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人生は映画 あなたのストーリーを再構築する7つの質問

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それは、2018年10月、グーグル本社で開かれたイベント「Talks at Google」でのこと。ゲストスピーカーとして招かれたのは、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏。人類の歴史や人類が今後直面する課題や展望をマクロな視点で描き、今や全世界が注目するハラリ氏に司会者がこう質問しました。

“あなたが著書で描く人間の未来は大変興味深いものですね。そこでお尋ねしたいのですが、私には5歳と3歳になる娘がいます。今父親として娘たちに何を教えれば良いのでしょうか?”

ハラリ氏の答えは以下のようなものでした:

“2050年に世界がどうなっているのかさえ誰にもわかりません。ですから教育で力を入れるべき事柄は感情知能と精神のバランスを保つことです。なぜならこれからの子どもたちには人生の中で自分を再構築することが繰り返し必要になってくるからです。

・ ・・・これまでのアイデンティティとは基礎が頑丈な石造りの家のようなものでした。しかし今後アイデンティティはテントのようなものだと捉える方がしっくりくるでしょう。折りたたんで、必要な場所に移動するのです。どこに移動するかは分かりませんが、移動しなければならなくなるのです。“

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 さて、このイベントから3年後の今、私たちの日常はパンデミックを経てすっかり変化しました。仕事や居場所を失い、仲間との触れ合いが減り、自分の存在意義が確信できなくなった人も少なくないでしょう。これまでの「当たり前」が突然に、そして簡単に失われることを知った今、ハラリ氏の言う自由に場所を変えて組み立てるテントのごとくアイデンティティを再構築し続ける生き方は、子ども達の未来の姿ではなく、私たち大人に既に求められるものになったと言えるかもしれません。

ではアイデンティティの再構築ってどうやってやればよいのでしょう?そもそもアイデンティティとは何かをすっきりと表現できる人も少ないと思います。

アイデンティティとは、すごく簡単に言えば、他人との関わりの中で得る「自分は誰なのか」という問いに対する答えです。でも、それを言葉で表現し更により良い未来に向けて再構築(編集)していくというのは、簡単ではなさそうです。

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そこで、今回は2020年11月に公開された「Psychology Today」の記事「Your Life as a Movie: 7 Questions to Re-Create Your Story(人生は映画:あなたの物語を再構築するための7つの質問)」をご紹介します。以下の質問に答えながら、映画の脚本家になったつもりで、自分自身の物語を綴ってみましょう。

1. その物語の主人公(あなた)はどんな人物ですか?

肉体的な特徴や服装などの外見だけでなく、性格も詳細に記してみましょう。また他の人は知らないけれど、自分自身が大事にしている価値観や思い、また、自分自身は意識していないにも関わらず、他の人があなたに対して抱いている印象や感情はないか、日常を振り返って綴ってみましょう。

他者のあなたに対するイメージが、あなた自身が抱くそれと大きく違っているとしたら、それはなぜなのでしょう?そして自分自身はどんなセルフイメージを前面に出していきたいですか?

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2. この物語で重要な役割を担う登場人物は?

大抵の物語において、重要な登場人物の数は限られています。親、友人、同僚、ライバルなど、鍵となる人物を挙げてみましょう。

では、これまでの、そして今現在のあなたの人生において常に影響を与えたり、支えとなったり、あなたを困らせたり、試練をもたらす人は誰でしょうか?「この人との関係性を変えたい」と思う人はいますか?いるとしたらどんな風に変えていきたいですか?その関係性を変化させるための行動についても書いてみましょう。

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3. 核となる葛藤は?

どんな映画や小説にも主人公の葛藤が表現されています。それらは自分の内なる感情との葛藤であったり、外界に存在するものとの葛藤であったりします。内なる感情の例としては、過去のトラウマ、過去の恋人への忘れられない想い、抜け出せない習慣などがあるでしょう。外的なものには、ライバルの存在、災害や自分では対処できない大きな試練などがあります。

さて、あなたの人生を一枚の長い布だと想像してください。その布に長い間縫いこまれている糸のような、継続的に存在している葛藤はありますか?それは内的なものですか?それとも外的なものですか?どこからやってきたのでしょう?どうしてそんなに長く存在し続けていて、今もあなたを苦しめているのでしょうか?ストーリーとして綴ってみましょう。

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4. 主人公が一番追い求めているものは?

アクション映画では、主人公の求めるものが、家族を救うことだったり、相手への報復だったり、一攫千金だったりと、とても分かりやすく描かれている場合が多いです。では、あなたの物語において、主人公が追い求めるものは何でしょうか?

今現在集中して取り組んでいることもあるかもしれませんが、鳥の目であなたの物語全体を眺めてみてください。主人公の選択や行動を左右するような、心理的原動力となっている「真の狙い」はなんでしょうか?主人公は何を成し遂げようとしているのでしょう?

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5. 主人公の行く手を阻む障壁は?

「眠れる森の美女」の王子は、王女の住む城にたどり着くためにトゲに覆われた木々が茂る森を超えなければなりませんでした。「オズの魔法使い」では、ドロシーが家に帰るために西の魔女と戦います。

あなたの物語に存在する障害物は何ですか?それらは「自信が無い」「完璧主義者で思い切った行動ができない」などの内面的なものでしょうか。もしくは「お金が無い」「仲間がいない」などの外的なものでしょうか。具体的に記してみましょう。

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6. それらの障壁をどのように超えていきますか?

様々な映画や小説の主人公を思い浮かべてください。彼・彼女らはどのように障壁を乗り越えているでしょうか。覚悟を決めて真っ向から挑む場合もあれば、その場から離れる、不安や中毒症状をとりあえず受け入れる、今持っているものや置かれている環境に感謝するなど様々なパターンがあります。

あなたの物語において、主人公は追い求めるものを手に入れるため、障壁一つ一つにどのように対処していくのでしょう。描いてみましょう。

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7. あなたが望むこのストーリーの結末は?

あなたの物語は、秘宝を手に入れるとか王女と結ばれるというようなドラマティックなものでは無いかもしれませんが、豪邸に住むとか途上国に学校を建てるなどの分かりやすい理想を描くことはできるでしょう。一方で家族と仲良く生活するとか、自分に自信を持ち充足感を感じながら生活するなど、内面に大きく関わる理想のエンディングを描くこともできます。

ここで一番伝えたい大事なことは、エンディングは自分で自由に描くことができると確信することです。なぜなら、あなたの人生というストーリーがどこへ向かい、そこで起こる様々なことにどのような意味づけを行い、どのように行動するかは、その著者であり主人公であるあなただけに委ねられているからです。全てあなたが選択できるのです。

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まとめ

今回はアイデンティティの再構築の手順について、自分を主人公にした物語を書いてみるという手法を用いてお話しました。

なぜ日記やただの振り返りの文章ではなく物語を書くという方法が有効なのでしょうか。それは少し離れた位置から自分自身を客観的に捉え、自分の人生に起こる様々な出来事に丁寧な意味づけを行うことを容易にするからです。

あなたの外で起こっていることは、全てあなたの頭の中で意味づけされ、それに基づいてあなたは行動を起こします。その行動に対して周囲が反応し、その反応があなたの次の行動に影響を与えます。そう、世界はあなたの頭の中で創られているのです。

自分の人生の手綱を握り、自分を真に満たすストーリーを描いていくために、以下の質問に時折答えながら、編集力(アイデンティティ再構築の力)を高めていきましょう。

1. その物語の主人公(あなた)はどんな人物ですか?

2. この物語で重要な役割を担う登場人物は?

3. 核となる葛藤は?

4. 主人公が一番追い求めているものは?

5. 主人公の行く手を阻む障壁は?

6. それらの障壁をどのように超えていきますか?

7. あなたが望むこのストーリーの結末は?


ワンネス財団HPhttps://oneness-g.com/

本稿は以下記事に基づくものです:

“Your Life as a Movie: 7 Questions to Re-Create Your Story - An exercise to put your life and goals in perspective” (2020, Robert Taibbi),

https://www.psychologytoday.com/us/blog/fixing-families/202011/your-life-movie-7-questions-re-create-your-story (Posted Nov 21, 2020)

(寄稿:泉谷道子 - 心理学博士)

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