【2xxx年プロ野球開幕】


僕はプロ6年目になる28歳。
ポジションはセカンド。
堅実な守備が評価され、大学卒業後プロの門を叩きました。

しかし、2軍での生活を送る日々。
どんなに守備がうまくても打てなきゃ意味がありません。
監督は打線の強化を第一優先に考えていましたので、僕のレギュラー入りは構想外でした。

僕は苦手なバッティングを克服するため、毎晩ピッチャーの癖を研究しバットを振り続けました。
努力の甲斐があり、プロ4年目で二軍の首位打者になりました。5年目の去年ついに初の一軍登録。
8月にレギュラーに定着。プロ入り初のホームランも打ちました。3割15本の本塁打でシーズン終了。ネクストブレイク間違いなし。
全てのピッチャーのデータもこの頭に入っている。
来年は自分の時代がくると確信めいたものを感じていました。

あっそうだーホームラン打った後のパフォーマンス考えなきゃな…
やっぱり地元鳴門海峡にちなんで渦潮ポーズとかやった方が良いかな。意味とか考えちゃダメよ。
やっぱいかにテレビにうまく映るかだから。
野球上手いの当たり前野球を魅せなきゃ。
見せるじゃないよ、魅せなきゃ。
球団側もグッズとか考えやすいでしょ?

あと僕の活躍でCAや女子アナが寄ってくるだろうけれども、軽くあしらいしれっとオリンピック選手と結婚するわ。
最強の遺伝子ほしいっしょごめんけど!
そんなことを野球部の旧友と話してた矢先、事態は急変しました。

年が明けた1月1日、
アメリカNASAは、隕石の衝突で星が消滅してしまった宇宙人たちを地球に移住させると発表しました。
メジャーリーグに倣い、日本のプロ野球界もその星で野球をやっていた宇宙人たちを快く受け入れました。オープン戦が開幕。
地球の100倍の重力で野球をやっていた宇宙人たちのポテンシャルは凄まじく、
球速500/kmを超えるストレート、
300/kmを超えるスローカーブ、もう緩急なんて関係ないす。球見えません。データ取れません。
僕の大学の同期でキャッチャーをやっていた友人はその球を受け止め、死にました。

場外ホームランが飛び交い東京ドームは屋外球場になりました。
宇宙人たちはホームランを打つと一旦爆発し、再生するというパフォーマンスをします。
マジ何の意味があるんすかね。
何が良いだかわかりません。
あこれ、宇宙人の手です。
爆発した瞬間拾って咄嗟に隠したんですよー困るかなと思ってー。
淡々と自己再生してましたねー、ほんとつまんないやつらですよ。

球場でのマナーも悪く、そこら中に人間の子供くらいの大きさの卵を産み落とします。
ガム吐く助っ人外国人の方がまだマシです。
産んだ卵は持ち帰らない。
清掃の行き届いていた日本のスタジアムは腐った卵の匂いで覆われました。

なんか硬式ボールよりも硬い鉱物で野球やってたからか、
軟式ボールでプロ野球やってる感じも鼻につくんすよねー。
ピッチャーと全内野を一人で守る5刀流に挑戦する宇宙人とかいて。そこまでいくともう冷めますよねー。野球じゃねぇし!自分のことしか考えないんすかねー。
しかし実力主義の社会、気づけば僕は戦力外通告を受けていました。

あの、、僕、調子こいてオフシーズンに、、
僕がホームラン打ったら手術を受けてくれって入院中の子供と約束交わしちゃったんです。
でも、僕、初めて宇宙人と対戦した時バッターボックスで全部漏らしちゃって。
上からも下からも垂流しちゃって、それライブ中継で映ってて。
バックスクリーンにも映ってて。
次の日には敵チームのファンにその部分切り取られてTシャツにされるし!『降雨コールド』Tシャツってグッズにされてたし。
合わせる顔ないんで無視してます!
何かその子のお母さんの手紙では、宇宙人の医者が握手しただけで治したみたいです。

野球に医療、その他全ての職業を能力ある宇宙人たちが独占していきました。

「結局何でも宇宙人がやってくれるからいいじゃんー!地球に住ませてやってるんだしー!」

と遊び怠ける地球人たち、、
でも僕はそんなん嫌なんです。
努力した分だけ、自分の力試したいんすよ、
仲間と勝利の喜び分かち合いたいんよ!
描いてた未来と全然違うんですけど!!

僕は『目覚めよ、地球人』をスローガンとする活動団体に入りました。
そして今から、
宇宙人のリーダーが住む建物に、突入します!!

2021年を生きる皆さん、どうかその年に10歳になる僕の父に伝えて下さい。
こんな形でバットを振ることになってしまい申し訳ないと、、
しかし!あなたが愛した球団に入れた喜び、そしてそのユニフォームを!!
宇宙人の血で染めることはできなかったと、、、

♪〜♫〜

(闘魂込めて、六甲おろし等
  お好きな球団の応援歌を熱唱)

♫〜♪


バッチコーーーーーーイ!!!!

(突入。)

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