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【読書要約】市ヶ谷弘司「空調服™を生み出した市ヶ谷弘司の思考実験」

市ヶ谷弘司 「空調服™を生み出した市ヶ谷弘司の思考実験」 (株)クロスメディア・パブリッシング


発明品
今まで無かったもの 誰も考えつかなかったもの
そんなものを見ると
「いったいどこから、この発想は出てくるんだ?」
って不思議に思いますよね。
逆に
「何でこんな簡単なことを思いつかなかったかなあ!」
と悔しかったり。
どうにもこうにも、他人の頭の中というのは、気になるもの。

これは発明家が、頭の中身を大公開してくれちゃった本。
「考えること」を考えてみた。


1 思考するには

・情報化が進んだ現代では、「考える」ことなく「調べる」だけで物事を済ませてしまう

調べて得られる、効率化されたノウハウは素晴らしいものではあるが、試行錯誤を切り捨ててはいけない。
考えることで発見できるかもしれない、新しい可能性に気づくことがない。

・俯瞰して物事を考える

事象を理解し、目的を明確にするために。
ただ、俯瞰しすぎてあまり大事になると、個人の手には余ることも。
地球温暖化問題を個人で考えることはできるが、解決策が地球に日傘を差すでは、実行不能である。
個人が出来るレベルまで、小さく分けて実現可能な策に落とし込まなければならない。
そこから思考して生まれたのか空調服™。

・先入観、思い込み、前提条件を疑ってみる

意外な方向から思いがけない解決策が見つかることがある。


2 思考の基盤

思考とは、既知の事柄の組み合わせや、積み重ねによって物事を解明していく方法。
したがって、その土台として情報や知識は絶対必要である。

また、情報の理解の仕方は、人それぞれ違う。
仕入れた情報をどう理解するか、それにどう表現するかで、同じ情報でも意味合いが変わる。
例えば、円周率。
円周率をπと書くか。およそ3で済ませるのか。
3.1415・・・・・・と書くか。
はたまた、無限に続く円周率をコピー用紙にだーっと印刷して、紙の枚数で表すか。これをさらに重量に直す(紙1枚=1g換算)と、無限に続く円周率は地球より重いことになるw

3 思考で未来を予測する

「どうして、そう理解したのか」
根拠や基準、エビデンスを自覚しておくことも、思考には大切なこと。
自分自身を理解するため。
他者に理解してもらうため。
他者を理解するために。
問いの立て方や、問いの解釈によっても、導かれる思考はこれまた変わるのだ。

・2つの原理

物事に影響を与える条件や原因は2つに分けられる
①小さな原理・・・前提条件が多数あって決め事が細かい。限定的な場面でしか通じないもの。
②大きな原理・・・前提条件が少なく決め事がおおざっぱ。
むろん、筆者が重要視するのは②大きな原理である。こちらのほうがより不変で揺るぎない、世界の法則と言えるものだから。未来を予測するにも不可欠なものだ。

・脱物質化――未来のキーワード

これまでに発見された②大きな原理――法則や文明といっていいもの――は、人に伝え受け継がれてゆく。
そのためには情報記録媒体が必要である。
かつては岩に文字が刻まれ、紙になり、今電子データに置き換わっている。
どんどん軽く小さく。
「脱物質化」
これが未来技術のキーワード。

・2つの技術

脱物質化の観点で技術を2つに分けると
①脱物質化しやすいもの・・・情報産業、遺伝子操作技術
②脱物質化しにくいもの・・・物質として頑丈さや堅牢さ、物理特性が要るもの。原子炉、建物など。
このうち①は技術革新が進みやすく、物理的限界がある②は進みにくい。
例えばスマートフォンで写真を撮るにも、カメラのレンズは②脱物質化しんにくい。光を集めるにも屈折させるにもレンズの厚み、大きさが要る。
片や、レンズを通過した光を受信し電子データに変換する情報処理は、①脱物質化しやすい技術。これからもどんどん進歩するだろう。

4 結果←原因

・人は、ある結果には必ず原因があると知っている

その原因が人為的に操作可能なら、より望ましい結果を得ることができる。
そこで思考の出番である。
結果に影響する原因を考え、検証するのだ。

・人の意志が行動を決める。行動により未来が変わる

最初はごく小さな影響であっても、時間が経つにつれ影響は次第に大きくなっていく。
では、人の意志はどう作られるのか。それは、その人の考え方や感じ方によるものである。

5 思考実験は楽しい

思考の土台となる知識がたくさんあれば、未来のこと未知のことを予測できる。
一方で、知識が、予測を狭め縛ることも事実。

・思考実験あれこれ

タイムマシンは作れるか。SF的乗り物型は無理でも、コンピュータ上に人格を移したら疑似時間旅行ができる?
火星にものすごく小さなブラックホールをぶつけたらどうなるだろう。ブラックホールをどうやって火星まで持ち運ぼう?

・無駄なものに潜むもの

もちろん、「出来っこないんだし、そんな思考実験とか無駄じゃん」という人もいるだろう。
だが、この無駄に思えるものこそ、筆者が大切にしているもの。

情報化が進んだ現代で、検索ボタンひとつで出てくる情報の、表面的なことの、その下に。
水面下には、未来への影響力が隠れている。
それを見つけ出し、考えるのは人間の役目だと。

6 「思考」が成すこと

より具合の良い環境に変えようと、人は思考によって自然を克服してきた。
すでに”表面的には”自然を克服した、と言えよう。
一方で、人の動物的な部分は、水面下でさまざまな小さな原理でコントロールされている。
暑い寒い。これまでの経験、受けてきた教育、感じ方。考え方。
水面下のものがほんの少し表面に出れば、人は変わる。
人が変わって、社会が変わる。
水面下のものを表面化させるのが「思考」である。


読書感想

ときおり挟まる本人エピソードが、なにやらカワ(・∀・)イイ!!
「他人が何を考えているのか知りたいと思うのは自然なこと。奥さんの機嫌が悪いときにその原因を予想して考えてみたりもしますが、見当違いのことをいって余計に怒らせたりすることもあります」(本書抜粋)
下町を散歩してる気の良さそうな、ふっつーーのおじさんぽいw。
だが、書籍後半では高度な思考展開でさすがの発明家ぶりを見せつけてくれる。
立ち飲み居酒屋で隣で飲んでいたおじさんが、実はアインシュタインだったと後から気づいたような気持ちだ。

せっかくある頭。
それも、コンピュータが出来ないことが出来ちゃう超高性能情報処理器官。
使い倒さなきゃ勿体ないね。

頭の中を見てみたい度 ★★★★★/5点
理系 ★★★☆☆/3点
おじいちゃん萌え ★★★★☆/4点

#ビジネス書が好き

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