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暮らしを肌で感じられる「福井旧庄屋佐藤家」。日常を維持する大切さと大変さ。

かまどで炊いたごはんの匂いが漂ってくる。

「あぁ、お腹が空いたな」

それまで空腹を感じていなかったけど、美味しそうな匂いに食欲が刺激される。

周りの人たちが慣れた手つきで囲炉裏周りにごはんとおかずを並べる。かまどで炊いたごはん、収穫した野菜でつくった味噌汁、採れたばかりの枝豆。

畑で野菜を収穫して、みんなで朝ごはんをつくって、みんなで食べる。初めましての人が多くてどこか気恥ずかしく、むず痒い気もしたけれど、ごはんを食べ始めるとみんなの輪に入れてもらったような気がして温かい気持ちになった。

これは、新潟市西蒲区福井にある福井旧庄屋佐藤家と近くの田畑で行われている、朝ごはんと農作業のグループ「まきどき村」に初めてお邪魔したときのこと。

日曜朝に6時集合というから、前日から緊張して6時ちょっと前に行ったのに、集合場所にはひとりしかいなくて(笑)。その人と囲炉裏で話しながら待っていると、30分経ち数人、1時間後に数人と、少しずつ集まる人が増えていった。

その日に何をしたかはもう覚えていないけど、たしか畑で作業をして、直売所で地域のおばあちゃんがつくったお惣菜を買って(今はもうないらしい)、朝ごはんをみんなでつくって、囲炉裏を囲んでごはんを食べた。

その後片付けをしたら解散。それでもまだ9時くらいで。日曜日は毎週遅くまで寝ていた私にとって、まきどき村に参加した日だけは休みが長く感じられた。

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その活動拠点ともなっているのが、築250年の福井旧庄屋佐藤家。江戸時代、明治、大正、昭和、平成、そして令和と、歴史が移り変わる間もずっとその場に在り続けた建物だ。

普通、築250年ともなれば、行政や財団法人が関わり、保存活動を行いそうなもの。でも、佐藤家は有志が自主的に保存活動をしている。平成10年に取り壊す話が出たときに、「受け継がれてきた暮らしや文化もなくなってしまうから」と有志が立ち上がり、保存活動を始めたらしい。

そのおかげで、佐藤家には今日も囲炉裏に火が焚かれ、かまどでごはんを炊くことができている。

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古民家は空気の動きがないと、朽ちてしまう。以前、取材で古民家に行ったときも「何十年も使っていなかったけど、大家さんが定期的に窓を開けてくれたおかげで状態を保てていた」と話していた人がいた。それだけ、住んでいない古民家を維持することは難しい。

日常を維持すること。それは新しく何かを始めるのとは違って、目立つ活動ではない。清掃をして、草刈りをしてと維持するにも人手も労力もかかる。多くの人の目には触れないかもしれない。それでも、確実に必要な作業なのだ。

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佐藤家は、今や少なくなった茅葺屋根。材料となる茅が手元にあっても、全面工事で500万円ほどのお金がかかってしまうらしい。その一部、200万円をクラウドファンディングで集めることになった。(詳しい経緯は、詳細ページをご覧ください)

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暮らしを感じられる家を維持する。派手に見えないし、地道な作業かもしれない。でも、先人たちが守り継いできた佐藤家という場をこの場で途絶えさせてはきっといけない。今の子どもたちに、孫たちへとバトンを繋いでいくために。

残り数日ですが、まずは佐藤家を知る輪に、そして興味があれば、支援の輪に加わってくれたら嬉しいです。

いつの日か、佐藤家で一緒に火を囲む日が来ることを信じて。


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