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雑誌『庭NIWA』のコラム『2100年の日本庭園へ』。vol.254では「坪庭展」というムーブメントについて。

■コラム『2100年の日本庭園へ』が掲載されている雑誌『庭NIWA』vol.254が発売中

庭NIWA vol.254

創刊40周年を迎えた日本の「庭」の専門誌『庭NIWA』。2023年1月の発刊号から庭園情報サイト《おにわさん》の中の人:イトウによるコラムがはじまりました。
コラムのタイトルは『2100年の日本庭園へ』。2100年=次の次の世代に伝えるために、「今の自分が次の世代になにができるか」みたいな意味を込めています。

その前段に関しては以下のnoteをお読みください。

前回のvol.253、島根県の庭園施設を支える方のインタビューに関するnoteはこちら。

■1月発売 vol.254のテーマは『坪庭展というムーブメント』。

vol.254で取り上げたのは『坪庭展』。
みなさんは『坪庭展』と言われてピンと来ますか?
静岡・東海地方を筆頭に、2019年頃から各地で広がりを見せているイベントで、文字通りの「坪庭」を庭師が作庭し展示するイベント。

2023年10月「てっぺんの坪庭展in愛知」の様子

もっとも従来も「トラックガーデン」「ガーデンコンテスト」(ガーデニングコンテスト)という名称で類似イベントは長年行われ続けていたとは思うのですが、不思議なもので「ガーデン」と「坪庭」とでは受ける印象も異なる。
…ってそんな印象の話はさておき、現在各地に広がっている『坪庭展』が重要なのは、その多くが「庭師発」だということ。

■「庭」の需要や担い手が減る現在、庭師が自身で「伝え手」になる重要性

上の方にも「造園工の減少」に関するエントリをリンクしていますが、若者が著しく減っていく日本において、『その職業を広く伝える』ことの重要さは言葉では伝えられないぐらい重要。これは「庭師」に限らず、デスクワークだろうがどの立場でもそうなんだけど。
(おそらく現場仕事と比べて若者を惹きつけているであろうIT業界の担い手すら、「人が足りていない」「なかなか人が取れない」と言っている…。)

そういう「担い手」に対する面でもこのような場が重要だし、消費者目線でも【その地域の庭師の存在を伝えている/知ることができる】場ってとても重要。それ以外に知る術がなかなか無いので。

で、今回は昨秋に行われた『坪庭展』の「企画・運営側」の方々へのインタビューを掲載。イベント自体はもちろん「庭師さんが主役」なんだけれど、その前段として『どのような想いで、庭師が主役となるイベントを開催したか』も知りたいし伝えられればと思いました。

そしてその想いやきっかけの裏にはやはり『危機感』がある。それは『おにわさん』を立ち上げ運営しているきっかけと同じもの。

①:『てっぺんの坪庭 in 愛知』竹藤商店 河村和将さん(マテリバ事業部次長)/高見庭苑 高見紀雄さん

『てっぺんの坪庭展in愛知』参加者の皆様

まずは2023年10月に愛知県名古屋市で初めて開催された「てっぺんの坪庭展in愛知」の企画・運営のお二人のインタビュー。名古屋の中でも都心部・栄のデパート屋上で開催することの良かったことや苦労、そして「庭」だけでないお二人のバックグラウンドなど面白い内容になっているのではないかと思います。

またこのイベントは「おにわさん」の中の人もトークイベントのゲストとして参加させていただきました。一般の参加者だけじゃなく、それを見に来られた仲間の庭師さんからも質問をいただいたりと盛況な会になった…んじゃないかと個人的には感じつつ。
庭に関して『知りたい』『何かをしたい』という欲、ニーズに対して、どう応えられるかは私としても考えていかなければいけないテーマだと思います。

②:庭展なら 創志園/庭展なら発起人 津川孝行さん/木村庭園 木村健二さん

『庭展なら』第2回参加者の皆様

そしてもうお二方、2023年9月に奈良県桜井市・そうめんで有名な「三輪」で開催された「庭展なら」の発起人 津川さん、理事長 木村さんのお二人のインタビューも掲載。庭展ならは個人でふらっと見に行かせていただきました。暑い日だった…

「庭展なら」はすでに2024年4月に第3回の開催を発表済み。その3回目も含め、これまで毎回違う会場・市町村で開催したり、地元の高校生や大阪の学生さんが参加したりと『地域を盛り上げる/紡ぐ』側面を見せているのもまた面白く特徴的な点。その想いや理由についても語っていただいています。放っておいても注目される京都市の庭のシーンに対する、同じ古都・奈良での現状…という点においても面白さがあるのではと思います。

■街の一軒家の新しい庭園を担う庭師も、国宝の庭園を担う庭師も、一般の人から見ればボーダーラインはない。

「てっぺんの坪庭展in愛知」

いわゆる「造園」の仕事の中でも、有名で歴史的な寺院が上、街路樹は下…みたいな言われ方をされている。
まあまあ確かに人である以上は上下を作るのは自然なことだし、実際に「一流の場」まで辿り着く人はそれ相応の努力と思考を重ねて辿り着いているのはまた事実。

しかし一方で、需要や担い手が減っていく問題の中で言えば「地方の一般のお庭シーンの底上げ」というのも必要不可欠。(漠然とした表現)

Instagramを中心に、横のつながりを作っている人も少なくはないけれど、それをシーン全体で構築していくこと…「お互い高め合える」「協力し合って盛り上げていく」流れになることを願っています。もちろんそれは長い歳月が必要なこと…。


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