[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022]5/8 石川直也、3年ぶりに登板 そして最近の松本剛について

 今日の試合に関しては先発・杉浦の投球が全てで、特に言うべきことはありません。杉浦がダメというより山川が凄すぎるという見方もあると思いますが、2本のホームランがいずれも安易にカウントをとりにいった初球の甘い球を逃さず打たれたことを考えれば、やはりあまりに不用意な投球でした。ホームランは防げると言いますが、特に2本目のHRは弁護の余地の全くないものでした。直後に交代になったのは当然だと思います。杉浦は抑えや中継ぎで失格、先発でも3回持たずにKOですから、本当に働き場所がない。今後どういう処遇になるのか知りませんが、このままでは選手生命の危機だという自覚を持ってもらいたいですね。まあ本人が1番わかっていると思いますが……。

 しかし、トミージョン手術明けで3年ぶりの登板になった石川直也が、1回を無失点に抑えたのは明るい材料です。先頭に2ベースを打たれたあと、一気にギアを上げて外崎、山川、中村おかわりを3者連続三振。変化球のキレも直球の伸びも申し分なく、まさにいしちょく復活を思わせる快投でした。今後もっと僅差の厳しい場面ではどうかという課題は残りますが、それさえクリアすれば、堀や北山に繋ぐ7回の1イニングを任せることができるかもしれない(まあ現在のハムのチーム状態では、そもそも勝ちパターン継投を繰り出すような展開にならない、という話もありますが)。今日は最速149キロ止まりだったストレートの球速は今後もっと上がってくるでしょう。本人はまた抑えをやりたいのだと思いますが、まずは1軍に定着し、勝ちパターン中継ぎの座を確かなものにすることです。かつての恩師・吉井コーチと目指したように「ハムのサファテ」を目標にしてほしい。

 さて、野手では今川の攻守にわたるハッスルプレーが目につきましたが、気になったのは松本の調子が明らかに落ちていること。ちろん一時のような四割を超すアベレージをずっと維持するのは不可能だとしても、打球も弱くなっているし、以前だったら内野の頭を超えていたり野手の間を抜けていたのが、正面をつくゴロになったり力のないライナーや凡フライになっている。膝に水がたまるケガの影響もあるでしょう。また同学年の近藤の離脱で負担が彼ひとりにかかり、自分がやらなきゃというプレッシャーがプレーを固くさせてることもあると思います。今日の解説の前田智徳は慎重に言葉を選びながら「エンドランとかバントとか、いろいろサインプレーの負担がかかって調子を狂わせているのかもしれない」という意味のことを言ってましたが、ランナーサードでのエンドランという誰もが疑問に感じた奇策がいずれも松本の打席だったことを考えれば、この指摘もうなづけます。

 そもそも自力優勝が消滅したとき、新庄監督は「全然気にしてない。今は育成が第一」という意味のことを言っていました。つまり「今は未熟な選手を指導・育成することが大事で、勝つことが第一目的ではない」ということです。まだ若く未完成で実績もなく、1軍もレギュラーも保証されてない、その実力もない選手に「結果は問わないから、思いきりやれ」と声を掛けるのは意味のあることだと思いますが、たとえば松本や近藤のような技術のしっかりした中堅選手には違う役割がある、と考えるのが普通です。ただ自分の成績があがればいい、というだけではない。チームのために何ができるか、勝つために自分が何をすべきか。それは野手であれば状況に応じたプレーです。エラーをしないのはもちろん、相手に無駄な進塁を許さない守備、少しでも先の塁を狙う走塁、犠打、進塁打、ケース・バッティング、相手に球数を放らせる、等々。いわゆるチームプレー、チームバッティングができるかどうか。それが個人の記録や勝ち負けを競う個人競技ではなく、チーム競技である野球です。近藤も松本も、そして石井あたりも、そうしたチームプレイがしっかり出来ているし、その意識が高い、ハムでは数少ない選手です。全員が個人プレーに走っているような今年のハム打線の中で、唯一と言っていいチーム全体を考えた、チームが勝つためのプレーを実践しているのが松本らだと言っていいでしょう。でもそうした松本のプレーがちゃんと評価されているかどうか。彼の献身的なプレーが生きるような采配なり戦略なり態勢が組まれているかどうか。私はそれが疑問です。一生懸命チームのために、勝つために頑張っているのに、「勝ちたいなんて思ってない」と平気で口にする監督。そんな思いを台無しにするようなおかしな采配。ランナー三塁でのエンドランなんて無意味なばかりかリスクばかり高いサインを、それも二度までも出されて松本はどう思ったのか。たぶん監督の奇策を正確に、そして忠実に実行できる器用さと技術と忠誠心を併せ持った選手が松本ぐらいしかいないから、無理難題な思いつきサインプレーが松本に集中するわけです。そのくせ空振り三振してエンドラン失敗すると選手のせいにされ、それを理由にしてファームに落とされるような(例:上野)チームなのです。そんなことが続けば、みんなチームプレイなんて知ったことか、とばかりに全球全打席ホームランを狙うような個人プレーに走るようになり、チームがチームとして機能しなくなる。でも松本は真面目なので、そんなことも全部受け止めて悩んでしまう。だからバッティングの調子も崩す……

 もちろん「育成が大事」なのは当然です。口には出さなくても、弱いチームを新たに引き受けた新監督は、1年後2年後に勝つために「まずは戦力を整える」ことを考えるはず。「目先の勝利よりも育成」とは聞こえのいい言葉ですがしかし、勝つことがプロの野球チームの第一目的であることも確かです。過去のどんな名監督も、みな「勝つ」ことと「育てる」ことを両立させながら戦い、実績を残してきた。本来なら相反する「目先の勝利」と「育成」を並行しなければ、常勝軍団は作れない。勝たなくてもいいから育成してくれと球団からお墨付きが出ている(たぶん)新庄監督は恵まれていると言えますが、しかし「勝つ」ことを目的としない戦い(つまり練習試合やオープン戦をずっとやっているようなもの)の中で、本当にいい選手は育つものなんでしょうか。チームの勝ち負け関係なく自分の成績だけ追い求めているような選手ばかり育つことにならないか。もちろん個人事業主であるプロ野球選手は個人の成績を貪欲に求める姿勢も大事ですが、そんな選手ばかり集まっていたらチームは成立しない。

 たとえば野球選手・新庄は派手で華やかな雰囲気と自由気ままなプレーで目立ったし人気も出ましたが、それは阪神時代だったら野村克也、ハム時代だったらヒルマンのような、好き放題にやらせてくれる保護者のような監督がいたからです。もちろんその方が新庄の持ち味が生きると思ったからですが、それと同時に、「勝つためのチームプレイ」をしっかりほかの選手がやっていたから、そうした選手をノムさんやヒルマンが育て、お膳立てしたから、新庄が好き放題にやることができた。ハム時代なら田中賢介や金子誠のような選手が地味で堅実なチームプレイをしっかりやって土台を支えていたから、新庄は気ままな6番打者としてフリースインガーできたわけです。そのことに新庄自身がどれだけ気付いていたかわかりませんが、そうした、いわば恵まれた環境の中で育った新庄は、年をって身体能力が衰え体が思うように動かなくなり、レギュラーも奪われ、不甲斐ないプレーでチームに迷惑をかける、いわば選手としての晩年をきちんと迎える前にさっさと引退してしまい、その後はずっと野球から離れていた。つまり現役バリバリ当時の甘やかされた感覚のままいきなり監督になってしまった。だから自分が現役選手の時の感覚で今の若い選手を判断してしまい、「自分がそうやってきたんだから、みんなもそうしろ=なぜオレが簡単にできたことができないの?」という感覚になってしまう。新庄監督は現役時代の新庄剛志のような選手を育てたいと思っているのでしょうが、誰もが新庄になれるわけではないし、その必要もない。昔の賢介や金子のような選手が、今なら松本や近藤や石井のような選手がチームの土台を支え、チームの骨格を作る。その上で新庄のような、今なら万波のような選手が好き放題にやって思いもかけぬ意外性のプレーをやるから、チームは強くなるわけです。でも今の新庄監督は、その土台を作らぬまま、あるいはその土台を形作る選手のことを軽視したまま、「育成」に走っているように思える。なにより、ここまで無策・無抵抗に負け続けると、選手が負け慣れてしまい、負けることが悔しくなくなってしまうんじゃないか。勝つことを目指してこそ、負けた悔しさもわかるわけで。2016年日本一当時の1軍レギュラー選手が中島と近藤ぐらいしか残っていない今、もう既にそうなっているのかもしれませんが……

 投手陣の扱いについても言いたいことは山ほどありますが、長くなったのでこれぐらいにします。せめて派手にHRを連発する選手だけでなく、地味にチームプレイを頑張った選手が報われるようなチームであって欲しいと思います。



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