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本当の責任(短編小説14)

「申し訳なさよりも、感謝の気持ちが勝るかな」

エミが今、聴いてる英会話ラジオで、外国人が発言している。

どうやら、仕事を休んでしまって、同僚に仕事を変わってもらった時の心の動きを語っているようだ。

同じ人間なのに、国が違うだけで随分と考え方や感じ方が違うのだな、とエミはよく感じる。日本人なら、責任感が強く、仕事を休んでしまったら申し訳ない、というところで、休みを取ろうとしないことが大多数だとエミは思うが、その外国人によると、海外では、今日ちょっと気分が乗らない、くらいのことでも気軽に仕事を休むようだ。それでいて、仕事をカバーしてくれた同僚には、感謝こそすれど、特に日本人ほど罪悪感を抱かないのだというのだから驚きだ。

あとその外国人曰く、なぜ今日仕事を休むのか。その理由までいちいち詮索し合わない。それが独立&自立主義の国の仕事の常識らしい。休みたいから休みたい、そんなことを正直に主張できたらば、そして許されるならばどんなにいいだろうか。結果としてストレスフリーで休まなくて済むのではなかろうか。

表向きは、日本人の方が「助け合い精神」が目立つのに、「責任感」という言葉に全てを押し付けて自分たちの首を絞めあっているだけで、実際は自立や独立主義が強い国のほうが適度な距離感で気持ちよくお互いを尊重し合い、助け合い、支え合っているのではなかろうか、とエミは思う。

こういったことも、もしエミが英語を勉強してなかったら、日本の情報しかキャッチできずに、日本の常識の中でしか仕事や人生や自立や責任感や休む、ということをイメージすることができなかっただろうと思うと、少しゾッとする。

それでも今は、日本人としてこの国で生きている自分がいて、その土地や文化の影響は避けられないのもエミはわかっている。

ーそれならばー

意識の中くらいはもっとぶっ飛んで、自由でいよう。

外からの情報や誰かが作った社会や固定概念に首を絞められるのを
自分で自分に許している責任の方が重大だ。

いつだって今この瞬間から
真っ白な意識で生きていく自由を楽しもう。

そんなことを海の外の国が感じさせてくれるのだった。

おしまい

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