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知っているようで知らない『THE NORTH FACE PURPLE LABEL』

知っているようで実は知らないファッションのこと。

聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥。

しかしファッションのこととなると一体誰に聞いたらいいものか。

本来であればそんな時に助けになる販売員だが、ひとたび店員に聞こうものなら、インターネット顔負けの情報の濁流を浴びせられたのち、必要のない買い物をして店を後にする、なんて想像をしてしまう方も多いのではないだろうか。

近年、冬のストリートシーンの正解とも言える程に支持を得ている『THE NORTH FACE』。世界三大北壁を意味するあのお馴染みの三本ラインのロゴを見ない日は無い程、その機能性と高いコストパフォーマンス、クラシカルなデザインが、若者を中心に人気を博している。

そんな爆発的な人気を見せる『THE NORTH FACE』とは一線を画し、オーセンティックを愛するファッション玄人から『THE NORTH FACE PURPLE LABEL』だ。

見たことはある、名前も聞いたことがある、けど詳しくは知らない。

知らぬは一生の恥、知れば知る程ファッションは楽しみが増すものである。

前述したブランドロゴはそのままに、首元に縫い付けられた紫色のタグが目印となった、日本のアーバンアウトドアウェアブランドの『nanamica』とのコラボコレクションである、通称”パープルレーベル”は、ハイクオリティなアウトドアウェアを作るTHE NORTH FACEに対して、そのクオリティをタウンユースに適したデザインに落とし込んだラインとして位置づけられることが多い。

しかしタウンユースという一言では、パープルレーベルの魅力を表すには少々心許ない。

nanamicaとはノースフェイスの商標権を持つゴールドウィンで働いた経歴を持つ本間永一郎氏と、今木高司氏によって03年にスタート。その後に本間氏と元同僚のスタッフによって立ち上げられたのがパープルレーベルである。

パープルレーベルにおいては、本間氏が社長、今木氏はデザインディレクターを担当。レトロなアウトドアウェアと評されることの多いパープルレーベルのデザインは、今木氏が過去に憧れたアウトドアやミリタリー系のアイテムからインスパイアされることが多い。

例えばパープルレーベルスタート時からブランドの定番としてリリースされているステンカラーコートは英国製のゴム引きコートをベースに、シルエット、素材をモダンにアップデート。

またもう一つのアイコンでもある「65/35マウンテンパーカ」は70年代にリリースされていた本家ノースフェイスのマウンテンパーカのデザインを忠実に再現している。

素材に用いられているのはノースフェイスが独自に開発したベイヘッドクロス。ポリエステルとコットンを65:35の割合で使った生地は、コットン特有の柔らかく親しみやすい風合いながら、高い撥水性を兼ね備えた、ハイテク素材が開発される以前に作られた、当時のハイテク生地である。

ストリートのアイコンであるノースフェイスとの最も大きな違いは、着てくれる人に合わせて仕様を変更することで、結果的にファッションを愛する玄人層から普遍的な支持を獲得し続けている点にある。

デザインディレクターである今木氏曰く「ブランドは着てくれるお客様と一緒に作っていくもの」。そもそも「nanamica」というブランド名は「七つの海の家」からきており、誰にとっても着やすいニュートラルな存在でありたいという思いを表している。

一部のヴィンテージファンからは「作っているアイテムは良いけど着られるものはない」とブランドのゆったりしたシルエットに対してネガティブな意見をもらうこともあったと言うが、より多くの人に着て欲しいという今木氏の考えの下、ニュートラルな服作りを続けている。

だからこそいつの時代においても、その時代の気分にマッチした、多くのファッション玄人が来たいと思うアイテムをリリースし続けられるのではないだろうか。

知っているようで実は知らないファッションのこと。

『THE NORTH FACE PURPLE LABEL』でも21秋冬コレクションが立ち上がり、今シーズンも各セレクトショップとの別注アイテムがリリースされている。普遍的であり今の気分にマッチするデザインに、独自のエッセンスがプラスされたアイテムを、是非チェックしてみてはいかがだろうか。

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