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大切な人の死

私には大切な人がいる。けどその人とは会ったことがない。
その人の名前はりゅうくん。りゅうくんとはネットで知り合った。
出会ったのは2020年8月。その時私はニートだった。うつが酷かった時だ。
毎日のように電話していた。当時私は不眠が酷く、眠剤を飲んでも夜眠れなかった。朝日が昇った頃にようやく寝る生活を送っていた。
そんな時、りゅうくんは毎日寝落ち通話をしてくれた。眠れない夜というのは本当に孤独で寂しくて怖い。だからその寝落ち通話は私にとってとてもありがたかった。話してるうちにりゅうくんは寝てしまうのだけど、寝息が聞こえるとひとりじゃないと思えた。

当時の私はうつが酷く毎日死にたい、そんなことしか考えてなかった。
その死にたいをりゅうくんにぶつけてしまうことも多々あった。
りゅうくんは本当にやさしい人で優しく受け止めてくれた。

「死にたい」と言うとりゅうくんはどれだけ辛いのか泣いてて伝わってきたよ、毎日頑張ってるの分かってるよ。と言ってくれた。
「もう1人だなんて思わなくていいよ。病気に関して全部ではないけど、理解してる、理解しようとしてる。俺が分かってるから大丈夫だよ。」
この言葉に号泣した。

「ひかりには幸せだなって思える瞬間を味わって欲しいんです、どれだけいいのかを知ってほしいんです。
今は暗いことしか頭にないと思いますがひかりは悪いことしてません、責められる必要も無いんです。もっと褒められるべきだしひかりは毎日生きてて偉いですよ。」
なんて優しい人なんだと思った。

ある日、こんな会話をした。
私 薬飲んでも寝れなくて、それもつらい

り それは向き合っていくしかない、大丈夫支える。
  ちゃんと理解するから。

私 誰も理解してくれない、なんで私がうつ病にならなきゃいけなかったの。私がなにしたの。普通の生活がしたかった。

り 少しずつ理解する。なったからには仕方ない、これからは普通の生活一緒にしよ、幸せを味合わせる。

私 本気で言ってる?それ付き合おってことだよ?

り 本気で言ってる、付き合おう。


私はりゅうくんがここまで考えてくれてたことにびっくりした。
でも私は告白を断った。会ったこともない人と付き合うのが想像が出来なかった。でも今の私は付き合わなかったことをとても後悔している。

ある日、私はODをして入院することになった。
そのことをりゅうくんに伝えたら俺も入院するかもと言われた。
なんで?と聞くと多分白血病なんだよね、それの検査入院。と言われた。
なってたら治療はしないな、苦しい思いして治療するなら好きなことをやって死にたい。それで幸せ。そう言っていた。
分からなくもなかった。でもりゅうくんには生きていて欲しい。
置いていかないでと私は言った。

ある日、私たちは会おうとした。会う約束をした。
でもその前日、りゅうくんは心臓が痛くて救急車で運ばれた。会う約束は無しになった。
りゅうくんは前から心臓が痛いとたまに言っていた。
会えなくてごめんね。
また予定立てよ。
そんな会話をした。

この時の私たちは共依存だったと思う。

ここまで毎日のように電話していたが当時のりゅうくんは高校3年生。就活の時期だった。

りゅうくんは就活に加えて自動車教習所に通い始めた。
忙しくて電話できない日が増えた。

そして内定を貰って、免許も取って春からりゅうくんは新しい生活が始まった。

電話する頻度はどんどん減っていった。

私も少しずつ鬱が良くなっていって韓国語教室に通い始めた。

そうして2人の距離は少しずつ離れていった。

たまにLINEして近況報告する。そんな感じだった。

ある日、りゅうくんに彼女が出来た。
少し悲しかった。

それからあまり連絡を取らなくなった。

しばらくして最近どう?とLINEしたら
もう結婚だよ。と言われた。
私はとてもびっくりした。りゅうくんが結婚?
あまりの衝撃に言葉が出なかった。悲しかった。
でも私はおめでとうと言った。りゅうくんが幸せならそれでいいと思った。
「私が鬱が酷かったときりゅうくんがいてくれて助かったよ。あの時はありがとう。ほんとに幸せになってね。」そう言った。

それから3ヶ月が経ったある日のことだ。
その日私はふとりゅうくんのことが頭に浮かんだ。
そして今までのりゅうくんとの思い出がぶわーと浮かんできて泣いてしまった。あの時私はりゅうくんに依存していた。そんなりゅうくんが結婚してしまう。涙が止まらなかった。私はりゅうくんに電話した。出なかった。でもその後どうした?とLINEがきた。

私 久しぶりに電話してみただけ

り なんかあったんでしょ?

私 なんもないよ!ただりゅうくんのこと思い出して

り 何思い出したん?

私 んー2年前とかのこと

り まだ好きなん?

私 好きというより依存してた、

り そんなに?今はさすがに大丈夫?

私 だって鬱が1番ひどくて辛かった時にずっと寄り添ってくれたじゃん
大丈夫だよ

り まぁーね、あの時は俺も依存してた
ほんとに大丈夫?

私 なんの涙かわかんないけど涙出てる

り 泣かないで。明日の昼間とかできる?

私 できる

り その時しよっか、明日が最後かな。そっから入院だから

私 入院するの?

り するよ

私 死なないよね?

り これってほんとのこと言うべき?

私 本当のことききたい

り もう心臓が痛くてね、前に話したと思うけど。
それで病院に行って少し入院って形になったの
その入院で変わらなかったらもう移植しないとそんなに長くないって

私 そんな...

り ちょっと前も運ばれてね、それでも家に帰りたくて
今のところ移植する予定もないし
最後を来るのを待つってだけかな

私 なんで?移植すれば助かるんでしょ?

り 助かる。でももっと未来ある子に使ってほしいから

私 ねえ何言ってんの、りゅうくんだってこれからなのに、、
結婚するんでしょ?子供作って幸せな家庭築いてよ

り もう終わりよ、結婚はやめたの。辛かったけど相手の幸せを遠くから祈りたい

私 そんな、、りゅうくんには幸せになってほしいの。

り 俺は十分幸せになれたよ、心の底から言える
ひかりもありがとね

私 ねえやだよ、しんじゃやだ

り 大丈夫、もっといい人だっているし
一応移植なしだったらどのくらい生きれるかがまだわからない

私 わがまま言ってもいい?

り いいよ

私 せめて一度くらい会いたいよ

り 会えるかな
会ったら離れられなくもなるし忘れなくなるでしょこのまま綺麗な形で終わった方が辛くなくない?

私 そうかもしれないけど...

り きっと会わない方がいいかも。会いたいけど

私 つらすぎる

り 辛いけどがんばろ。俺もできるだけ生きるから

私 生きて死なないで

り 生きるよ、死なない

私 会いたいよ...

り 戻ってくれば会えるさ

私 戻ってきてね

り 戻るよ、必ずとは言えないけど
どんな形でも家には戻る

私 入院したらさ私がその病院行けば会える?

り 面会ができないかな

私 入院しちゃったらどうしたっても会えない?

り 退院するまでは

私 そうなのか

り コロナがあるからな

私 そっか。なら尚更元気になって戻ってきてもらわないと

り もっと強くなって戻ってくるぜ!

私 さすがりゅうくん

り 俺が負けるわけないだろ!

私 かっこいい

り だろ!待っててな!

私 待ってる!

そしてこの日はこれで会話は終わった。
私はこの会話をLINEでしながら大泣きしていた。
虫の知らせってほんとにあるんだ。
大切な人が死んでしまうかもしれない。
あとどれだけ生きれるかわからない。
その現実が受け入れられなかった。
それからもずっと泣いていた。

りゅうくんには未来がある。これからなのに移植はもっと未来ある子に使ってほしいなんて。りゅうくんは優しすぎるよ。

夜中、今なら少し出来そうとLINEがきた。
私は恐る恐る電話をかけた。

私 久しぶり

り 戻ってくるから大丈夫だよ。戻って来れなかったらごめん。

私 私りゅうくんに出会えてほんとによかった。

り 俺もよかったよ。ありがとう。

私 ありがとう。私頑張るからね。

り 見守ってるから。

私 今は2年前より楽しいしやりたいことも出来たよ。
だから頑張るからりゅうくんも頑張って元気になって退院してね。

り 頑張るよ。
学校頑張って卒業してね。ゆっくりでいいからね。
慌てず自分のペースで。
卒業したら卒業証書見せにきてね。

私 うん
それとね、今ネイリスト目指してネイル検定の勉強頑張ってるの。

り そっか、頑張ってね。それも受かったら見せてね。
絶対受かるさ。

私 応援しててね

り いっちばんに応援してる。

私 ねぇりゅうくん、大好きだったよ。

り 僕も1番に大好きだったよ。

明日もあるからそろそろ寝ようかとりゅうくんが言って私たちはおやすみをした。

電話が切れた後、私はずっと泣いていた。

次の日、また電話した。
昨日の電話のあと、心臓が痛くなって病院に行ったらしい。
年は越せないだろうと医者に言われたらしい。
私はこれが最後の電話になると思い、何度も感謝を伝えた。
そして最後の電話を終え、りゅうくんは入院先の病院へ向かった。

コロナがあるから面会は厳しいと言われた。だけど看護師さんに無理を言ってお願いすればいけるかもと。正直私は迷った。

「会ったら離れられなくもなるし忘れなくなるでしょこのまま綺麗な形で終わった方が辛くなくない?」
りゅうくんに言われたことがわたしを迷わせた。
確かに会ってしまったらそれでほんとにりゅうくんが死んだとき
私は立ち直れないと思った。それが怖かった。
りゅうくんが会いたいって言ってくれるなら会いに行きたいと伝えた。
そしたらりゅうくんは会いたいと言ってくれた。
自分のことは後回しのりゅうくんが会いたいと言ってくれた。
それが嬉しくて私は会いに行くことを決めた。
入院している病院まで片道4時間。23日に行くと約束した。

6月20日、りゅうくんからLINEがきた。でもそれはりゅうくんのお姉さんからだった。
「昨日の夜に容態が急変してICUに運ばれました。今は、人工呼吸器に繋がれて一命を取り留めている状態です。」

そして次の日、授業が終わってスマホを見ると
「昨夜、0時42分に旅立っていきましたことをご報告させていただきます。
関わって頂いたことに大変感謝しております。」
とLINEがきていた。

りゅうくんが死んだ。

りゅうくんが死んだ?私はその時学校にいたのもあってなにも考えることが出来なかった。涙もでなかった。私は急いで帰った。そしてもう一度LINEを見返した。りゅうくんが死んだ。その事実は変わってなかった。しばらくして涙が出てきた。そして気づけば号泣していた。

次の日から私は忙しく過ごした。りゅうくんのことを考える時間がないくらいに。

私は1年経った今でもりゅうくんが死んだことを受け入れられてないのかもしれない。

りゅうくんが死んで1年が経った。私はりゅうくんが死ぬと知った日から今日まで何度も沢山泣いた。私はいつまで後悔と共に涙を流せばいい?
これは愛だろうか。依存だろうか。

ねえ、りゅうくん。私は本当にりゅうくんの一番になれたのかな。
結婚しようとしてた彼女さんよりこんな私のことが好きだった?
そんなわけないって思っちゃうよ。
私があの時告白を断らなかったらどうなってたんだろう、りゅうくんの彼女に、お嫁さんになれただろうか。りゅうくんが死ぬ運命が変わらなくても私はりゅうくんのそばを離れないよ。

もし、私がうつ病じゃなくて、りゅうくんが元気な体で、そしてネットじゃなくリアルで出会える世界線があったなら私たちは二人で幸せになれただろうか。

私はりゅうくんの何かになることは出来たのかな。
私にとってりゅうくんは名前を付けることができない関係で大切な人だよ。
りゅうくんにとって私はどんな存在だった?

これからどれだけりゅうくんのことを想っても想いは返ってこない。
私の想いは一生一方通行なのだ。死んだ人と会話は出来ない。
そんな当たり前のことが怖くて涙が出る。

私は卒業証書をりゅうくんに見せる約束をしたのにその約束は守れない。
りゅうくんが死んだあとりゅうくんのお姉さんにお墓参りに行かせてくださいと頼んだ。最初はりゅうも喜ぶと思います。と言ってくださっていたが、気づいたらLINEをブロックされていた。

私はりゅうくんが死んだあとも会うことを許されなかった。
ごめんね、約束守れなくて。

私は後悔ばかりが残ってる。あの時告白を断らなければ。
ああすれば、こうすれば。りゅうくんを思い出して涙が止まらなくなることもたくさんあった。でも出会ったことを後悔はしてない。

りゅうくん、私と出会ってくれてありがとう。
りゅうくんに出会えて私は幸せです。
世の中にはこんなに優しいひとがいるんだって知れた。
私がどん底にいたとき、りゅうくんが傍に居てくれたから今の私がある。

私は弱いからりゅうくんの後を追おうと考えたことも沢山ある。でもりゅうくんはそんなことを望んでないことも分かってる。だから頑張って生きるからお願いがある。
夢に出てきてください。私たちは夢の中でしか会えないのだから。会いに来て。

わたしはりゅうくんのことを忘れない。
天国で見守っててね。




このnoteを書いてから5か月が経ったある日、りゅうくんと出会ったツイッターのdmに「違ったら申し訳ないんですが、りゅうの知り合いの方ですよね?」ときていた。私は心臓が止まりそうだった。
色々話を聞くとその人はりゅうくんの幼馴染だそう。
りゅうくんのお姉さんから私を探してほしいと頼まれたらしい。
お姉さんに嫌われたと思っていたが、その頃沢山の人からLINEがきて手一杯になってしまい、みんな消してしまったそう。
そして私は、またお姉さんと連絡をとることができた。そしてお墓参りも行かせてもらえることになった。
幼馴染の人に私のことはりゅうくんから聞いたことあったんですか?と聞いてみた。
いつもあなたの話をしてましたよと。
私は後悔してることを幼馴染の人に話した。
彼女がいたことは知ってるけどあの時告白を断らなければってずっと考えてるんですと。
すると幼馴染の人は、りゅうは最後まで彼女はいませんでした。嘘をついていたんだと思います。あなたが他の人と幸せになれるように。と言ってきた。
私は驚きのあまり言葉が出なかった。
りゅうくんに彼女はいなかった?私のために嘘を?
そんなの、、余計に後悔が強まるじゃない。
最後にやり残したことは私と付き合えなかったことだなと死ぬ前に言ってましたと言われた。

私はりゅうくんはもう私のこと好きじゃないと思ってた。だってりゅうくんの就活が始まった頃からりゅうくんはわたしに冷たくなった気がした。好きと言ってくれなくなった。でも今思えばその時にはもう自分が死ぬことを分かってたんだろう。

りゅうくんはどれだけの恐怖と闘っていたのだろう。白血病と診断され年は越せないと言われた時、容態が急変してICUに運ばれた時、りゅうくんはどれだけ怖かっただろう。私がもっと寄り添えていたら、、。

りゅうくんが最後の電話で言ってくれた、「僕も1番に大好きだったよ」って言葉嘘じゃなかったんだね。私たちはやっと両思いになれたんだね。
私たちちゃんと恋愛してたよ。

卒業したらりゅうくんのお墓参りに行く予定だ。
その事はまた追加で書こうと思う。


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