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【SS】30.理想のごみ処理  ※クリエイターフェス

今は、マンション暮らしである。マンション生活のいいところは、戸締りの簡単さとセキュリティ、そしていつでも出せるゴミというのがあるだろう。もちろん、24Hゴミ出しができるところはマンションでも対応していないケースもあるが、我が家は幸いなことに以前住んでいたマンションからずっと24Hゴミ出しのメリットを享受してきた。そんなことを考えていると元々ゴミがなければこんなことで悩まなくてもいいんだよなという思いを突き詰めたショートショートを書いてみました。お楽しみください。


理想のごみ処理

 我々は、スーパーで過剰包装された商品や盗難防止のためにしっかりと包装された商品、ネット注文した際に発生する段ボールのゴミなど日々ゴミと接している。

 もし、これらのゴミが全く無かったらどれだけ楽になるのだろうということを真剣に考えた若者がいた。彼のひぃおじいちゃんの時代には、豆腐は鍋を持って買いに行ったり、魚は新聞紙で包んでもらい、その新聞紙は家に帰るとお風呂を焚くための燃料として使っていたそうだ。だから、ゴミ箱に捨てるゴミは今と比べると格段に少なかったそうだ。

 そんな世界に戻すことは不可能だが、ゴミの排出を少なくすることはできないのだろうか、もしくは家庭でゴミを分別粉砕し再利用につなげることはできないのだろうかと若者は日々考え続けていた。そして、一筋の光を見つけた。

 台所のゴミはディスポーザーが普及し始めているので、生ごみの対応は既に気にしなくていいだろう。しかし、スーパーで購入した物のパックやペットボトル、缶の類はどうにもならない。ここに若者は焦点を当てた。ゴミ処理施設では、これらのものを自動分別したあと必要に応じ粉砕し再利用できるように加工していることが多い。これと同じことが家庭でできればいいと考えたのだが、各家庭ごとに設備を置くのは大変な出費になるので公共でなんとかすることを考え続けた。

 そして、ある一つの仮説に辿り着いた。現在はゴミ収集車によって各家庭からのごみを収集し、分別して処理しているが、これが下水と同じ方法で回収できれば人手を使ってトラックで回収する必要もないし、カラスの被害を心配する必要もない。

 若者は、現在の上下水道と同様に各家庭とごみ処理場を直接結ぶことを考案したのだ、利用するのは下水道だ。下水道の中に新たにゴミを回収するためのパイプを敷設して気圧の差や風圧を利用してゴミを回収する仕組みを考案したのだ。

 実現できれば、ゴミ収集車は粗大ゴミ対応に特化でき、人員削減も可能となる。決して仕組みづくりのコストを回収できないわけではないことを若者は試算した。これにより美しい街の構築、住みやすい街の構築が可能になると考えた。

 しかし、若者の理想は人類の雑な消費指向が打ち砕いた。便利になると人はそれを当たり前として、さらに廃棄するゴミを増加させてしまったのだ。ゴミを分別して袋に詰めて持っていくという作業が不要となり、ゴミ回収車が回ってくる曜日も気にする必要がなくなると、人々はゴミの量に鈍感になり以前よりもどんどんゴミを出すようになってしまった。

 若者は反省した。一生懸命仕組みで解決しようとしていたけれど、本質はそうでは無かった。人々の心の中にある意識の問題だったのだと思い知ったのである。人間とはなんと愚かな動物なのだろうと。

 その後、若者は、諦めることなく今度は人々の心を制御するための仕組みを懸命に考えている。世界中のマフィアが注目しているそうだ。
 



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