【SS】24.ジャングル ※クリエイターフェス
皆さんの家庭には空気清浄機がありますか? 我が家では各部屋に置いて使っているくらいです。もちろん、エアコンにも機能があるようですが、加湿機能付きは手放せませんね。潤いは必要です。そんなことを考えていたら、潤いすぎると部屋は一体どうなるんだと妄想してしまいました。それで作ったショートショート、お楽しみください。
ジャングル
季節が冬に近づいてくるとやたらと乾燥が気になってくる。特に寝ている間に乾燥すると起きた時に喉がいがらっぽい。やっぱり、加湿機能付きの空気清浄機は必需品だなと思いながらワンルームのマンションで生活を続けている。乾燥は嫌なのでたった6畳の部屋にもかかわらず、24畳対応の加湿器を買ってしまった。おかげで、窓ガラスは曇るけど喉は潤っている。うーん、快適な湿度だ。
そんなことを考えながらこの部屋で生活を始めて三年が経過した。最近なんとなく違和感を感じるようになってきている。というのもこの私が住んでいるマンションの場所は品川なんだが、部屋の中はまるで南国みたいになってしまっているのである。そう、熱帯雨林のジャングルにいるみたいな錯覚にとらわれる。
部屋の隅でなにやら動いている気配もある。それに買った覚えもないのに観葉植物みたいなものが部屋を覆い尽くしている。なんでここまで気づかなかったんだろうと思うくらい。じつは、薄々わかっていたのだが、自分自身で受け入れたくない気持ちがあり、ずっと無視してしまっていた。結果、部屋中がジャングルとなってしまった。
どうもおかしいと思い、買ってしまった加湿器の取説を探し出して始めて開いてみた。
「この空気清浄加湿器は、酸素供給のための植物の種子や胞子を内蔵しています。お部屋の中に緑がない場合は、種子から芽が出て育ったり胞子からキノコになったりします。きのこは収穫して食べられます。観葉植物は大きくなったら切ってあげてください。なお、植物は通常の五倍速で成長するように遺伝子組み換え済みです」と書いてあった。
取説を読み終えた後、加湿機能付き空気清浄機のプラグを思い切ってコンセントから引き抜いた。
了
期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)
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