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華の男

目を覚ました男は、そのまま、私が撫でようとした右腕を掴んだ。

少し太い眉に、カッと見開いた目。

少し垂れ目だけど、怒っているような、パッチリしている。それよりも、左右の黒目の色が違う。片方は、真っ黒で、もう片方は、黒っぽいが紫檀のような焦げちゃだった。

鼻筋はスラっと長くて、高い。でも、おでこから鼻にかけてと、右頬から顎にかけての傷が目立つ。

綺麗な山形の上唇が、動いた。

「何すんだ。」

そりぁこっちの台詞と言いたいけど、撫でようとした私も悪い。

強く掴まれた右腕、下手して離そうとしたら骨が折れそう。それくらい力があった。

「ご、ごめんなさい。」
思った以上に声が出なかったので、やばいと感じた。

少し太い眉を顰めて、男は私の腕を離した。と、その途端左腕を上げたので、殴られると思った。

「ふぁ〜。」男は左手で頭をボリボリと書きながら大きっな欠伸をした。ライオンか、熊か、狼か、本当に獣みたいな人だな。

「あんた、俺の体拭いてくれたのか?」

「あ、はい。」

男はふーんとした顔で、私がかけた毛布をしげしげ眺めている。

何なのだろ、このやり取り。自分で自分の昨日の行動思い出したら、普通はまともではない。早く、助けか警察に電話するべきだった。

「ま、ここで一晩休ませてくれたから、その礼は、はっ、はっくっしょっん。」
よく、男あるあるの特有のデッカいくしゃみ声で私もビクッと震える。流石に隣の人も気づいたのではないか?

 「やっぱ、まだ、服は生乾きか。」
男はボソッとそう言いながら、着ていたボルドーのカッターシャツをおもむろに脱いだ。

私は、くしゃみ以上に、その男の身体を見てビクッとした。

想像以上に、ムキッとしている腕と胸。いや、それよりも、胸や腕、深紅やピンクの薔薇、白百合、桜、梅、桔梗の花々の刺青が艶やかであった。

まるで、この男自身が花。

『きれい。』

普通、もうここまでくれば悲鳴をあげてその場から逃げるのだろうが、思わず見惚れてしまって動けない私がいた。

「ハンガーってこれか?少し借りるわ。」

壁に使ってないハンガーで、器用にシャツを干した男は、思いっきり、背伸びをした。

そのまま、まだ、座り続けている私の正面に座った男は、少し首を傾げる。

「おい、大丈夫か?顔赤いぞ。眠れたんか?」

いや、あなたが私の足掴んだから、その場で寝るしかなかったんですけど。

そう言いたかったが、急に男が私の右腕を掴んだっと思ったら、デッカい胸に引き寄せて私を抱いた。

「えっ、、、はっ、ちょつ、、、。」

「お前、薔薇が好きなんか?部屋中、薔薇の香りするし、お前の頭からも、なんか甘い花みたいな香りがする。」

あーいい匂いっと言わんばかり、上半身刺青裸の男は私を抱いたまま、私の頭吸い?をする。

あなたの胸に描かれている真っ赤な薔薇の方がすごいんですけど。
と言いたいところだが、男の剛力で、どうしても私は抵抗もできないまま、ただ、頭をなでられながら、デッカい胸に顔を埋めるしかなかった。

夢なのか、よく分からないが、少しぼんやりしていたが、何となく、男の胸から仄かな鉄の匂い、いわゆる血生臭いが感じた。



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