「みんなではじめるデザイン批評」を要約してみた
こんにちは。おなつです。
今回は「みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド」(著:アーロン・イリザリー ,アダム・コナー)を読みました。
この本は、仕事や社会生活の中でもっとうまくフィードバックができるようになるにはどうすればいいか、という著者の思いから生まれました。
タイトルには「デザイン批評」と書かれていますが、実際にはデザインのみでなく、全てのレビューをおこなう立場(ディレクターや、エンジニア・管理職・CS・または発注者)にある者に通ずる書籍です。
「目標達成をするために、チームのコミュニケーションをより良くするための手法」が書かれた一冊となります。
このように書くと、なんだか自分も当てはまるな…と思えてきますよね。
本書から、各章ごとに業務に活かせそうな部分とざっくりとした要約をお伝えできればと思いますので、どうぞお付き合いください。
著者について
第1章:批評を理解する
まず最初に「批評」という言葉について説明します。
「批評」とは、何か物事や作品、行動、考え方などについて、その良い点や悪い点を評価し、意見を述べることを指します。これは、何かを評価し、その良いところを認めたり、改善点を提案したりすることを含みます。
フィードバックには反応・指示・批評の3つの形があります。
反応
直感的で感情に支配されたフィードバック。個人的な期待や反応・価値観に突き動かされている。もしくは相手がどんな発言を期待しているか分かった上で褒めるのみとしている。
上記2つはデザインが目標達成するために機能するかどうかを理解する上での有益性は限られます。
指示型
助言や提案のみで終わってしまう。ソリューションがこうあるべき、など、自分の要望に沿ったデザインにしたいと考えている。
批評
ここで改めて最初に説明した「批評」です。
本書で伝える批評は、デザインしたものに対して、定められた目標や目的を実現する機能があるかどうかを問うための批判的思考(デザインしているものをそれを作る目的に照らして検討すること)を用いた分析です。
自分も業務で反応型だったな、指示型だったな、もしくはその逆をされていたなと思い返すこともあるかもしれません。
批評を会話に取り入れることで、より目標達成に近づくことができます。
第2章:批評とはどのようなものか
この章では批評における心構えについて記載されています。
批評には2つの立場があります。
・与える側:批評する人。デザインについて批判的思考し、考えを述べる。
・受ける側:批評される人。批評の中で取り上げられた情報を受け止め、検討し、行動を起こす
受ける側・与える側双方が「デザインの要素が製品(サービス)の目的のために機能しているかどうか」を理解しようとする心構えが必要です。
与える側
与える側の心得です。
悪い批評の例が以下になります。与える側は一度振り返ってみましょう。
・自己中心的:自分の思い通りにしたいと思っていないか
・タイミングが悪い:相手のタイミングを見計らおう
・説明が足りない:内容をすぐに行動に移せるような説明をしよう
・好みに基づいている:偏った考え方をしていないか
逆に、以下のように行動すると良いでしょう。
1.質問で始める:相手の考えに興味をしめそう
2.フィルターを通そう:最初に抱いた感情を忘れず、その理由を検討したら必要に応じて話し合おう
3.思い込みをしない:選択の裏にある考え・制約を知ろう。思い込みを避けるために「質問」をしよう。
4.押し付けない:コミュニケーションをとりながら、デザインについて話してもいいかと話してみよう。
5.長所について話す:短所だけでなく、肯定的な部分についても話そう。
6.視点について考える:自分の専門知識とユーザーの視点とのバランスを取ろう
受ける側
受ける側の心得です。
まずはしないほうがいいこと。
・聴く気がないのにフィードバックを頼むこと:依頼するのであれば、どんな反応も聴く用意をしておこう
・本当は賞賛や承認が欲しいというだけでフィードバックを求めること
・フィードバックを求めない
逆に、行動すると良いこと。
1.目的を忘れない:常に改善の余地があると思っておこう
2.聴いて、考えてから反応する:最後まで人の話を聴いてから、よく考えて反応しよう
3.基本に戻る:見当違いなFBを受けた際は、最初の目的に戻ろう
4.参加する:自らも批評者になろう
批評は何かを判定することではなく、理解と改善のためにおこなうこと。
双方がその意識を持って取り組むことをこの章では説明しています。
第3章:文化と批評
この章では良い批評を生み出す組織文化の育成について書かれています。
批評が成功する組織の文化において、最も重視しなければならないのが協働とイテレーションです。
協働:複数の人や団体が共同で働き、協力して何かを達成しようとすることを指します。これは、協力して仕事をする、プロジェクトを進める、または目標を達成する際に、一緒に取り組むことを意味します。
イテレーション(反復):何かを何度も繰り返して試したり、改良したりすること。最初に何かを試し、それから何度も試行錯誤して改良し、段階的に進歩させる方法です。少しずつ進化させながら、目標に向かって進むことができます。
個人の経験や文化によっては、上記2つの障壁となる要因を自分で作り出している場合があります。
たとえば「気の利いた頃が言えないなら黙っていろ」というような育ち方をしていれば批評で誰かの感情を害したくないと思ったり、批評を受ける側から怒られたくない、と控えてしまうこともあるでしょう。
批評は相手のスキルや経験を批判するものでなく、相手の作っているものが定めた目標に向かって進んでいるかどうかを分析するプロセスの一部です。
対象方法としては以下となります。
1.まず期待を設定しよう。
2.批評に参加することがわかっている人とコンタクトをとり、会話をしよう。以前の批評経験を教えてもらうのが良い。
3.理解の違いに目を光らせよう。
協働とイテレーションを繰り返し、練習することで障壁となる文化を変えることはできる、とこの章では伝えています。
第4章:批評をプロセスの一部にする
この章では批評をプロセスに組み込む方法が書かれています。
デザイン・プロセスに組み込む際のポイント
・スタンドアロン型の批評
批評だけを目的として行われるミーティング、またはディスカッション
・協働活動
特定の課題を解決するために複数の人々が同時に協力する活動(ワークショップなど)
・デザインレビュー
デザインに関する承認・合意を目的としたミーティング。プロセスの最後となるため、情報を得るためのディスカッションである批評と切り離すのが望ましい。
上記を行う際は以下の3つを覚えておくと良いです。
1.スタートは少人数で:人数か多いと管理が難しくなるため
2.話す前に考える:言われている内容を理解し、聴くことが最も重要
3.参加者は慎重に選ぶ:すべての人が批評に向いているわけではないため
第5章:批評のファシリテーション
この章ではファシリテーション方法について記載されています。
批評をおこなう際の基本的なルール
・誰もが平等:「リーダーの意見が正しい」というのは本質的な間違いである。他の参加者も自分も平等であるという認識が必要。
・全員参加:その場にいる全員が批評に参加しよう。
・問題解決を避ける:批評の目的はデザインの分析
・決定を急がない:急ぐと説得力のあるアイデアを得る機会を逃すことも
進め方
・チーム外メンバー含む、最も相応しい参加者を選ぶ
・セッションをおこなう方法を参加者に伝える
・目的を説明する
・プレゼンテーションは手短にかつ効果的に
・制約について話すときは慎重に
第6章:扱いにくい人々、やっかいな状況
他者と物事を進めるとき、コミュニケーションにおける衝突や不満は良くあることです。
そこに対しての対処法をこの章では述べています。
・フィードバックがすべて適切で実行ができるものとは限りません。
・受け止めることが苦手な人(批評を受ける側)にフィードバックするときは、作業結果や批評のイテレーティブな側面についてのみ意見を述べて、強みと欠点のバランスをとった会話をすると良いです。
・第1章にて説明した、反応型・指示型フィードバックをうまく活用するには「なぜ?」と聴く必要がある
・こちらが提示したデザインに対して、代替デザインを送ってきた場合、一歩引いてこちらのデザインとの違いを分析した上でディスカッションを行う
・すでに作成済みの目標、ペルソナ、シナリオ、原則などを会話の焦点に
・会議で扱いにくそうな人が参加する場合、事前にコミュニケーションをとっておくと良い
コミュニケーションこそ、批評の核となります。
よく質問し、相手をよく知ることも大切です。
正しい軌道に戻す際には、会話の焦点を「目的」に当てると良いです。
最後に
第7章はサマリのため、省きました。
巻末に「批評をダメにする10の悪しき習慣」が書いてあるので、それを紹介します。
反応する(じっくり考えず、思ったことだけそのまま口に出す)
自己中心的になる
自己防衛的になる
基盤が異なる
焦点があっていない
機能していないことにだけ注目する
ディスカッションが行われない
参加しない
問題を解決しようとする(分析の最中に問題解決に切り替えてしまう)
批評とデザイン・レビューを混同する
こんな人もいるな、自分がそんな場面もあるな、とも思えませんか?上記の10個を気をつけよう、と思えるだけでも本書は読む価値があると感じました。
最初にも書いた通り、本書はデザインについて書かれていることですが、全ての批評をおこなう立場の人に通じます。
私自身も社内でデザイナーに依頼することもあれば、フィードバックをおこなうこともありますが、本書に書かれている避けるべき行動にドキッとさせられることもありました。
完璧にはできずとも、少しでも頭の片隅に置いて業務に向き合いたいと思います。
そして何より、本書は「今あるものをさらによくして、目標達成に向かう」ための一冊です。
当たり前のことですが、改めて目標達成のために「正しい批評」を「相手への敬意と尊敬」を持っておこなおうと思いました。
やはり、目標達成に向かうのも、サービスを維持するのも「人」であることは変わりありません。
日頃からの関わる人たちとのコミュニケーションを大切にして、自分自身の批評スキルを実践ありきで磨いていきたいです。
がんばるぞー!
以上、おなつでした♪