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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#43

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第七章 両親との再会


最後の再会

 それから二人は上着を取って表に出た。やはりほんのりと明るい光が誘う様に光っている。ケンの両親はライトを片手に心を弾ませて歩いて行き、その光の中に飲み込まれていった。ほんのりと灯った光の方が近づいてきたようにも感じた。光の中に入ると、突然霧の中にいるような景色に変わり、見覚えのある家の前に出た。それは紛れもなく、亡くなったケンのおじいさんの家だった。ケンの両親は耐えられずお互いを見つめて涙を流していた。

「この家は。覚えているぞ。私が小さい頃育った家だ。なつかしいな。ケンはおじいちゃんが好きでよく一人で遊びにいっていた家だ。ああ、笑おうと言っていたのに、涙が勝手に出てきてしまう」

「ええ、本当ですね。懐かしいおじいさんの家ですね。ケンが大好きだったところですよ、ああ、ケンがいるのね、ここに」

 その家の中にはケンがいた。ガラス窓越しに見える久しぶりの両親の姿は、自分の記憶の中にある姿とはかけ離れていた。それだけの年月が経過していたのだ。父親の頭はすっかり白くなっていた。母親の方は何となく痩せてしまったようだった。心なしか二人とも小さく感じた。しばらく部屋の中で立ちすくみ、久しぶりに見た年老いた両親を見つめ大粒の涙を流していた。一言声をかけると自分自身は消えてしまうということをわかっていたので、なかなか声をかけられないでいた。しかし、目の前の年老いた両親の泣き顔を見ていると、衝動は抑えられるはずもなく、思わず家から飛び出して叫んでしまった。

「父さん、母さん、ごめんよ。僕はずっと前に崖から落ちて死んでしまったんだ。親孝行もできずに先に死んじゃってごめん。本当にごめんなさい」

 その時、ケンの姿が現れ、両親はケンの姿をじっと見ながら、一人ずつ最後の一言を口にした。

「ケン、父さんも母さんも悲しかったけど、お前は最後に人助けをしてくれた。父さんと母さんの誇りだよ。こっちのことは気にしなくていい。どうせもうすぐまた会えるからな。こうして最後に若いままのお前の姿を見て話ができて本当に良かった。安心して天国に行ってくれ」

「ケン、私のケン。お前は本当にいい子だったわ。人に優しくて、親にも優しくて。そして最後まで人助けをしたんだね。母さんもやっと吹っ切れたわ。最後に声が聞けてほんうによかった。ゆっくりお休み」


つづく


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