Onishi Hajime

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最近の記事

卵は存在しない

どことなくラカンの一文のような題だが、別に難解でもなんでもないそのままの話である。しかもとりとめがない。 4月からずっと毎日買い出しに行っては「卵がない」という旨のツイートをし続けている。さすがに(頭が)おかしいと思われたのか、ついに「比喩ではないと思うがいつも卵がないので気になる」と聞かれた。そう、比喩ではなくてほんとうに店には卵がないのだ。最後に卵を食べたのは4月9日だった。 千歳市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、過去最大規模の約120万羽が殺処分された

    • まったくではないが新しい音楽体験

      昨年の十月くらいから毎日欠かさず自宅で一時間ほどの筋力トレーニング、世にいう筋トレをしている。理由はご多分に漏れず太ってしまったからである。それも過去最大に。まことにお恥ずかしい。 この数か月、食事・栄養の管理と合わせていやいやながら日々トレーニングを続けてきたおかげで、いまや体重も体脂肪率も文句のない値になり、体つきは学生の頃のようになった。ひいき目かもしれないがむしろ当時よりも引き締まっている。せっかくなので腹筋が割れて見えるくらいまで絞ろうと思っている。 ところで筋

      • 国境の南(5)

        さて、ダーヴィドはバスに乗って Södermalm へと向かう。道中彼はバスを船に見立てて、自分が昔の船乗りや海軍士官になった空想にふける。これはダーヴィドの性格や嗜好を示すとともに、ストックホルムが水に囲まれた都市であるという地理的特性を想起させる表現であるかもしれない。バスの終点に着くと、彼はたった一人難破した船から見知らぬ浜辺への上陸を想像する。そこで彼が見た風景はどのようなものだったか。 どこか寂しささえ漂う情景ではないだろうか。地図を彩っていたはずの緑は無く、大き

        • 国境の南(4)

          物語の二章に入ると Södermalm に関する情報が読者に少しずつ与えられる。冒頭の文章を引用してみよう。ご覧のとおりになかなかな言いようであり、短いものではあるがダーヴィドの父親が Södermalm とそこの住人をどう見ているかをよく示している。 続いてダーヴィドは地理の授業で作った地図を思い出す。授業では北部と南部の地図を渡され、それらを一枚に貼り合わせたのだった。北部は彼や父親たちが住み、事務所を構えて働く地域であり、南部は工場とそこで働く労働者、そして父親が言う

        卵は存在しない

          国境の南(3)

          あらすじにダーヴィドは高級住宅街に住んでいると記した。物語中に具体的な地名は出てこないのだが、ストックホルムの Östermalm と呼ばれる地区だとみなされている。同地区は現在においても人口が多く、またスウェーデン国内で最も住宅費が高いお金がかかる町だという。ダーヴィドが<太っちょ>の家で語るところによると、彼が住むフラットには部屋が8つもあり、そこには両親とメイドがいるだけだ。物語内ではさらに田舎の家の存在に何度か触れており、おそらく別荘も所有している。父親が弁護士である

          国境の南(2)

          まずは作品の概要について触れておこう。 "The Secret Jorney" はスウェーデンの作家ハリー・クルマンが1953年に発表した児童文学作品である。原題は "Hemlig resa" (秘密の旅)で英題はこれをそのまま訳したものだ。ドイツ語版やフランス語版もそれぞれ "Heimliche Reise", "Le Voyage Secret" と共通しており、日本語版が主人公の名前を含めた『デビッドの秘密の旅』なのは少し変わっていると言えるかもしれない。本作は195

          国境の南(1)

          Harry Kullman, "The Secret Journey" 自分が子供だった時に読んで楽しかった本をまた読みたいと思っても、絶版になっていて手に入れるのが難しいことが多い。復刊ドットコムというありがたいサービスはあるが、欲しいものすべてが揃っているわけではない。冒頭に掲げたスウェーデンの作家ハリー・クルマンの作品も、そのような手に入りにくい一冊だ。この本はあかね書房が1965年に『デビッドの秘密の旅』という題で発行したものである。同社が出していた国際児童文学全集

          国境の南(1)

          やくにたたないおかねのはなし

          本当に役に立たない話をする。一円にもならない。 中国語の練習問題に我只有十块!みたいな文が出てくる。そして I only have ten yuan! と訳が付いている。いくらなんでも中国の通貨は元だという知識は持っているから「块とはいったい」と思うものの、まあそのように言うのかととりあえず納得して先に進む。何日かが過ぎると今度は这件蓝色衬衫是七百元。 This blue shirt is seven hundred yuan. のような文が現れる。以前は块を使っていたのに

          やくにたたないおかねのはなし

          Are you sure you want to learn a language?

          Duolingo というオンラインの言語学習サービスがある。知っている人も多いと思う。 英語の課程だとせいぜいCEFRのA2相当までらしく、高度な内容には踏み込まない。おおよそ日本の中学校における授業の水準だろうか。他の言語もおそらくその程度だろう。B1やそれ以上の能力がある人には簡単すぎて楽しめないかもしれない。そのため学習の役には立たないとする向きも多いようだが、無料で様々な言語を学べるので自分は重宝している。毎日5分、10分でも他言語に触れるのは何もしないよりいいし、

          Are you sure you want to learn a language?

          雀魂レビュアーズ

          相変わらず雀魂では雀士1から動けずもぞもぞとやっている。勝負の押し引きを誤って痛恨のダブロンを食らうなどし、ここ最近で四着の割合と放銃率が増えてしまった。楽しいが、みんなのようにうまくなるのは難しい。 それはさておき、雀魂の、あるいは雀魂に限らずオンライン麻雀の評価を見ていると、なかにはとても興味深いものがある。ただし、いわゆる「牌操作」うんぬんの説は感心しない。 たとえば「早い巡目に三面張で立直したのに、追っかけの嵌張に負けた」というのはまだいい。悔しい気持ちはわかる。

          雀魂レビュアーズ

          問1. 「ひまわり」を描いた画家の名を答えよ

          これまで点数計算の話題しか書いてこなかったが、別に麻雀についてだけ語ろうと思ってnoteを始めたわけではない(*1)。そうではなくて、自分が好きなこと、楽しんでいることについて気軽に、できれば適当な話をしたいと考えている。 私はあいにく趣味とまで呼べるほど深い知識や嗜好を持ち合わせないものの、それなりに楽しみながら続けていることはいくつかある。そのひとつが外国語の学習である。何か使うあてがあって学んでいるのではなく、お金をかけずにできるので毎日少しずつ時間を使っている。ほと

          問1. 「ひまわり」を描いた画家の名を答えよ

          麻雀の点数計算を覚えたい(最終回)

          ここまで長くなるとは思っていなかった麻雀の点数計算の話をようやく終えることができます。前回も述べたとおり、もう主題そのものについて付け加えることはないので、蛇足も蛇足、あとがきに相当する文章です。 なぜ点数計算を覚えたばかりの、しかも麻雀が下手な僕がこのような記事を書こうと思ったのか(注1)。それは、長年わからなかったものが、たったひとつの式をきっかけに理解できてうれしかったからです。 覚えたて始めたての頃に、点数計算がわからないと言うと「あんなものかんたんだよ」「点数表

          麻雀の点数計算を覚えたい(最終回)

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十三回)

          第二十二回をもって麻雀の点数計算に関する話はすべて終わりました。書き漏らしたことがあるかもしれませんが、終わりにします。だから今回は蛇足です。 これまで次のふたつの定義文を起点として点数計算の話をしてきました。 子が素点$${f}$$符、$${n}$$翻であがった際の点数$${S}$$は$${S=4f×2^{n+2}}$$である。 親の点数$${S_d​}$$は子の点数$${S}$$を1.5倍したものである。 ただ、僕がいまでも$${S=4f×2^{n+2}}$$のま

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十三回)

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十二回)

          前回はちょっとした点数計算の練習方法について触れました。 さて、点数を出す際に便利、有用だとされるものに点数表、あるいは点数早見表があります。ある符と翻数の時の点数の一覧で、見たことがある人は多いと思います。いわゆるチートシートです。 点数計算のやり方といった題目なのに、最初から点数表を示して「まずは30符、40符、50符の部分を暗記しよう」などと解説しているものをいくつか目にしたことがあります。 しかし先に述べたように、この表は「ある符と翻数の時」の点数の一覧なので、

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十二回)

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十一回)

          第二十回は高点法の話でした。そして、これでようやく点数計算の仕組み、方法についてひととおり覚えたことになります。今度は身につけたものをどれだけ素早く実行できるかが課題です。 やり方を覚えたとはいえ、まだまだ遅いのですね。僕自身も点数計算を覚えたのがついひと月ほど前ですから、「32符を切り上げて40符で、3翻だから…」ともたつきます(注1)。 友人同士で誰かの家に集まって打ったり、セット麻雀に行けるのならばそうした場で練習することができそうです。しかし、オンライン麻雀だとな

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十一回)

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十回)

          第十八回と第十九回で翻数に関する話をしましたから、点数計算についてはほぼこれでおしまいと言ってもよくなりました。あとひとつ、点数を出す際の決まりである高点法について触れたいと思います(注1)。 点数の計算や申告は「最も点数が高くなる方法」でする 下図のような手牌をさらして、自信に満ちあふれた表情で「タンヤオ」と宣言しているアスキーアートやイラストを見たことはありませんか(注2)。 たしかにタンヤオに見えなくもないですが並べ替えると次のとおりです。 四暗刻ですね(注3)

          麻雀の点数計算を覚えたい(第二十回)