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雨が降ると会える、大切なおともだち。

朝から雨が降っている日には、じいちゃんが運転する車で楽しいところに連れて行ってくれた。

わたしのじいちゃんとばあちゃんは農業をしていたので、作業のできない雨の日はわたしと遊んでくれる日。

『楽しいところ』と言っても当時は

コンビニもショッピングモールも

ハンバーガー屋もフライドチキン屋も

ドーナツ屋も牛丼屋も

そういう場所は家の近所にはなくて

行くのは決まってスーパーの一角にある
めちゃくちゃ小規模なゲームコーナーだった。

そこに、わたしのお気に入りの乗り物があった。

あったと言うより、存在していた。

大好きな白鳥の乗り物🦢
雨の日には、あのこに会える。

「まっててね、もるてん!」

そう思って、少し濡れながら車に乗り込んだ。

わたしはその白鳥を「もるてん」と呼んでいた。

穴が少し丸くへこんでいて、そこにはめて下にスライドさせるタイプの挿入口に
10円玉をゆっくり3枚くらい入れた様な気がする。

そうすると、突然!

ぐおんぐおんと音を立てて、
イメージ的にはダイエットマシーンのロデオボーイのような動きが始まる。

まだ幼き私を振り落とす勢いの
白鳥のもるてん🦢

飛ばされない様に、両側にじいちゃんとばあちゃんが立っていた。

もるてんの頭がかわいくてかわいくて、いつもなでなでしていたら

塗装が剥げてきて、うっすらと頭がぶつぶつしてきてしまったことは

わたしが撫で過ぎたわけではなくて
ただの、経年劣化だと信じたい。

さて、わたしは何故「もるてん」と呼んでいたのかいまさら不思議に思い調べてみたところ

ひとつのアニメがヒットした。

「ニルスのふしぎな旅」

1980年にNHKで放送されて大人気となったアニメだそう。

今年、放送満40年を記念して本が発売になったと書いてあった。
なんという偶然なのか。

モルテンが40年の時を超えて、現代にやってきていた。

🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆

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わたしはこのアニメを知らなかった。

記憶にはないけれど

これはモルテンだよ、と教えられたのだろう。

しかも、もるてんは

『ガチョウのモルテン』と書いてある。

なんだ。
あなたは白鳥じゃなかったんだね、もるてん。

今日初めて知ったこと。

もう随分昔の記憶でも
雨が降るとあの時の光景を思い出す。

丸くてかわいいあの頭と
じいちゃんとばあちゃんが笑っている顔。

もるてんに乗ってないふたりも、いつもとってもうれしそうだった。

帰りに好きなお菓子をひとつ買ってもらって
どんなお菓子を買ったか、もるてんに報告してから車に乗って家に帰った。

太陽の下で、仕事の邪魔をしながら畑で遊ぶ時間も楽しかったけど

しとしとと降り続く雨が、作物にもわたしたちにも恵みの雨になっていた。

残念ながら、スーパーがリニューアルする時、もるてんはわたしに黙っていなくなってしまった。

おうちに帰るために、空に飛んでいってしまったと聞いた。

ありがとうも、さよならも言えなかったけど

こうしてずっと心の中にいる
大切な友達もるてん。

会えなくなったけど、きっと飛んでいった先でまた、ぐおんぐおんと音を立てて動いているんだと思う。

時代が変わったから、もるてんともリモートで繋がれたらいいのにね。

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