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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#30

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第五章 新しい関係


トルネード

 キヨシが手伝うようになってから二ヶ月が経過しようとしている頃になると、さすがに離れて暮らしている村人たちにもキヨシの存在が知れ渡り、かなり内容が盛られて噂が広がっていた。

「メリーはいつの間にか外国人の男と一緒になっているみたいだ。物好きな外人もいるもんだな」という噂がいつの間にか小さな村中に広がっていた。それに伴い、噂を肯定するかのように、メリーもキヨシもまんざらではない気持ちも芽生え始めていた。お互いの真面目さ、ワインに対する取り組みの真剣さにどちらからともなく好感を感じ、次第にそれは愛へと変化していったみたいだった。もしかすると妖精の粉の魔法も手助けしたのかもしれない。

 後一月ほどで収穫期になろうとしている頃、ものすごい寒気が村中を襲った。かと思えば物凄く暑い日差しを伴う太陽に照らされる日となり、低い土地の方から山に向かって大きな竜巻が発生してしまった。人間の力ではどうすることもできない。被害が出ないことを祈るだけだった。竜巻は街の横を通りいろんなものを巻き上げながら、メリーの葡萄畑を目指して進んでいる。メリーもキヨシも葡萄畑が心配ではあったが、そばに行くこと自体が危険なので家の中から二人で祈るだけだった。そのとき、窓の外にひらひらと舞い上がっていく白い蝶の姿が見えた。そう、妖精である。妖精の一人が葡萄畑の方にひらひらと羽ばたきながら向かって行った。二人はお互いを見つめながら「もしかしたら」と思っていた。

 いよいよ、トルネードはその勢いを増して、メリーの葡萄畑に近づいて来た。ものすごい風にたわわに実った葡萄も懸命に耐えていた。そこにちょっと前にひらひらしていた妖精がやって来た。ハーサと呼ばれている妖精だった。ハーサはトルネードに向かってその小さな羽を震わせて金色の粉を振り撒き続けた。少しずつ妖精は小さくなっている。しかし構わずに妖精は羽を振るわせ続けた。そして一言空に向かって言葉を放った。

「アーサ、ケーサ、私はもう持たない。先に逝くね。でもトルネードはなんとか進路変更に成功したわ。さようなら」

 その後トルネードは大きく弧を描くようにメリーの葡萄畑を回避して山頂の方に進んで行き最終的には消えてしまった。葡萄畑の被害は何とか回避された。


つづく


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