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【雑文】現代アートを学んだら、コロッケそばを食べることになった。

アートが語れるようになりたい。


私は芸術が語れてこそインテリという、根拠のない思い込みをしている。そのため、何度か絵画史を学ぼうと関連書籍を読んだことがあるのだが、全く身につかぬまま今日に至ってしまった。

こんなに身につかないのは、むかし薬学部に通うキレイなお姉さんとシュールレアリズム展に行った際に、「わたし動物実験があるので帰ります」と言われた経験が、心に深くキズを残したからかもしれない。

Tips!:あの時、私はラットより価値がなかった。


そもそも芸術の造詣を深めること自体、すごくハードルが高い行為のように思える。アート好きを名乗ること自体が諸刃の刃だ。

例えば、「オレ、昔は絵を描いていたんだよね」というやつほど実際は絵を描いてないし、好きな画家や絵を聞いても、「あまり絵画史には興味ない」と言いながら「現代アートが好きなんだよね」と逃げられる。

はいでた、 現代アート好き

どうせバンクシー展しか見てないくせに……。現代アートが好きといっておけば、万事OKな雰囲気があるのがズルい。
ズルいぞ、現代アート。私も現代アートに逃げたい。


とはいえ、現代アートがなにかすら分かっていない。少し調べてみると、トラディショナルアートとオーソライズドアート以外が現代アートと定義されていた。ガバガバ定義である。

まず、私はアートを三つのカテゴリーに分けて考えている。(中略)一つは、トラディショナルアート、二つめはオーソライズドアート、三つめはこの2つ以外でコンテンポラリーアート(現代アート)ということになる。

『現代アート入門の入門』より引用 山口裕美 著


もう何でも現代アートでいいじゃん、といった趣がある。

どうせ現代アートを勉強するならば、馴染みのある題材が良い。でも普段仕事しかしてないしなぁ……という私が辿り着いた書籍が、『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』だ。



ビジネス書をまとめると現代アートになる

本書の最後に、こんな記載がある。

本書は、現代アートである。

『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金率』より引用 堀元見 著


ビジネス書100冊の教えをまとめると、現代アートになるらしい。……本当かなぁ。でも現代アートの定義がガバガバなので、案外イケるのかもしれない。題材的にも申し分ないのだから、考える前に飛べ!の精神である。



ということで、無事読了した。

ハチャメチャに面白かったのだが、私はビジネス書というものが分からなくなった。というのも、ジュラシック・パークより迫力のある両極端な主張が本書にはひしめき合っており、なにがビジネスにおける正解なのか全く分からなかったからだ。

例えば本書の目次を見ていくと、思いっきり相反した教えが並んでいる。

教え23 ひとつのことをやり続ける
教え24 ひとつのことをやり続けない

『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金率』より引用 堀元見 著


いやどっち!? どっちが正解なん!?!?


これに限らず、ビジネス書第1法則に則り、続々と真逆の教えや極端な主張がとどまることなく述べられている。理解が追いつかず腹が立ちそうだ。風呂場に防水テレビを持ち込んで放送禁止用語を叫ぶ必要があるかもしれない。
あと目次の中に林原めぐみが混ざっているのも気になって仕方がない。

もうダメだ。私には現代アートの素養がない。



自分の頭で考えよう

というわけで、またしても現代アートを理解するには至らなかった。それどころか、これからどうやって働いていけば良いのかすら、分からなくなってしまった気がする……。もう何も分からない、60円の生卵を買うのに15秒悩みそうだ。

成功の黄金律を学んで働き方が分からなくなるなんて、まさに現代アートみを感じざるを得ないが、しかし全く学びがないわけではない。読了して感じたことは、下らないと決めつけていたビジネス書の中にも共感できる主張はあるんだなということだった。


これまで私はビジネス書を全く読まなかったくせに、どうせ再現性のない成功談が書かれているだけだろと、鼻からバカにしていた。

しかし、本書の中には共感する教えがいくつかはあったし、読みたいなと思う原著もあった。アイデアを創出したいなら死ぬほどリサーチしなさいという『読みたいことを、書けばいい。』や『アイデアのつくり方』、流行りの主張に流されず自分の頭で考えようという『Think clearly』などは、時間を見つけて読んでみたいと思った。

結局私は書籍の価値をカテゴリ決めつけ、自分の頭で考えていなかったのだ。大いに反省すべきことだろう。現代アートの理解は出来なかったが、大事な学びはあったのだ。



ということで、この学びを踏まえた私の結論としては、億を稼ぐ人にも、神メンタルの持ち主にも、箕輪厚介さんにも興味がないので、それなりに働いて暮らしていければいいかな、という感じに落ち着いた。
具体的にはトンカツがいつでも食えるくらいの生活が維持できれば、私はそれで満足だ。

絶妙なライン:『美味しんぼ』11巻より引用 作 雁屋哲, 画 花咲アキラ


もっと言えば、コロッケそばがいつでも食えなくなったら危機感を持とうと思う。

これまた絶妙なライン:田中泰延さんTwitterより引用


ビジネス書を基にした現代アートを学んだら、「コロッケそば以上、トンカツ以下」という人生のクライテリアが明瞭になった。1冊読んだだけなのに、これはすごい。コスパ最強である。

人生に迷ったら、コロッケそばを食べに行こう。もう私は迷わない。これが私の黄金律なのだから……。


・・・・・・


・・・


でもコロッケそばもトンカツも縄文時代にはないな……。まぁいいや。好きなもの食べればいいし、おそらくわたしのまちがえでしょう。わたしはよくまちがえます、ので。



参考文献

この記事は以下の書籍を読まないと、理解が進まないかもしれない。
買おう!

えっ? ダイレクトマーケティング?

うかつでした! ありがとうございました。


(今までの記事はコチラ:マガジン『大衆象を評す』

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