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妊活に気概とか覚悟って、どれくらい必要ですか?

「生理、来ちゃいましたか・・・」

電話の向こうから、ため息混じりの先生の声が聞こえる。
残念がってくれているだけなんだけれど、しくじっちゃったのを責められているような気がして心が沈む。

妊活のファーストステップは「タイミング療法」。
体の状態とデータから排卵日を予測し、妊娠を目指す方法だ。
(数回トライして授からなかった場合は、次のステップとして各種人工授精が控えている)

まず、生理が始まると病院に電話を入れ、排卵時期の診察予約をとる。
病院を訪れたら、尿検査、基礎体温のログ提出、卵胞のサイズの確認をする。
卵胞はわかりやすくて、20ミリくらいになっていると「ぼちぼち排卵日」、もう少し小さいと「あと数日後(具体的に目安日を伝えられるか、あまりに小さいと再度来院して検査する)」なんて感じ。
※そんなわけで、妊活において性交は「タイミングを取る」と呼ばれる。

医師の判断によって「○日あたりにタイミング取ってくださいね」と指示があり、そのタスクを淡々とスケジュール帳に加える。
病院での診察は「また生理が来たら予約の電話をしてください」という指示で終了する。

そういえばセックスって繁殖行動だったなぁ、なんてしみじみ原点に還りつつ(?)、スケジュール通りに粛々と業務にあたるのである。

そうして、その結果は2週間ほどでわかる。
毎月お馴染みの「生理さん」がやってくるか否か。
カップルの状況によっても異なるけれど、この方法で数回トライして授からなければ次のステップを考えましょうと言われている。

我々の第一ラウンドは、敗北。
早々に生理さんがお出ましになった。

言われた通りに病院へ電話をかけ、冒頭の先生のため息を聞く。
責められたようで悲しかったと書いたけれど、一番ショックだったのは自分が何も感じていなかったこと。
「まだ初回だし・・・」なんて感じで、1回ごとのトライに対する重みをわかっていなかった己の意識の低さや、残念とか悔しいとかいう感情が湧いてこなかったことに後ろめたさを感じた。(先生の声を聞いて、そういう感情を表すのがこの治療を受けてる人の本来の反応なんだろうなと思った)

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われわれ夫婦は、夫は子供がとっても欲しいそうな。わたしはどっちでもいいと思っている。
何が何でも子供が欲しいなら、私以外の人と結婚することも視野に入れてくれというのは婚前よくよく夫に言っていたこと。

若かったし、夫がピンときていたのかは不明すぎるんだけど、作るなら私との子が欲しいというモチベーションとのことで、私と結婚することにしてくれた。

生活に余裕がなかった時期、体を壊して投薬治療をしていた時期が終わって、気付けば結婚して約10年。くらしが落ち着いたところで、ひょんなことから不妊治療に片足を突っ込んで現在に至る。

そうして思うのは、やはり女性(妊婦になる人)に主体性がないと難しいのかもしれないということ。自分としては「ちゃんとやっているつもり」でも、熱意が足りない丸裸の自分の意識を目の当たりにする瞬間がやってくると、何だか申し訳なくなる。

できたら嬉しいと思えたから始めたけれど、何が何でも欲しい!ってわけじゃない。そんな自分が不妊治療をしていることに後ろめたさを感じる。今の自分はどこにむかっているんだろうか、と足元がぐらつく。

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子供の頃から、生き物を育てたり一緒に暮らすようになるのは成り行きや偶然の出会いからだった。
ベランダに迷い込んできたインコ、喘息持ちの子供が生まれて動物が飼えなくなった家から譲り受けたカナリヤ、怪我をして学校で暮らせなくなったハムスター、同居人が飼い始めたプードル、玄関に居付くようになったネコ・・・・。

ふらりと遊びにきて泊まっていく友人たちや、住み着きそうな勢いで連泊する親戚の女の子といると「もうずっとここで一緒に暮らしちゃおうよ!」という気持ちになってくる。
なにか一大決心をして始まったことはなくて、行き掛かり上そうなって家族が増えていく。

それが私の中で自然なことだった。

だからきっと、一大決心の先にある熱意ある子作りにピンときていない。
これって責任回避なんだろうか。覚悟や勇気があればいいんだろうか。

それが湧いてこないのは、己の未熟さのせいなんだろうか。

妊活を頑張っている多くのカップルのような気概がない。
どうして夫と同じ気持ちになって一緒に頑張れないんだろう。そのことが悲しい。

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(後日談)

我々の第二ラウンドは、不戦敗。
体調不良でミッション遂行できずに卵子とお別れをした。

次の生理さんが来て、先生に電話すると「そういう時はちょっと頑張らないと」とたしなめられる。

夫にそのことを伝えたら、「そういうときもある!(しゃーない!)」と案外気楽。

あんた、欲しいって言う割に意識は私とそんなに変わらないのでは?!・・・、とツッコミを入れつつ、少しホッとしたのであった。


※この記事は「妊活におけるプレイヤーは誰なのか?」を改稿したものです。



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