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動物医療のゴール設定

皆さんは一緒に暮らす動物が病気になった時
何を目標としてどのような過程で
そのゴールを目指しますか?

いちばん治療効果が高く得られる状態

というものがあると16年臨床現場に携わって得た
わたしなりの考えがあります。
おんく堂ではそれをゴール設定としています。
その状態とは
「動物の意志と飼い主の希望が合致した時」です。
果たして動物の意志がわかるのか。

わたしがこれに気づいたのは
東洋医学の勉強を始め
実際に往診に伺い生活環境や飼い主と動物の関係性に触れる機会を持つようになってからです。

ゴール設定が必要な時

ちょこっとケガをしちゃった
珍しくお腹を壊しちゃった
などなど、
治療にすぐ反応して次の受診の時には
すっかりよくなりました!という場合は
そんなに「治療のゴール」ということは
考える機会がないかもしれません。
ちょっとしたトラブルは
すぐに治ってしまいますし
治ったらゴール到達です。

問題となるのは
病気が慢性化していて長期の通院や投薬が続いていたり
いろんな病気を1度に抱えてしまい
何を優先して治療を行っていけばよいのかわからない時です。
経験された方、向き合ってこられた方は
「あーー、わかるわー。
何が正解かわからないのよね」
と深くうなずかれることだと思います。

自分のことじゃ無いから迷う

自分の体のことであれば
治療に関しても
「痛くない方がいいな」
「入院しない方法がいいな」
反対に
「家に帰ってからの方がいろんな算段が大変やから長く入院したいわ〜」
なんてこともあるかも知れないですね。
でもいざ動物のこととなると自分のことでもなければ
言葉が通じるわけでもないし
病院の先生に勧められることが必要なことなのか
この子にとって合っていることなのか
他に方法があるのか
飼い主にとっては
動物医療でのゴール設定はとっても複雑になります。
「この子は何を望んでいるのだろうか?」

円滑な治療や疾病予防のために

動物病院ではクライアントエデュケーション
(動物がより良い生活ができるように
飼育方法や必要な予防の知識、病気の知識などを知ってもらうこと)や
些細なやり取りでも
飼い主との信頼関係を築くこと
(飼い主の訴えや感じていることを聞き取るだけでなく
例えばお薬はのめているのか、飲ませにくいとしたらどんなところが障害となっているか、
看病中の日常のケアで困っていることはないか、
予測されることで気をつけるべき事を事前に伝えられているか、などなどなど)
を重視するところも多いと思います。

「そこ聞いておいてよかった!」
「先生や看護師さんからのアドバイスを取り入れたら良くなった!」
「わたしは気づかなかったけど、先生が傷に気づいてくれた!」

病気に関しての説明や治療だけでは
その信頼関係を築くには不足があるのです。
我が子に等しい動物のことを
全て親である飼い主が決定しなければならないという心理的負担は
時に罪悪感を招きやすく
その罪悪感が治療の妨げになることもあることを
経験上多くの獣医師が身をもって知っていることでしょう。
そんな理由から獣医師はより多くの会話を通して
飼い主さんが「難しい」「できない」「わからない」と思っていることを
隠さずに正直に伝えてくれるまでになるには
飼い主さんの心情も察知しつつ丁寧に進めます。
飼い主とのやりとりが最も重視される理由です。
「飼い主との信頼関係を築いた上で、治療を選択していく」
ことがゴールと設定されている病院がほとんどだと思いますし、
実際これでとてもうまくいくことの方が多いのではないでしょうか。
ある一定のラインまでは飼い主の治療に対する達成度を引き出すことができます。

ただお気づきだと思いますが
一番の飼い主の思いが実は取り残されていますね。

「この子は何を望んでいるのだろうか?」

おんく堂のゴール設定
「動物の意志と飼い主の希望が合致する時」

治療中どれくらい飼い主さんが治療に集中しているか、ということを飼い主さん自身あるいは動物医療に携わる獣医師・看護師は意識したことがあるでしょうか。
往診先で
例えば
「先生に後でお茶出さなきゃ」とか
「片付いていなくてすみません!」とか
違うことにとっても気を使ってしまって
ふわふわ落ち着かない時は
気がいろんな方向に散らばってしまって
動物も集中していません。
想像以上に飼い主さんの心の状態は
動物に影響するのです。
飼い主さんが集中していない時は
治療の効果は最大になりません。

飼い主さんの意識のやり場として
どのようにすれば動物の治療に際して
最も「集中」した状態となるでしょうか?
それは治療中の動物の感情や感覚に寄り添い
どんな病であってもその病を持った状態のその子の全てを
受け入れるよ、大好きだよ、いつもありがとう
と感謝を伝え続けることに他ならないのです。
自宅での看病を通しての動物とのやりとりや
獣医師の治療提案や説明のなかでも
いつもいつも自分と動物に問いかけてほしい
「わたしはこう思っているけどどうかな?」

「この子はそういえばこんな時が1番嬉しそうだった」
「こんなことは絶対譲らない頑固なところがあったわ」なんてことも思い出します。

そうしているうちに、その子の意志が必ず見えてきます。
絶対的な正解を見つけるのではなく
その子と飼い主さん自身が最も求める治療のゴールが正解となっていくのです。

飼い主さん自身も
獣医師や動物看護師もその他ケアに携わるプロフェッショナルも
もう一歩ほんのちょっと先の世界で
動物と繋がっていきましょう。
嘘みたいな不思議な話ですが
必ず動物から返ってくるものがあります!





どうぶつのホリスティック専門病院おんく堂
萩原未央(はぎはらみお)
日本大学動物資源科学科および獣医学科卒業(解剖生理発生学(生体機構学)・野生動物医学)
卒業後沖縄で野生動物の保護管理や環境教育に携わりながら、病院勤務で臨床業務を学ぶ。
娘を出産しその後地元の兵庫へ戻る。
2021年時で動物病院勤務 歴16年。
往診専門の動物病院を開業して7年目。

Chi University(アメリカフロリダ)
認定獣医鍼灸師(CVA)取得
認定獣医漢方薬剤師(CVCH)コース終了
認定獣医食物療法師(CVFT)  コース終了

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