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BtoBtoBビジネス/マーケティングに特許情報を活用するお話 -化学メーカー視点のB2B2B-

以下の自己紹介記事でも少々触れました、化学メーカー勤務時代に経験した「特許情報を活用したマーケティング支援」について少し掘り下げて紹介していきます。

ここでは、B to B to B(B2B2B)といった、化学メーカー(素材メーカー)が属する様なビジネス形態を想定しています。例えば以下に示す、直接の顧客が部品メーカー(以下、直接顧客)、顧客の顧客が最終製品メーカー(以下、最終顧客)である場合です。

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勿論、その他のビジネスに関わる方々にとっても何らかの参考になれば幸いです。ただ、直接消費者に対して商品・サービスを提供する B to C ビジネスとは少々離れたお話です。

また、クールなパテントマップを作成して事業戦略や新規事業立ち上げについて経営層に提言する・・・といった華やかな話ではないです。

そして、特許権を活用して参入障壁を構築し、ビジネスを成功に導く素敵な知財戦略を・・・といった高尚な話でもないです。

知財部門の担当者として事業部門/営業部門へ擦り寄り、特許情報を活用して社内の身近なところから新たな価値創出を図る取り組みのお話です。

よろしくお願いいたします。

1.特許情報は「マカロン」である

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特許情報はマカロンです。

「普段あまり馴染みが無く生活に浸透していないが、食べてみたら(使ってみたら)意外と美味しい(役立つ)」という意味です。

特許は出願から公開されるまで、1年半かかる場合が大半です。(早期審査が行われた案件等、もっと早く公開される場合もあります)

それ故に、「そんな遅い情報、役に立たんでしょ」というご意見もあるかと思います。しかし、例えば顧客との面談時に面談相手の出願情報を知っておけば、今相手は何に取り組んでいるか?何に関心があるのか?などを推測した上で対話することが可能です。好意を寄せる女性がマカロン好きであれば、事前にマカロンのことを調べてからデートに臨むのと一緒です。特許情報は、相手の素性を事前に知るための1つの公開情報です。

そしてすべての女性がマカロン好きというわけではないのと一緒で、特許情報を調べたら確実にビジネスに活かせるというわけではありません。「まぁ参考程度に・・でも、非常に有効に活用できる場合もある!何も調べないのは損!」くらいの認識がよいのではないかと思います。

なお、「特許情報は1年半遅れの情報である」は必ずしも正しくありません。その点は「7」にて後述します。

2.想定する最終製品:AR/MR デバイス

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ここでは AR/MR デバイスに使用される素材に関するビジネスを想定します。「ポストスマホ」として期待されている AR/MR デバイスを開発すべく&その製品に素材が採用されるべく、様々な会社がしのぎを削っている分野です。(AR:拡張現実 MR:複合現実)

本記事において技術的な深堀りはしませんが、AR/MR デバイスにおける部品例として導光板を取り上げました。導光板は映像を眼前に表示するという機能面だけでなく「軽量化」という課題もあり、両者を成り立たせるための素材開発が求められています。

なお、AR/MR デバイス関連のビジネスに関して他にも階層があるかもしれませんが、説明の簡略化のため3階層としています。

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