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「災い転じて福となる」を、どう適切に教えられるだろうか

人間はもとより、鳥や虫や植物のなかにも、世に「革命」が起きることを待っているヤツらがいる!

いま、私の地元小学校で行っている総合的な学習の授業では生態系や生物多様性を野外活動をもとに子ども達に体験して「あ、そうなのかも?」と感じてもらえる授業を行っています。

昨日もその授業の中で、子ども達にクイズを出しました。

おなじような地域にある「手つかずの自然(森など)」と「里山(ひとが山を切り開いて畑や用水路を作った場所)」では、どちらが生き物の種類が多くなっているでしょうか?

4クラスに出題しました。子ども達の反応はなぜかクラスによって二つに別れて「手つかずの自然の方が多い!」が圧倒的多数なクラスと、手つかずの自然と里山が半々に別れたクラスがありました。

一概には言えませんが、日本の里山や、森の木を伐採して森林公園などの維持をしている場所など人の手が加わった場所での生態調査をした結果を見ると、意外にも人の手が加わっている方の動植物種類が手つかずの自然でのそれを上回っていることが多いようなのです。

この事実は私自身も2年前ぐらい新しく知ったことでした。でも世界的には古くから知られていて、下記の英語サイト(Google翻訳でかなり読める日本語になります)では、適度なかく乱が生物多様性を増すという主旨のことが書いてあります。

Greatecologyのブログ「Interpreting Habitat Quality Using Rapid Assessment Indicators」へのリンク

そのような事実を知ったので、これを小学生にも教えることにしました。

でも自然界に起きるかく乱とは、今年の台風21号で日本をズタズタにした台風19号での洪水や、オーストラリアで猛威を振るっている山火事などのことです。そういうものは生物多様性にとって「実は良い!」なんて真向から真顔で教えることは無理なはなし。いくら生物多様性にとって良くても人間生活には決して被害が及んではならない事態であって、それに対して人間は堤防やダムなどの治水などの防災技術を発展させて防いでいるのだから、うかつにもそれを「実は悪いことだった・・・」なんて教えられないわけなのです。

しかし、しかしながら、洪水が生物多様性を増すという事実は下記の国土交通省が公開しているプレゼン資料の主に23ページからに書いてあることを読めば「そうだったのかぁ」と理解はできるわけなんです。

きっと現代はこんな洪水を待っている動植物が相当種類いることをわきまえて、治水などの防災と生物多様性の維持を両立させることが求められているような複雑で難しい局面に差し掛かってきたのです。きっと今の小学生が大人になるときにもこの課題は目の前に迫り、地球環境の悪化問題と、大規模自然災害の多発という、防災か環境保全か、という大問題を扱う人も出ると思います。だから小学生の授業でも、少し(あくまでも少し)はその課題の入門編を教えた方がいいだろうと思ったのです。

だから教えました。

秋の七草のひとつ、フジバカマは、実は洪水を待ち望んでいる植物で、洪水によって生えている他の植物が根絶された跡地に芽吹くのだと。今フジバカマが滅多に見られないのは、洪水が起きなくなったから芽吹くことができなくなってしまった。まずはこんな具合に事を切り出しました。

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だけど、洪水の代わりに、人間が草刈して畑のように土を掘り返してあげて、他の草を一掃した場所にフジマカマの苗を植えたら、ちゃんと育つんことを説明して、畑や公園や学校のビオトープなんかを手入れすることが自然で起きるかく乱の代わりになって生態系が豊かになることを教えました。

「教えました」と書きましたが、まさに教えたわけです。そうしたら子ども達は「そういうことを今日の学習で初めて知りました!」と感想を発言していましたが、私は『こんなにスポッっていう感じで子どもの頭の中に説明したことが入力されてしまって・・・』と少し怖くなりました。中には「・・・そんなこと信じらんねぇな!」なんて言ってくる子どもがいても良さそうなのに・・・。

子ども達には教えるばっかりじゃいけないと思って、2か月前に近くの自然公園と、裏山(この小学校の北側には標高差100メートルぐらいの山があって、普段は入ってはいけない森になっています)に行って眺めた森の中の様子を比べて、そのとき感じたことを言ってもらいました。
確かに公園にはバッタや蝶が何匹もいたけど、森の中は薄暗くて草があんまり無くて、鳥の鳴き声は聞こえたけど虫はあんまりいなかった・・・と、私どもの解説に順風な意見が多数出たので、ま、一安心。

その後に外履きに履き替えて学校ビオトープに茂っている草を鎌で刈るという「人工のかく乱」を起こす作業を子ども達にやってもらいました。

これで子ども達の頭の中に、身近な森では「手つかずの森」状態にしておいてはイカンのだな!ということが分かってもらえたらいいのですが。
さらに「じゃあ森の保全活動をみんなでやろう!」となってくれたら更にいいのですが。


それはなかなかそううまくいくほど、世の中甘くはないでしょうけど。

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