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【SS】10.時の管理人  ※クリエイターフェス

毎日時計を見ない人はほとんどいないだろう。我が家には至る所に時計がある。ほとんどを電波時計にしたが、たまにアナログもある。ふと見るとだいぶ時間がずれているということもある。時間は、本当に遅滞なく進んでいるのだろうか、そんなことを考えて作ったショートショート。お楽しみください。


時の管理人

 物事に一生懸命打ち込んでいる時はなぜか時間が過ぎるのが早い。一方、やることがなくて退屈なときはなかなか時間が進まない。

 人は、心の在り方で時間を長く感じたり短く感じたりするものだとよく言われる。本当だろうか? もしかしたら、楽しい時間は実際には時間が短くされていて「えっ、もうこんな時間」と感じているということはないのだろうか? 反対に、何もやることがないときは、意図的に過ぎゆく時間を延長されているということはないのだろうか?

 実は、我々の目には見えないが地球上の全てを時を管理する管理人がたった一人で全地球人の時間の感じ方を制御しているらしいのだ。もちろん、人間ではない。なぜなら365日24時間働く必要があるからだ。では、その正体はなんだろう。どうやら、人類が誕生した時に作られたコンピュータでAIが搭載されているらしいのだ。もちろん、今暴露している私も実際に見たことがあるわけではない。しかし、明確なメッセージをたった一度だけ、受け取ったことがあるのだ。

「申し訳ありません、人類誕生からの時の管理人AIです。あなたの時間の制御を間違えました。明日中にはリカバリーする予定です。今日のあなたに与えられた時間は28時間で、明日は20時間になります。一年を通してみれば誤差は無くなりますのでご安心ください。なお、あなたの記憶は明日中には修正されます」

 こんなメッセージがいきなり私の目の前の空中に出現したのだ。私は反射的に紙に書き写しておいた。追加のメモを残して。

「このメモは、私自身が記憶を失った時のために記しておく。世の中には、時間を管理しているAIがいるらしい。一人一人が感じる時間は、実は意図的に操作されているようだ。なので、時計を信じてはいけない。おそらく私はこの記憶を消されるだろうからメモを残しておく」

 次の日の朝、目覚めた私は、自分のメモを見てこの記事を書いている。記憶には全く残っていない。自分のメモを信じただけである。

 ただ目覚めた時にはなぜか拘束衣で縛られ、白い部屋にいたということだけ。



期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)

#クリエイターフェス #ショートショート #創作 #小説 #ショートショート書いてみた


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