『ごきげんになる技術』 読書感想文
自己啓発本の類はあまり読まないのだが、「尊敬してる方の考え方や経験談を知りたい」という理由で手に取ることは偶にあり、今回もそれに当たる。
佐久間さんの著作なので当たり前っちゃ当たり前なのだが、本の内容は「メンタルの整え方」を謳うコラム記事の皮を被った「ずるい仕事術」の続編だった。
読んでいて嬉しかったのは、社会人として少しずつ経験を積み始めたことで、実感を持って理解できることや、同じように言語化していたことが前作より増えていたこと。
そして、前作は丁度社会人になったタイミングで発売され、今作は丁度転職をしたタイミングで出版されたため、個人的な思い入れも勝手に乗っけながら読んでしまった。
印象に残った文章を、幾つか引用させていただきながら感想を書きたい。
①ネガティブを飼い慣らそう
これは本当にそうだと思った。
誰かに傷つけられた経験に執心している人は、被害者意識だけが先行しすぎて誰かを傷つけていることに無自覚なことが多い気がする。誰かに取られたマウントを、誰かにマウントを取り返すことで清算しているくせに、「同じことしてるじゃん」という指摘に対しては、被害者の側面だけしか持ち出さないというタイプ。
とはいえ、自分も人に対して優劣を感じやすい気質であるため、自戒として心に深く刺しておかなければならない言葉だなと思った。
②積極的ネガティブな仕事術
これらは、転職したからこそ思うところがあった。
前職時代、私は仕事が肌に合わなすぎて、入社以来毎日「仕事辞めたい」と思っていた。
ただ、辞める踏ん切りは中々つかなかった。
何故なら、どうせ辞めたところで同じことを繰り返すから。
自分に全く自信がないため、第二新卒として面接を受けたところで上手くアピールなんてできないだろうし、現職で身につけた社会に通用する経験値など何もない。
となると、今勢いで転職したところで、結局同じような会社に入り、また「辞めたい」と思うに決まってる。
このように悲観するたび、二の足を踏んでしまうのだ。
だから、私は自分に説得力を付けるため、士業資格を取得した。
結果、その資格を活かした仕事に転職することができたため、今の仕事には現状かなり満足している。
環境を変える際、きっかけは現状への不満でもいいと思う。だが、自分の身の程もちゃんと弁えた上で、感情・理性の両輪からGOサインが出てから動かないと意味がない。
本を読みながら、自分の経験から立てた理論と近しいニュアンスを感じれたことが嬉しかった。
また、前職で身につけた電話応対や報連相、仕事のスケジュールの立て方にExcel関数など、社会人の基本中の基本は今の仕事でめちゃくちゃ役に立っている。
雰囲気的に、法律の専門的な質問には答えてくれるが、Excelの使い方なんていちいち質問してられない感じがあるからだ。
だから、今になって前職を経た意味を大いに感じている。
この資格でいずれ独立を考える時が来るかもしれない。
だが、取り敢えず数年は愚直に働き、この職場で吸収できることをし尽くしてから考えようと、改めて思った。
③ネガティブ沼からの守り方
この章は、引用というより、佐久間さんのファンとして、奥さんとの馴れ初めや家族とのエピソードを知ることができたので、純粋に嬉しかった。
ラジオを毎週聴いている身として、佐久間家の仲の良さと丁度いい距離感は、家族関係の理想だと思っている。
私は、今でも親とあまり上手に会話ができず、趣味や交友関係を全く共有できていないことに、少なからず引け目を感じている。
だが、結婚のことなどを考えると、そうも言ってられないなと思い直し、最近少しずつだが歩み寄る努力を始めたところである。
だからこそ、ラジオを聴くたび、娘と映画を見に行ったり、瓶の蓋を開けるの頼まれたり、そういうフラットで友達みたいな関係性を築けていることが純粋に羨ましいのだ。
ぼんやりとした「家族」という概念に対する羨望の輪郭がはっきりしだしたのは、佐久間さんのラジオが原因の一つである気がする。
この本を読んでいても、子の目線でも親の目線でも、いいなぁと思った。
佐久間さんの娘さんみたいに、親を喜ばせられる歩み寄り方ができたらなぁ、と思う。
そして、自分が親になった時のことを想像して、佐久間家みたいに子供とフラットな関係を築けたらいいなぁ、とも思う。
そのために今できることは、きっと親との関係性を大事にしていくことなんだろうな、と改めて自戒した。
大きく距離を近づけるのは難しいが、少しずつなら。
④親友たちが語る「佐久間宣行」
佐久間さんが良い人で慕われているということが、これでもかというほど伝わってきた。
また、共有している思い出の濃さも半端なくて、純粋に学生時代の彩りの豊かさに対する羨ましさを感じた。
そして、友達が語る「佐久間宣行像」が余りにも「良い奴」過ぎるため、「良い奴」である自信のない自分は、「自分がこういう企画をするってなった時、前のめりで参加してくれる友達は居るのだろうか?」という、全く必要のない不安に駆られたりした。
改めて、こういう企画があった時に出て欲しいと思える人が友達なんだろうなと思う。
エゴかもしれないけど、そう思っている人とは、これからもずっと関係性を維持したい。
だから、人との縁をより一層大切にしなくてはなと思った。
⑤読後感
これはメンタルの整え方を知る本というよりは、前作のビジネス書の続きという読み物だった。
ただ、心理的な話に終始するよりもよっぽど説得力があったし、買う層も佐久間さんに求めていることは後者だろうから、そういう意味で非常にいい文章でした。
佐久間さんが次に本を出すとしたらどんなジャンルなのかなぁ…とか考えながら、この本はきっとふとした時に読み返すような本になるだろうなぁと思った。