夜に星を放つ
窪美澄 2022年
・あらすじ
2022年上半期直木賞受賞作
・感想
SNSでもよく見かけていて、前々から気になっておりました。今年に入り、私の興味のある俳優さんが紹介していました。そんなこともあって、この本を読んでみたいと思いました。
とても切ない話が多い作品だと思いました。周りにいる人を突如失い、傷ついた者たちが、再び誰かと出会い心をめぐり合わせることができるかという話が集められた小説集です。婚活アプリで知り合った恋人との関係、早世した双子の妹への思い、母を亡くし、日々いじめに耐える中学生、妻と子にひとり置いてかれた夫などなど、それまで続いてきた人間関係が突如途切れ、傷ついている人ばかりでした。「孤独」という単語が一つ上げられるのではないかとも思いました。
その中でも3章の「真珠星のスピカ」はとても印象的な作品でした。どこにでもありそうな家族にいる中学生、ある日事故で母を亡くします。また、中学に入学したころからひどいいじめに遭い、保健室登校を余儀なくされていました。母の死後、その中学生にだけ母の幽霊が見え始めるというお話です。
私がこの立場だったら、絶対に耐えられないだろうなと思いました。友達を亡くした、家族を亡くした、普通に生きていても必ずどこかで経験するものですが、彼女のようにはならないと思います。そういったところに人の温かさを感じ、関わている人を大切にしていきたいと考えることのできる作品でした。
思えば、私は人間関係を少し軽く見ている部分があるように感じます。「今いる人との関係は、これからもずっと変わらない」そういう淡い期待感がずっとあるように感じました。しかし、これまで卒業や親族の死などを通して様々な別れも経験してきました。その中で、人間関係は時として突然終わりを迎えることもあるということも感じるようになってきました。高校生になってからはそういったことを少し意識するようになりましたが、それでもあっという間に月日は流れていきました。4月からの大学生活も一人一人とのご縁を大切にしていきたいと思います。
また、新しい出会いによって自分自身の考え方や価値観が変わることもあるということも同時にこの本は示していると思います。いずれにせよ、他者との関係は、私たちにとって切っても切れないものだと感じました。
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