長期的な摂取によって、糖尿病や心血管疾患の発症リスクが高まると発表されています。ただしこのWHOの調査は、日本では使われていない人工甘味料も含めた調査結果です。日本と海外では食事やライフスタイルが異なるため、WHOの調査結果がそのまま日本人にも当てはまるとは限りませんが、情報のひとつとして頭に入れておくとよいでしょう。


糖質は三大栄養素の一つ


話は戻って、糖質って実は生きていくうえで必要不可欠な栄養素なんです。
でも、糖尿病を罹患しているというだけで、「糖質はダメ」と言われてしまいます。これは正しい知識がないから出てくる言葉なんです。
上記のように人工甘味料では血糖値は上がりません。もちろんデメリットも存在しますが、うまく利用することで糖尿病があっても一般の方と同じように食事を楽しむことが出来ます。

誤解がある方もいるので、改めて説明しますが、糖尿病であろうが健康であろうが、糖質を摂ったら血糖値は上昇します。それが普通なのです。
糖尿病があると血糖値が健康な方に比べて上昇しやすいのは確かです。
つまり、血糖値が上がることが問題なのではなく、急激に上がることが問題なんです。

血糖値が上がりやすい食品・上がりにくい食品

GI値:Glycemic Index(グライセミック・インデックス)って聞いたことありますか?

食品に含まれる糖質の「吸収の度合い」を示すものです。 血中のブドウ糖濃度はGI値が高い食品を食べた時ほど急激に上昇してしまいますが、GI値の低い食品ほどおだやかに上昇します。

これを参考に食品を選ぶことが大切です。

以下に様々な食品のGI値を記します。

https://www.rakuten.ne.jp/gold/papamama/alpha30_GI.html  参照
https://www.rakuten.ne.jp/gold/papamama/alpha30_GI.html  参照

主食となる白米や食パンは数値が高いですので、一方で同じ主食でも玄米やパスタは低めの数値となっています。
主食のGI値の特徴としては「白いものはGI値が高い」「茶色いものはGI値が低い」ということで、患者さんには細かい説明が難しいことも多いため、この特徴を伝えるのが簡単です。

血糖値の急激な上昇を抑える食べ方


食事は食物繊維の多い野菜から食べ始めましょう。次に肉や魚などのたんぱく質のおかずを食べて、最後にご飯や麺類などの主食を食べると血糖値の急上昇を防げます。

食物繊維は糖の吸収を穏やかにする働きがあります。食物繊維の豊富な野菜、海藻類、こんにゃくなどを使ったおかずは噛む回数が増えるため満腹感も得やすいです。

また、野菜と一緒にたんぱく質を摂ると血糖値が上がりにくくなる効果がアップするといわれています。野菜サラダにツナや鶏ハムをプラスしてみるなど、工夫してみましょう。


糖質の役割

糖質の役割をご存じですか。糖質は血液により筋肉内のミトコンドリアに運ばれ、そこで酸素と合成される過程でエネルギーを作ります。
つまり、生きていくうえで必要なエネルギーの源なんですね。

では、糖質をあまり摂らずに生活するとどうなるでしょうか。エネルギーを作るための材料がないため、エネルギー不足になっていまします。このままでは、生きていくことが不可能となるため、体内から糖質を作ろうという反応が起こります。これを「糖新生」といいます。

乳酸、ピルビン酸からグルコースを合成する反応を糖新生といいます。
アミノ酸やグリセロールからグルコースを合成する反応も糖新生といいます。

このアミノ酸って何かご存じですか?これはタンパク質を細分化した状態のものです。つまりアミノ酸はタンパク質の一種であり、そのタンパク質は体内ではある組織を構成しています。その組織は筋肉です。

つまり、糖質が不足すると、人間の体は筋肉を分解して糖質を作ろうとします。これが大問題なんです。

筋肉は糖質と酸素を合成してエネルギーを作る場所です。これを基礎代謝といいます。筋肉が分解されるということは基礎代謝が低下するということ。
つまり糖質の利用が減り、血糖値が下がりにくい体質になるのです。

血糖値を下げようとして糖質制限を過度に行った結果、逆に血糖値が上がりやすくなってしまうなんて本末転倒ですよね。

だから糖質は三大栄養素であり、決して悪い栄養素ではないんです。
ここの理解が出来ていないと誤った栄養指導を行ってしまいます。

ダイエット等でも糖質制限が一時流行しましたが、あれは間違いではないですが正しくもありません。
身体の中でどのようなことが起こるのかをしっかりと理解することが重要なんですね。

今回は誤った糖質の認識を持つ人が世の中には多くいることで、糖尿病患者さんが辛い思いをしている現状を何とかしたいと思い、正しい糖質への認識を持ってほしいと思い執筆しました。
今後の糖尿病患者さんへの関わり方に少しでも役立てて頂けたら幸いです。


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