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脱コロナ禍のキーワード「ウェルビーイング」。欧州・アジア・日本の現状と課題。

ONENESS MAG - ワンネス財団

10月10日(月)は世界メンタルヘルスデーでした。「世界のメンタルヘルス問題に関する意識を高め、メンタルヘルスをサポートする取り組みを活発化させることを目的とした1)」国際デー2)です。1992年に世界精神保健連盟(WFMH)によって初めて祝われ、2013年より世界保健機関(WHO)も国際的なキャンペーンを行っています。WFMHの提起した今年のテーマは、「すべての人のメンタルヘルスとウェルビーイングを国際的な優先事項にしよう」でした。コロナが精神的にも経済的にも身体的・物理的にも多様で多大な影響を及ぼし、それらが互いに反響している中で、改めて「よき人生、ウェルビーイング」に焦点が当てられています。

さて、特にウェルビーイングと関連の深い業種に生命保険会社があります。商品がユーザーの死や病気に関わる以上、人々のウェルビーイングが彼らの経営に影響を与え、CSR(企業の社会的責任)のアジェンダとしても親和性の高いことは、納得しやすいところではないでしょうか。その中で、アクサ(AXA)は世界有数の生命保険会社ですが、近年になってウェルビーイングやメンタルヘルスの調査研究をさらに活発化させ、独自の指標であるAXAマインドヘルス指数を開発し、数度にわたって報告書を発行しています。今年発行された最新の報告書(2022年マインドヘルス&ウェルビーイング研究3))では、日本を含む11か国・地域の11,000人(各1,000人)を対象にAXAマインドヘルス指数に基づく調査を行い、その分析結果をまとめています。なお、アクサは「こころの健康」を指すメンタルヘルスという言葉が、長年使われてきた中で固定観念や偏見を持たれるようになっているとして、マインドヘルスという言葉を充てています。

調査対象となった国と地域

欧州:ベルギー、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、スペイン、スイス、イギリス

アジア:中国、香港、日本


アクサは、マインドヘルスを形作り影響する様々な要素を指数に組み入れています。そこには、睡眠・栄養・運動などのライフスタイル、自己受容や誇り、人生の意義・目的、感情的なバランス(EQ)などの個人的な資質、社会とのつながりや他人と交わるときのスタイル、社会全体のメンタルヘルス・精神疾患に対する捉え方やヘルスケア体系の充実度などが含まれます。それらを選別し、健康的なライフスタイルやレジリエンス(困難からの回復力)などの「ポジティブな行動」、ヘルスケアなどの社会システムや個人のメンタルヘルスの状態などの「調整因子」、人生の満足度や幸福感、不安・抑うつ・ストレスなど、先の2つから引き出される「アウトカム(結果)」の3つの構成要素にまとめています。これらの構成要素や副次的要素を統計処理して100~0のスコアを出しています。最後にすべてを統合してその人のウェルビーイングを表すマインドヘルス指数を算出しています。

このウェルビーイング度を高い方から”flourishing"/"getting by"/"languishing"/"struggling"の4段階に分けています。「flourishing」は直訳すると「花開いた、繫栄した」という意味で、コロナにあっても充実した生活を送れている人たちになるでしょう。「getting by」は、乗り切っているという意味ですが、苦労はあってもさほど大きな問題はなく過ごせている人と考えればよいでしょうか。「languishing」は「生気のない、衰えた」という意味ですが、生活がコロナによって低空飛行している状態と言えるでしょうか。「struggling」は、字義通りに「もがいている、悪戦苦闘のさなか」となるでしょう。

それぞれに相当する指数の範囲は、”flourishing”が74%より上、”getting by”が61%-74%、”languishing”が46%-61%、”struggling”が46%未満です。

加えて、アクサは人生の旅路を歩むうえで必須となるライフスキルを10個えり抜きました。そこには、EQ(IQ=知能指数の代わりに感情の成熟度を測る指数)、自己受容、つながり、人生の意義や目的意識を持つ、困難への対応などが入っています。これらの内で、”flourishing”に達するためには8個から10個のスキルを保持している必要があるとしています。続いて、”getting by”は6~7個、”languishing”は4~5個、”struggling”は3個以下を備えているのが目安になるとのことです。

充実感のある人生に必要な10のスキル

その結果は、日本人にとって残念なものになりました。アクサは調査のハイライトとして、各国で調査を受けた人々の現状での生活全体におけるウェルビーイングのレベルを最初に報告していますが、日本の特に低い現状が明らかにされています。

日本は最高の「花開いた」状態に分類された人の割合がどの国よりも低く、13%にすぎません。一方で、下から2番目の「低空飛行」に分類された人の割合は、最多の35%に達しています。また、最低の「悪戦苦闘」もイギリスに次いで多くなっています。

各国のウェルビーイング度の分布

更に、日本ではキャリアの展望に不安を感じている人が11か国の中で3番目に多い割合で存在していました。雇用主が良質なマインドヘルスのサポートを提供してくれていると回答した人の割合は調査対象国で最低でした。前者は経済の景気動向や雇用市場の変化も関係しているので複合的な問題になるでしょうか。日本では、世界でも例を見ない継続的な超低金利政策にもかかわらず、最近までずっとデフレ基調が続いてきました。最近は、生活必需品の値上げが頻繁に報じられていますが、円安や世界情勢の影響が大きく、経済がコロナ禍から反発してのことではく、物価高がもろに家計に打撃を与えることになりそうです。実質賃金も下落の傾向が続き、後者は政府や企業が具体的に取り組むべきアジェンダとして重点化すべきでしょう。

キャリア展望への不安
雇用者からのマインドヘルスサポート

また、日本では友人や家族からマインドヘルスのサポートを提供してもらえると信頼している人が、11か国で最低でした(43%)。一方で、公的なヘルスケア制度がこころの問題を抱える人に十分な支援を行っていると考える人も15%と非常に低い数字でした。今回のアクサの調査では、イタリアも日本と並んでこの数値が低く出ました。両国とも社会・文化や人々の価値観において家族や地域のつながりが重要な位置を占めてきていたことを考えれば驚きの結果です。報告書ではこの2国で家族・友人への依存度が低い理由は説明されていませんが、興味深いところです。

友人・家族からのマインドヘルスサポートへの信頼

また、コロナ禍の影響を最も被っている領域として経済や雇用を挙げる人が多く、マインドヘルスは5番目にランクされました。コロナの蔓延により営業時間の短縮や会食自粛の要請が出され、店舗や企業が経営難に陥ったり働き方が大幅に変化したりしました。未曽有の衝撃の中で喫緊の難題に追われて、自分や周囲の人たちへの精神的な影響までは目が行かないことは十分に考えられます。


これは、個人的な見解に過ぎませんが、もともと日本は伝統的に「こころ」の在りようや生きることの目的や態度が大事にされてきました。人と人、家族や地域のつながりやまとまりも非常に大切なものでした。一方で、それらが因習として個人の自由を束縛する面もあったでしょう。特に戦後になって、個人主義や民主主義に基づく政治や社会が新たに構築されていき、資本主義経済がどんどん発展していく中で、旧来の考え方は色あせていき、人や地域のつながりが希薄化していきました。今、社会の大きな変動が続く中で、抑うつや依存などのあらたな精神的な問題がクローズアップされてくるようになりました。そして、新たなこころの問題への処方箋の探求や、人々が新たに今の言葉や考え方で「こころ」をとらえなおして大切にしていくことがまだまだ過渡期なのかなと思います。言わずもがなかもしれませんが、毎日毎日の生活はリアルタイムにあるものなので、そちらに目が行くのはむべなるところですが、この時期だからこそ今自分がどういう気分でいるのか、この瞬間に幸せや充実を感じていられているか、に意識を向けていきたいものです。幸せの追求は当然の権利です。自分に、周囲に、社会に、「もっと幸せになりたい」と声を大にして訴え、気持ちを行動に変えていきましょう。

注記:

1) 世界保健機関(WHO)のウェブサイトより筆者が和訳

https://www.who.int/campaigns/world-mental-health-day

2022年10月21日閲覧

2) 国連のウェブサイトを参照

https://www.un.org/en/observances/international-days-and-weeks

2022年10月21日閲覧

3) 厚生労働省及び国連のウェブサイトを参照

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/about.html

https://www.un.org/en/healthy-workforce/world-mental-health-day

共に2022年10月21日閲覧

4) 世界保健機関(WHO)のウェブサイトより筆者が和訳

https://www.who.int/campaigns/world-mental-health-day/2022

2022年10月21日閲覧

5) 本記事は全面的に「The AXA Study of Mind Health and Wellbeing in 2022」を参照しています。

アクサ・ジャパンの日本語ニュースリリース

https://www2.axa.co.jp/info/news/2022/pdf/220204_01.pdf

報告書全文(英語)へのリンク

https://www.axa.com/en/press/publications/being-mind-healthy

共に2022年10月21日閲覧

6) 東京新聞Web版2019年8月29日付

<働き方改革の死角>日本、続く賃金低迷 97年比 先進国で唯一減

https://www.tokyo-np.co.jp/article/2179

2022年10月21日閲覧

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