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大企業と中小企業の障害者雇用の違いー沖縄県障害者等雇用啓発セミナーのパネルディスカッションからー

先日、以下のセミナのパネルディスカッションに登壇しました。

■SGフィルダー(株)よりご講演

初めに、県外企業の取り組みとしてSGフィルダー(株) 香川氏にご講演いただき、自社でどのように障害者雇用に取り組んでいるかをご説明いただきました。
SGフィルダー(株)は、全国で200箇所以上ある佐川急便の物流拠点における仕分け作業などが主な業務です。これまで、障害者雇用について200箇所もある事業所で雇用は行っていましたが、全体的に統率が取れていないという課題があり、離職も多かったとのこと。そのため、2018年より人事部主導で、職務分析(業務の切り出し)を行い始めます。荷物の仕分け作業には危険な作業もあるように感じますが、職務分析を細かく行なっていくことで、障害のある人に適した業務や、「安全性を確保すればこれもできるな」とさまざまな業務を切り出しすることができたようです。
同時に、本社(人事)が200箇所ある事業所で働く障害のある方のフォローは難しいということで、事業所それぞれに「障害者担当者」というサポータを配置し、どの事業所でも相談者がいる環境整備を行いました。
また、その「障害者担当者」をサポートする役割の抱え込むを防ぐために、本社主体で定期的に相談会を実施したり、障害者雇用への意識啓発を行います。
ある程度、講座に参加をした後は、個別対応。何か困ったことをQA形成で募集し、上がってきた内容について勉強会を開催していく、と言った具合に、各事業所に障害者雇用を任せるのではなく、人事も積極的に関わっている様子が伺えました。
現在は、障害の種別に関わらず、「このようなことに困った場合はこう対応しよう」というようなマニュアルを作成しているようで、どの事業所でも統一した対応ができるようさらにブラッシュアップをしているようです。

■講演会感想

障害者雇用を推進していくにあたり、枠組みを非常に丁寧に考えて、構築しているのだと感じました、各事業所で、障害のある職員に統一した対応を取るためには、枠組みの沿った対応で意思疎通をしていく方がわかりやすく、かつ浸透し易いのだと思い、「なるほどな」と思いました。
香川氏のバックグランドをお聞きすると、臨床心理士を持っており、博士課程に在学中。臨床の知識はもちろんですが、社会人経験もあり、200箇所ある事業所の従業員へ、効率よくかつ、わかりやすく伝えるための方法についてもきめ細かく策略を練っており、私もとても勉強になりました。


次に沖縄県の企業を代表して、
琉球ホテルリゾートオクマ 仲里 様
沖縄美装管理(株) 武村 様
にご登壇いただき、各社の障害者雇用の取り組みについてご紹介いただきました。

琉球ホテルリゾートオクマ 仲里 様より

・琉球ホテルリゾートオクマは沖縄の北部にあり、雇用先が非常に少ない地域。そのため、その地域に住んでいる障害のある方の雇用先として期待されている。
・現在は、30年以上雇用されている方もいる。ポイントは、さまざまな業務を任せるのではなく、適材適所を見極めて、その業務に従事していただくこと。裏方の業務がほぼ。
・特別支援学校や障害者就業・生活支援センターとの連携も行なっている。
・基本的に正規雇用として雇用している。

沖縄美装管理(株)  武村 様より

・病院やビル・ショッピングセンターの清掃業務を担っており、さまざまな清掃機材を扱う業務。
・障害者の雇用は基本的に、特別支援学校からの紹介。実習などを通して、マッチングを図り、雇用をする。
・雇用時は有期雇用でも、チームのリーダからの評価や、本人の意思を聞いた上で、正社員に登用する制度がある。
・障害者雇用をしていく中で周囲の職員も「障害があるから」というように接しない、同じ従業員のように「最近どうね?」と声掛けをする関係性。
・就業場所は巡回することもあるが、固定することもできる。そのように本人に負担のないような環境・場所で就労することはできる。

■全体感想

今回のセミナー良かったな。大手(各事業所に支店がある)企業は、画一的な対応をすることで効率や浸透のし易さ目指していて、そのためには枠組みをきちんと作っていくことが大事なんだと。しかも、その枠組みを作っていく中で、きちんと知識に沿って作っているところとか、実際に働いている方々からの意見を吸い上げているところとか、きちんととやっているところはきちんとやるべきことをやっていると思った。ただ、「個別性」っていうところに弱点はあるのかもしれない。業務もある程度「これをやってほしい」と決まっている状況だと、その業務が難しい状況が出た時の配慮事項を検討していくことが大変なのであろう。でも、そこもなんとかして考えるんだろうな。なんか、あきらめるのではなくて「どうしたらいいのか」と考え続ける姿勢であったことに感動したし、自分の襟も正さなくては、という気持ちになった。

沖縄の取り組みも良かったな。
中小企業の強みは、繋がり濃さなのかもしれない。経営陣が直接的に障害者雇用に関わっていて、お二方の話を聞くと、支援機関との繋がりもある。経営陣や管理職が障害者雇用に関心があって、このような場所に登壇してくださることへのインパクトは大きい。(障害者雇用を促進していく上で、経営陣のマインドセットを変えていくことが一つのハードルとなっているので)
ホテル・清掃業ということもあり、さまざまな業務があって、それを障害のある方本人に合わせて業務や環境を切り出していることが印象的だった。個別性を大事にしていると思った。
しかも「地域の受け皿」ということも非常に良かった。自社の組織を構える市町村の住民の雇用を受け入れることは、地域貢献にもつながると思う。しかも、従業員は顔の知っている方が多いから、働く障害のある方も安心なんだって。あと、地域資源も活用うまく活用しているように感じた。これは非常に興味深かった。

まとめると、数百名の雇用をしなければならない大手企業では、どのように障害者雇用を効率よくかつ適切に雇用を浸透させていくかが重要で、そのために枠組みやマニュアルは効果的。
数名の障害のある方を雇用する中小企業などは、経営陣が障害者雇用に関心を持ち、本人に合った業務の切り出しや環境をどれだけ提供できるか、そして地域(特別支援学校やナカポツなど)資源も巻き込みながら雇用を進めている。こういった違いがあるのかな、と思った。

どっちが良い/悪いでもないけど、それぞれの地域にあったやり方があるんだなと沖縄と東京だけど思いましたとさ。

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