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ビデオOFFのオンライン会議の弊害を科学的に調べてみました

こんにちは。オンラインコミュニケーション協会です。

レポートを発表しました

オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響を検証
― ビデオOFF会議では合意まで時間がかかり、意思決定の質も低下する ―

2022年6月にOCAと、武蔵野大学武蔵野大学 経営学部 経営学科の宍戸拓人准教授と、共同実験を行いました。

<実験概要>
男女 14 グループ(46 人)を対象に、オンラインコミュニケーションツール上で、「ビデオON」「ビデオOFF」の2パターンに分け、対話によって回答を導くコンセンサスゲーム(例:宇宙船が壊れて月面に取り残された際に、どのようなアイテムを選んで生き残るか考える)に取り組んでもらう。

サマリー

とっても長いレポートなので、まずはここだけ目を通してください!


「なんとなくコミュニケーションが取りにくい気がするけど、こっちのほうらラクだし…」ということで、カメラOFF会議を続けている組織が多いと思います。
でも実は、ラクさと引き換えにいろんなものを失っていたということが分かりました。

多様性から生み出されるアイデアが失われる

「ビデオOFF」では、メンバーの多様性(年齢、性別)を原因とする意見対立を避けるようになり、合意まで時間がかかる結果、意思決定の質が悪化するという結論が得られました。

イノベーションは、異なる価値観、多様性から生まれることがほとんどです。
「弊社は多様な人材でメンバー構成をしています!」と言っているにも関わらず、そのチームがビデオOFFで会議をしていたら、その多様性が活かせなくなるのです。

建設的な議論の機会が失われる

「ビデオOFF」の場合、年齢が多様なほど、意見対立を回避する程度が高まる傾向にあったのに対して、ビデオONの場合、年齢が多様なほど、対立を回避しない傾向が強まることが分かりました。

要は、部長、課長、係長、主任、若手社員…とバラバラな年齢のメンバーが集まることの多い「部内ミーティング」をOFFでビデオ行うと、どんな議題でも、たとえ正しい結論でなくても、意見対立を避ける傾向が強いので「部長の意見に賛成です~」「課長の言う通りでいいと思います~」となってしまう可能性が高くなります。

時間が失われる

ビデオOFFの場合、グループに性別の異なる人が加わるほど、合意にかかる時間が長くなる傾向がありました。

要は「会議時間が長くなる」ということです。


実験に協力していただいた方からは「ビデオOFFだったので気楽に話せました」という声もちらほらありました。

そうなんです。ビデオOFFってラクなんです。
私も同感です。

でも、あなたはラクかもしれないけど、仕事や、会議の本来の目的ってなんでしたっけ?

ビデオOFF会議は本来、会議で達成すべき以下のような点が失われてしまうということが、この実験で明らかになりました。
・「建設的な議論」を行い、適切な合意形成をはかる
・アイデア、イノベーションを生み出す

仕事上でこれらができないとなると、果たしてそれって仕事って言えるのでしょうか…?

実験結果から思ったこと

モヤモヤの答えがやっと分かった

テレビ会議を行うビジネスパーソンが感じていた
「オンライン会議は時間がかかる」
「オンラインでのミーティングは話がぎくしゃくする」「ビデオOFFは何となく良くない気がするけど・・・」
といったことが、正しい感覚であったと、本研究を通じて証明できたのではないかと思います。

人間のコミュニケーションにおいては、言語以外の情報(表情や仕草、ハンドサインといった非言語情報)が重要であることは、古くから様々な研究によって明らかにされています。

オンラインコミュニケーションツールは、離れた場所にいても相手の表情、仕草を見ながら対話ができるという意味で革新的なテクノロジーです。

それにも関わらず、ビデオをOFFにして対話をするという事は、テクノロジーの恩恵を無視して、電話で対話をしているのと変わりません(正確には資料の画面共有の機能等があるので、電話よりは高度なコミュニケーションがとれますが)
電話で相手と正確なコミュニケーションを取るのが難しいと感じたことがある方は多いと思います。

ビデオOFF会議の弊害

ビデオOFFで会議やミーティングをするということは、フルフェイスヘルメットを被って会議をしているのと同じ状況とも言えます。

もし、対話している相手がフルフェイスヘルメットを被っていたら、あなたはどう感じますか?多くの方が、相手の表情が読めないことで生じる恐怖心や不安感をいだくと思います。
同じような状況が、日常の会議やミーティングの場面で起こっていると思うと、コミュニケーション上のネガティブな影響が小さくないとお気づきいただけるのではないでしょうか。

一方通行の情報共有だけの会議やミーティングなら、そこまで影響はありませんが、今回の研究結果が示す通り、アイデアを出す、合意形成を図る、意思決定をする、といった場面ではより影響が大きくなります。

誤解を恐れずに極端な言い方をすれば、『ビデオOFFで会議をすることが当たり前の組織は、多様性がもたらすメリットを受けず、波風立てず、ほぼ決まった結論について、話し合っているフリをしていることが常態化している』ということです。
このような組織が今後、激動のビジネス環境の中で成長していくことは難しいでしょう。

OCAの思い1

OCAは実際のビジネスの現場では、現状ビデオOFFが主流であることも理解をしています。
こちらの調査結果をご覧いただいているみなさんの中にも、ビデオOFF派の人がいらっしゃっても否定はしませんし、何が何でもビデオをONにすべきだと、主張したいわけではありません。

余談ですが日本国内において、ビデオOFFが主流となっている理由としては2点考えられます。

1点目は、コロナ禍で多くの人がテレビ会議システムを使い始めた当初において、自宅や職場の通信環境が整っておらず、やむを得ずカメラをOFFにして使っており、その名残が今もあること。

2点目はプライバシー保護の観点で、特に日本人は自宅=プライベート空間という認識が強いことから、自宅の様子が映り込むのに抵抗を感じるということです(多くのビジネスパーソンは、リモートワークは自宅から行っているため)

1点目の「通信環境」については、当初と現在では状況は変化してきており、5G回線がつながるエリアも拡がり、今後も更なる改善が続くはずです。

そうなった場合「当時の名残で」「何となく楽だから」といった理由でビデオOFFにし続けているのは、ビジネスを進めるうえでネガティブな影響があることが明らかになったことを考えると、少し残念な気がします。

2点目のプライバシー保護の観点は、慎重に対応する必要があると思います。
急に「ビデオをつけなさい」と指示をするのは「ハラスメントだ」と言われかねません。

OCAでは、クライアント企業様からビデオONの社内文化を作りたいという依頼を受けた際は、ファシリテーション術や、画面越しのコミュニケーション術のレクチャーと併せて、社員のみなさんに「ビデオOFFだとせっかくのテクノロジーの恩恵を無駄にしていますよ」といった形でお伝えしています。

OCAの思い2

この実験を通して1番お伝えしたいことは、ビデオOFFにすることで、コミュニケーション上ネガティブな影響がでるシーンがあるということを、多くの人が共通認識としてもっていただき、状況に合わせてビデオのON,OFFを使い分けていただけたらいいなと思っています。

OCAからのお知らせ

12月2日にオンラインセミナーを開催します

画像クリックで申込ページに遷移します

2022年12月2日(金)13:00~14:30
【実験結果発表】ビデオOFF会議が組織にもたらす危険性
~即生産性が上がるオンラインコミュニケーション~

「かんき出版の社員研修」主催のセミナーにOCA代表の初谷、そして組織・人財開発コンサルタントのAKIさん、本実験の共同研究者の宍戸 拓人さん(武蔵野大学 経営学部 准教授)とで登壇します。

心理学、組織開発、オンラインコミュニケーションの各分野のプロ3名で、それぞれの分野からの視点で、個人と組織がオンラインコミュニケーションのメリットを最大限享受するための手法を語ります。

日本ではまだまだ調査データが少ないオンラインコミュニケーションに関する貴重な情報が得られるセミナーです。
是非ご参加ください!!

詳細、お申込みページ

こちらからお申込みください。
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本日は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました!