[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022]5/10 「新庄流査定」導入の衝撃

日本ハム新庄剛志監督(50)が、選手の年俸を左右する査定部門にBIGBOSS流を注入する。「俺の査定が1番だと思う」と自信を持って打ち出したのは、現段階で「先発」「走塁」「進塁打」でチームの戦略に見合った基準を設けること。開幕前に査定担当者と話をするなど、改革に向けて動きだしている。

◆進塁打 「いらない。いらない。進塁打したら…オレは好きじゃない。ガツンと塁をためていくほうが好き」とマイナス評価を下す方向だ。

 BIG BOSSがまたまた凄いことを言い出しました。進塁打は「好きじゃないからいらない」ので、これまでのようにプラス査定にはしない、それどころか「マイナス評価」をつけるというのです。これは言うなればチームバッティングの全否定、チームプレイの全否定です。つまり、ハム野球の質ががらりと変わるというだけでなく、個人競技ではなくチーム競技である野球のあり方を根本から変えるものと言えます。

 ランナーを置いたチャンスの場面で打席が回ってきたら、自分が主役になるつもりで、自分で決めてやるというつもりでプレイしてほしい、ということのようです。進塁打でランナーを進めるとか、四球を選んで後ろに繋げるとか、これまでの野球では当然と思われてきた「フォア・ザ・チーム」の姿勢などいらない、ということですね。進塁打を否定するのであれば、当然バントもいらない。今後ハムの試合でバントを使うようなら、「言ってることとやってることが違う」と批判の対象になりそう。ランナーを先の塁に進めるための策であるヒットエンドランも必要ないですね。もちろん四球もいらないし、当然ボールとストライクを見極める選球眼も必要ない。ストラクゾーン付近に来た球は状況考えず強振して、チャンスで強攻して併殺になってもオッケー、チャンスが潰れてもオッケー、それよりは思いきりバットを振ってこいと。「ノーヒットで点をとる野球を目指す」と新庄監督は自慢げに言ってましたが、進塁打もバントもなくて、どうやってノーヒットで点をとるんでしょうか。

 もちろんチャンスでも消極的になってしまう打者に対して、結果は問わないから思いきりやれと言いたくなる気持ちはわかります。決めるべき場面で初めから進塁打狙いみたいな消極的なプレイは良くないし、受け身の姿勢が問題視される清宮あたりにそう指導するのは理解できますが、チームの年俸査定で「進塁打を打つとマイナス」なんて項目を導入するのはすごすぎます。第一、「決めようとして打ちにいったけど結果的に進塁打になった」場合と「最初から進塁打しか狙ってなかった」場合の判別がつくんですかね? しょせんは見る側の主観にしかすぎないし、そんな曖昧なものを査定の基準にするんでしょうか? それに清宮だろうが上野だろうが万波だろうが中島だろうが同じ基準で評価するのもどうかと。そんなことになったら、誰もチームのためにプレーしようなんて思わなくなるし、中島や上野みたいな選手までHR狙いで振り回すことになる。昨日の記事で松本について私はこう書きました。

全員が個人プレーに走っているような今年のハム打線の中で、唯一と言っていいチーム全体を考えた、チームが勝つためのプレーを実践しているのが松本らだと言っていいでしょう。でもそうした松本のプレーがちゃんと評価されているかどうか。彼の献身的なプレーが生きるような采配なり戦略なり態勢が組まれているかどうか。私はそれが疑問です。

 まさか記事を書いた翌日に、この心配というか懸念が当たっていることを監督自ら堂々と明かすとは思いませんでした。そりゃチャンスで必ず打ってランナーを還し年俸をガンガン上げていたという新庄剛志みたいな偉大な選手ばかりなら進塁打もバントも必要ないですが、そのチャンスをお膳立てした和田豊や久慈照嘉や金子誠や森本稀哲や田中賢介のような選手がいたことを新庄はすっかり忘れているみたいですね。チーム出塁率もチーム得点圏打率も12球団ワーストのハムが、進塁打もバントもなしで点をとろうと思えば、そりゃ全球全打席ホームランを狙うしかない。そういう意味では新庄監督の言うことは、筋が通っている。でもそれじゃいくらHR数が増えても得点は増えない。たまたま相手投手がヘボだったり調子悪かったりすればHRをバンバン打って大勝するが、ちょっと良い投手が良い投球をすると、チームとして攻略するという意識も戦い方もしていないから、あっさりひねられて負ける。ハムは現在そういうチームになっていますが、日替わり打順や進塁打マイナス査定の導入で、ますますそうした傾向は進みそうです。

 まさかこの記事で書かれているような査定をハムフロントが本当に導入するとは思えないですが、もしそんなことになったら、もうチーム競技としての野球とは違うスポーツになっていくんでしょうね。その結果チームが最下位独走することになっても「今は育成中で、勝負は二の次」と言われる。それも好き嫌いかもしれませんが、私は御免被りたいですね。

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