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漫画と映画

僕は漫画大好きな子でした。
床が抜けるわ!と怒られるほど漫画単行本を持っていた。
今はすっかり落ち着いているのだけれども。
きっかけは中学生の時の友達のお父さんが手塚治虫先生のファンで、火の鳥から始まって全集を借りて読み漁って所からだと思います。
だもんで、わりと古いマンガも好きで、石ノ森章太郎先生とか松本零士先生とかの漫画も読みつくしたし、シリアスだけじゃなくてマカロニほうれん荘とか、がきデカとかもう連載終了している作品にまで手を出していたという感じでありました。

手塚治虫先生の火の鳥黎明編の最初の方とか見るとすごいんですけれども。
ものすごく映画を参考にされているのです。お祭り?儀式?火を囲んで踊るシーンはまさに映像そのものです。
アングル、カット割り、光の使い方、モーションに至るまで。
実際、最近の漫画家さんでも映画を参考にしている人は非常に多くて、相通じるものがたくさんあるのだなぁと思います。
原作者と映像化の問題が今、大きくなっていっているけれど、もともとはすごく良い関係性でお互いに刺激を与えあっていた部分もあったのだと思います。

ただ昔とはすごく状況が変わったんだなぁって。
だってさ、漫画って雑誌連載以外に発表の場がなかったわけです。
そもそも編集さんに選ばれないと漫画家になれない。
頭を下げて読んでもらってアドバイスをもらってを繰り返して、ようやく漫画連載の道が生まれるという世界だったわけです。
だから、とりあえずまずは、なんていう形で原作がある作品の漫画化の作画をまだ人気の出ていない漫画家さんがやっていることなんかよくあることでした。
普通に雑誌連載されるような原作有の漫画はまだ良いですけれども。
それこそ少年科学雑誌のロケットとかの紹介マンガや、日本の歴史を漫画でとか。
ペンネームを変えてまで平凡パンチとかでエロマンガ書いたり、麻雀漫画なんかもあって、今は有名な漫画家さんでも麻雀漫画出身なんて方が結構いたりするわけです。
そうやって、なんとかまず食えること、デビューすることを目指していた。

それがデジタル化で一気に変わったわけです。
オリジナルの作品をネットに自分でアップロードできるようになった。
サブスクの漫画サイトなんかも増えて、雑誌連載しなくても単行本化やアニメ化される作品までどんどん生まれてきている。
それに実際の作画もデジタル化されて、例えば筆で塗りつぶしていたベタと呼ばれる真っ黒な部分は、ワンクリックで塗りつぶせるようになった。アシスタントさんや編集さんとチームでやっていた漫画連載が結果的にワンオペで漫画を描いて、デジタルで描いてデジタル空間で週刊掲載出来ちゃうような環境になった。
それってもう革命的なことなんだろうなぁって思います。

その上、映像業界は極端にオリジナル作品が減っている。一定数の数字がとれないと予算がおりないし、スポンサーもつきにくい。
当然だけれど、今もチームじゃないと中々映画やドラマの製作は難しい。
旧来の体制のまま、原作ありきという状況に追い込まれている。
チームでやっているとさ、じゃあこの作品は誰のものか?って段々と曖昧になっていく。監督のモノなのか、主演俳優のモノなのか、プロデューサーのモノなのか、脚本家のモノなのか。だって撮影とかさ、照明とかさ、とにかくどの1ピースが欠けたとしてもその作品にはならないわけで。そうなるとやっぱり全員の作品なんだっていう意識になっていく。

漫画家さんもかつてのチーム時代はそういう雰囲気があって。
編集さんが物語を考える会議で、資料から何から全部調べて、大きく関与しているなんてことはよくあることで、浦沢直樹先生なんかはあえて編集担当にもきちんと配分されるように原作表記をしたりしたわけです。
アシスタントさんがたくさんいないと週刊連載なんてとても出来ないし、物語の進行だって編集さんがいないととても難しかった。
でももうそういう時代ではなくなっているのだろうなぁって。

漫画は作家性という意味ではより小説に近づいたのかもしれないって。

漫画家さんが自死を選んでから、ようやくテレビ局が調査を発表してさ。
これで出版社の声明に続いての企業側の対応が出揃った感じがある。
もう原作ありの小説とか映画の漫画化の作画を経験した漫画家さんなんてどんどん少なくなっていて、状況が変化している中で映像業界や出版社が何を見誤っているのかまで調査されると良いなぁと思う。
漫画と映画は通じる部分が非常に多いから、それこそアングルとかまで拘っていれば、実写映像化はこれまでとは違った契約というか、或いは打ち合わせの頻度とかが必要になっていくだろうなぁって思う。
願わくは自死が起きる前にその変化に気付くべきだったけれどさ。

ただ多くのメディアが「最悪の結末」と報じたわけだけれど。
結末なんかじゃないんだという方向に進むといいなぁと思います。
漫画家さん自身が楽しみになるような映像化だったらいいものね。
それと同じぐらいオリジナル作品の映像の方が今の時代は配信などもあるんだから実は大きな未来に繋がっているんだというヴィジョンを持てると良いなぁとか思います。多くの脚本家さんが縛りなくオリジナルの作品を発表できる方がきっと健全だと思うのだよなぁ。

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