見出し画像

【イベレポ】すごいベンチャー100経営者が語る資金調達の秘話 & 田所雅之が語る資金調達後のグロース戦略

今回は、株式会社ユニコーンファーム 代表取締役の田所雅之氏をゲストに迎え、資金調達に至るまでの裏側をお伝えし、さらに調達後の戦略について当社代表の平野と田所氏によるトークセッションを開催。

株式会社オンリーストーリーは、週刊東洋経済「すごいベンチャー100」に選出されるなど今期はさまざまな注目の機会をいただきました。そうした背景のひとつに「資金調達実績」があります。

2020年6月に約3.5億円、2021年4月に約13億円の資金調達に成功し、多くの皆様からご支援をいただくことができました。

多くの方の資金調達の課題解決につながるオンラインイベントの様子をレポートします。

登壇者

画像1

田所 雅之
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役

これまで日本と米国シリコンバレーで合計5社を起業してきたシリアルアントレプレナー。シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。現在は、国内外のスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、大企業の新規事業アバイザーも務める。世界で累計5万シェアされたスライド”Startup Science” の著者である。

著書
『起業の科学』(日経BP社)
『起業大全』(ダイヤモンド社)
『ストーリーでわかる「起業の科学」』(朝日新聞出版)
など

株式会社ユニコーンファーム HP
https://unicornfarm.jp/


画像2

平野 哲也
株式会社オンリーストーリー 代表取締役

1990年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。父も叔父も近所も経営者という環境で生まれ育った。2014年2月株式会社オンリーストーリー設立。国内最大規模の決裁者マッチングプラットフォーム「ONLYSTORY/チラCEO」を運営。3年連続でベストベンチャー100に選出、2021年働きがいのある会社ランキング5位に選出などの実績がある。2020年6月に約3.5億円、2021年4月に約13億円の調達を実施した。

株式会社オンリーストーリー HP
https://onlystory.co.jp/


オンリーストーリーが資金調達時に実践してよかったこと

平野(以下、敬称略):
本日は、皆様に事前に伺った資金調達についての聞きたい話を元にお答えしていきます。

画像3

まずは、「本当につくってよかった」と思う2つのスライドの話をします。
1つは「Why youスライド」。相手の会社と当社の相性が良い理由を書いたスライドを会社ごとに作成していました。細かい工夫で言うと、最初に相手方から聞いた話を(手元で操作しながら)オンタイムで反映させることもしていました。

画像4

こうした工夫があったことで、自社の行動力や相手との相性の良さが具体的に伝わりやすくなったと思っています。相手側のことを思えば投資を決めた説明責任が伴うはずなので、説明に活用できる要素も埋められればと考えていました。

もうひとつは、自分たちもまた投資家を選ぶ・向き合うという視点が大切だと考え、「投資家条件スライド」を作成しました。

画像5

お互いにとって「どんな投資が良い投資か」と言語化することで、対等な立場で意思疎通ができました。いくつかあるなかでも、「スピード重視である弊社を評価してもらえるところと組みたい」という点は真剣に伝えることを意識しましたね。さらに、「自分たちの理念は『つよいい会社』。強くて良い投資家と組みたい」と理念も大事に伝えました。

自分たちが投資家に求めることを率直に伝えたことで、相手側でも期待値の調整につながったと思います。この2つのスライドは、つくってよかったと思っています。

平野:
次に、「そもそも調達すべきか」という話で、経営者属性と事業属性の話をしていきます。

画像6

オンリーストーリーは、6年間、自己資金による経営をしてきたため、資金調達のスイッチが入るまでには時間をかけて考える機会を設けました。最終的に調達実施を決意したのは、「日本一強くて良い会社を作りたい」という理念を実現させたかったから、です。調達を実施することで理念を実現するための速度をあげるエンジンとなると考えました。

もちろん、資金調達を受ければプレッシャーも増えます。投資回収の義務が生じたり、利害関係者が増えて意見をより多くの方々から言われたりする機会が増えるでしょう。そういった点を考慮する必要はあると思います。

平野:
続いて話すのは、「調達資金の使い方の罠」について話していきます。

画像7

当社は一度、3.5億円を資金調達しましたが、ランウェイ期間がある中で、現在の赤字と預金残高から計算して、「会社の経営はあと何ヶ月もつのか」「コストカットしやすい項目とそうでない項目を読む」ということが大切だと感じました。

例えば、12ヶ月のランウェイ期間で預金残高が1億円で毎月の赤字が1000万円だとします。余裕があるからと、もう少し増額して月に1500万円使うと6ヶ月しかもちません。ランウェイ期間は、前月比で減り率が大事です。

こうした話題の中で当社が取り組んでよかったと思うのは、「何をバスに乗せないか」を具体的に考え、真剣に組織や採用と向き合ったことです。1ヵ月間一緒に働いて会社の実態を知ってもらった後に本採用する方針をとることで、約8年間で退職したのは5、6人程。

調達後の資金の使い方として、事業成長と組織文化をつくることを両立させることにこだわりました。


投資家探しの方法と「ビー玉センターピン理論」

平野:
最初の資金調達ラウンドは、ベンチャー稲門会(早稲田大学出身のベンチャー企業経営者の会)のつながりから進みました。もうひとつは、泥臭く投資家にプレゼンをしに行くことで進んでいきました。

プレゼン後にフィードバックをもらい、修正したスライドを改めて相手に送ることを繰り返しました。資金調達は達成できたかどうかに焦点がいきがちですが、自分たちの成長にも焦点を当てて取り組んだこともよかったですね。

2回目のラウンドは1回目とは異なる難しさがありましたが、複数の投資家、VCの方々を調べ、ミーティングを重ねてアプローチしていきました。

そうしたことを重ねるうちに、クロステックさん、エン・ジャパンさんをはじめとした多くの方々とのご縁をいただきました。

この時のことを振り返って話す時、「ビー玉センターピン理論」を持ち出してお話することが多いです。

画像8

平野:
まず、センターピンが倒れたら後ろのピンも倒れる、という解釈で「センターピン理論」という言葉をよく使います。今回であれば、資金調達の達成をセンターピンとして決めました。ボーリングであれば、ピンを倒すためにボールを投げます。一方で、資金調達というピンを倒すためにベンチャー企業が実施できる施策や手立てはボールほどのサイズもない…いわばビー玉程度だと思うのです。

一見すると「ビー玉ではピンを倒せないじゃないか」と思う方もいるかもしれませんが、一つひとつはビー玉サイズのボールでもたくさん投げることでピンを倒せる瞬間がきます。その過程は100回連投してようやく成功確率を1%上げることができる世界かもしれませんが、そこをやり切る気概で取り組みました。

その結果、資金調達前半はどこにも相手にされませんでしたが、後半戦には耳を傾けてくださる人と出会うことができました。

画像9

ビー玉をたくさん投げ、PDCAを回してブラッシュアップしていったのがよかったと思っています。

(参考:量か質か論争。ビー玉センターピン理論)



資金調達は、総力戦

平野:
最後に、当社取締役とのエピソードを少しお話します。

画像10

本日ゲストで来ていただいている田所さんもそうですが、外部のいろんな方に相談やアドバイスをいただいてきました。その上で、当社COOの川角には僕自身のメンタルが弱っていたときに本当に救われました。ここだけの話ですが、オンラインで画面越しにaikoの「ボーイフレンド」をカラオケで聞いてもらったりもしました(笑)。

画像11

また、1回目と2回目のラウンドの間の時期には財務責任者の小澤がジョインしてくれて、投資家の質問に対して書面に落とし込むのが苦手な私を助けてくれました。さらに、執行役員の吉田は資金調達の間も既存事業を伸ばす取り組みを推進してくれました。

これらを踏まえて振り返ると、資金調達というのは必ずしもうまくいく保証はない中で半年以上の長期戦を戦い続け、一方で既存事業も伸ばし続ける必要がある競技でした。1人では絶対に実現はできず、本当に総力戦だと思いますね。

画像12


田所(以下、敬称略):
平野さんが資金調達を行ったラウンドAからCですが、2020年から今年が1番難しいといわれていました。


私は2014年から2017年までVCをしていましたが、見るべきポイントは「成長の確度と覚悟を持ってやっているか」ということです。

VCは定点観測で投資を行います。例えば、一度資金調達をして5年で上場を目指すなら、「本当に実現しうる成長スピードがあるのか」を見ています。また、強みと弱みを知ったうえで、パーソナリティー的に経営者本人とは逆属性の人物であっても巻き込んでいけるかという視点も大事です。

グロース戦略の極意

田所:
グロースを目指すにあたっては資金調達以上に「資金用途」が大事であり、資金調達のタイミングは「お金が本当に引き金になるのか」を見極める必要があります。そのために、どこにレバレッジをかけるか戦略を見立てることがまた大事だと思います。

画像13

具体的な事例をご紹介します。

ある企業の2020年の2月MRR(月次経常利益)は、100万円です。(商品単価1万円×有料会員数100人=100万円)商品の粗利は80%、解約率は20%、顧客を20人獲得するために30万円かけているので、1人獲得するのにかかる費用は15,000円。ユニットエコノミクスは、2.67倍です。

このスタートアップの事例を見ると、顧客獲得のための仕組みができていることはわかる。ただ、解約率を下げるためにカスタマーサクセスを取り入れたり、開発リソースの不足を補うためにエンジニア採用しようとしたりしています。示された数字の中でどこがボトルネックかを明らかにして、結果としてどんな人材が必要か、がわかってきます。

資金調達を考えている多くのスタートアップにはこうしたことまで考えていただきたいところです。

田所:
ここまでお話しているとわかると思いますが、投資家は数字で話がしたいのです。もっと言うと、投資したお金がどのように生きていくのかを知りたいのです。資金調達を考えるならば、初期のスタートアップにおいても成長のダイジェストを示すこと、「ヒト・モノ・カネ・プロセス・戦略」までブレイクダウンして解像度を上げておいてください。

「どこに資金を投入したら増えていくのか」と頭がはちきれるぐらい考えると、資金調達の成功は近づくんじゃないかなと思います。

画像14

田所:
私からみてオンリーストーリーが面白いのは、そもそも持っている顧客情報が決裁者以上のもので、いきなり決裁者に話ができるという営業プロセス。これは、これまでにないものになっています。

人の集め方という点でも、メディアを立ち上げて決裁者を集め、決裁者同士のマッチングをさせています。潜在市場の見立てとして非常に面白いところがあると思います。


対談:自社の強み弱みを理解したうえで、翻訳力・判断力を発揮せよ

田所:
資金調達は、「何千万円もの形のないものを買ってください」と提案するセールスプロセス。調達がうまくいく人たちには、そこに翻訳力がある。相手にわかる言語に変えて適応していくことが大事です。

画像15

平野:
適応させていくことは、自社や経営者自身の成長にもつながる話ですよね。私自身の例で言うと、全社員から匿名でひたすらフィードバックをもらい、自分の長所や短所を浮き彫りにしました。「承認欲求が強い」とか「寂しがり屋」とか、評価されたい自分に非合理的で成長を示す自分に合理的だなと思っている部分とか。自身で理解をした上で、社員や株主にまで開示しています。


田所:
どうしてもお互いの強みだけで話すと表面的になりがちになるので、社長が弱さを見せるのは心理的安全性の担保に繋がると思います。組織に属する意味を社員メンバーに与えることは、経営者の役割のひとつ。弱みを受け止め、強みを伸長させようと社長自ら率先してやるのは素晴らしい取り組みですね。

あとは、資金調達に際しては、自社のビジネスモデルのタイプを理解しておくことが大事だと思います。例えば、オンリーストーリーのモデルは、顧客である決裁者が増えるにつれてさらに決裁者が増える仕組み。さらに発注者、受注者を掛け合わせていくモデル。いわゆる「ウィナーテイクスホールド型」といわれるものです。そうした特性が理解できると、とるべき適切な戦略も見えてくると思います。

平野:
そうですね。一方で、自分たちがどうありたいかを示すために「言語化・定義化・可視化」する重要性も感じました。私は、アントレプレナービジネスフィットっていうのが大事だと思っています。アントレプレナーとビジネス構造がどれだけフィットしているか、ということです。私なら一つひとつしっかり仕組みを改善していくところが強みのアントレプレナーだと思っています。そことビジネスがフィットしていないと成長しにくくなるのかもしれないなと思います。

田所:
アントレプレナービジネスフィットは、やってみなければわからないところもあるんですよね。BtoBも、BtoCも両方試してみたり、地道にひとつずつ積み上げていったりすることが大事。強いところも弱いところも含めて、自分たちの土台を言語化していきましょう。


最後に

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

今回は、株式会社ユニコーンファーム 代表取締役の田所雅之氏をゲストに迎えトークセッションイベントのレポートを書かせていただきました。

資金調達を行う際、検討なさる際に参考としてご活用ください。


過去記事



この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?